晩酌の誕生
飯野亮一(著者)
/ちくま学芸文庫
作品情報
万葉の昔からはじまり、江戸時代に花開いた日本人の家飲み。当初健康のため、安眠のために飲まれていた「寝酒」は、灯火の発達とともにゆっくり夜を楽しむ「内呑み」へと変わっていく。飲まれていたのは濁酒や清酒、焼酎とみりんをあわせた「本直し」等。肴は枝豆から刺身、鍋と、現代と変わらぬ多彩さ。しかも、振り売りが発達していた江戸の町では、自分で支度しなくても、家に居ながらにして肴を入手することができた。さらに燗酒を売る振り売りまでいたため、家に熱源がなくても燗酒が楽しめた。驚くほど豊かだった日本人の家飲みの歴史を繙く。
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商品情報
- シリーズ
- 晩酌の誕生
- 著者
- 飯野亮一
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま学芸文庫
- 書籍発売日
- 2023.11.09
- Reader Store発売日
- 2024.03.01
- ファイルサイズ
- 109.4MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (3件のレビュー)
-
遥か昔から飲まれた酒。直会や集団での飲みに独り飲み。
その後、江戸時代に晩酌が始まり、市井に広まっていった。
晩酌誕生と江戸時代の晩酌文化を主体に、多くの史料を探り、
その情景を写した図版を添えて、詳…細に解説する。
・はじめに
序章 酒は百薬の長 第一章 万葉集に詠まれた独り酒
第二章 中世の独り酒 第三章 晩酌の始まり
第四章 明かりの灯る生活 第五章 灯火のもとでの外食
第六章 江戸庶民の夜間の暮らし
第七章 江戸で花開いた晩酌文化 第八章 晩酌の習慣が始まる
第九章 多彩な晩酌の肴 第十章 長くなった夜の時間
・おわりに
参考資料・文献一覧有り。
その始まりは灯火の普及だった。
直会や集団での飲みに独り飲み、夕食後や寝る前に飲む
寝酒もあったが、夜の明かりは身分の高い者の高価な品。
だが江戸時代、灯火原料のナタネ油や綿実油等の生産と普及、
安い魚油の品質改善と普及、蝋燭も販売が始まる。
庶民への灯火用の油の普及により、夜間営業の外食が生まれた。
煮売茶屋から料理茶屋へ。そして庶民向けの居酒屋。
しかし夜は街灯が無く暗い上、十時頃には町や辻の
木戸が閉まってしまう。で、就寝前の愉しみとして、
家で寛ぎながら灯火の元で燗酒を飲む晩酌が、始まる。
江戸の町では、人の数が増え、物資で潤い、
庶民は酒が何時でも買えるようになっていった。
酒屋からの御用聞き、店先での量り売り。
四季を通して燗にしたのは、冷や酒は健康上良くないと
考えられていたから。
肴は、小鍋立や多彩な手作り料理。
振り売りから買う夜鯵・夕鯵、枝豆、なめものなど。
屋台店や煮染屋からの総菜のテイクアウト。
仕出し料理のデリバリー。
屋台のおでん燗酒売りからは、肴のおでんと燗酒を
一緒にテイクアウト出来た。
灯火の元で、夫婦で晩酌。親子で晩酌。男も女も独りで晩酌。
だが明治時代になり木戸は廃止、ランプの普及で長い夜に。
晩酌と寝酒は別物になり、ビールの晩酌も始まる。
晩酌について、豊富な史料を提示し、和歌や短歌、俳句や、
人情本、様々な図版、小説からも引用しているので、
楽しく読めました。特に晩酌で孝行の褒賞の記録が興味深い。
また、当時の酒が超辛口だったから、燗酒にして甘味の感度を
増して飲み易くしたらしいというのにも、驚き。
江戸時代の晩酌文化は、なかなか奥が深いものでした。続きを読む投稿日:2023.12.15
このレビューはネタバレを含みます
晩酌の誕生
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著者:飯野亮一(食文化史研究家)
発行:2023年11月10日
ちくま学芸文庫
晩酌とは、自宅での夕食時に一杯やることをイメージするが、昔はそれがなく、どうやって今日の晩酌形式が生まれ…ていったのか、という点について歴史をたどる書物だと思って読んだ。そうではなかった。万葉の歌に独り酒が詠まれ、鎌倉時代には執権北条氏により酒の売買や独り酒が禁止になり(もちろん守られるわけがない)、といったことがさらりと書かれていて、江戸時代が始まって100年ほどした中期になると、すでに晩酌が定着していた、というような話にいきなりなる。
ただし、晩酌とは呼ばれず、寝酒と呼ばれていた。それは明治時代になってからもで、辞書としては大正8年発行の「大日本国語辞典」で、「ばんしゃく 晩酌 晩餐の時に酒を飲むこと」「ねざけ 寝酒(名) 寝るときに飲む酒」という記述が見られるとのこと。明治時代の辞書には、見つかっていないようである。ただ、漱石はじめ小説の世界では明治から晩酌の文字が盛んに使われている。
そんな訳で、タイトルのように晩酌の習慣というか食文化がどのように誕生したか、という本ではなく、晩酌が誕生して定着した江戸時代の江戸のまちでは酒と肴がどのように飲食されたのかという風俗、食文化について書かれた本だった。
多くの書物から引用されていて、とくに、歌、俳句、川柳、物語など文学作品からの引用が夥しく、なかなかの労作でもある。酒そのものより、肴についての解説が多い。
その「肴(さかな)」の語源についても書かれている。「魚」から来ていると思っていたが、どうやら「さかな」の「さか」は酒であるようだ。「な」については、鎌倉時代の記述では、野菜をつまみにしていたから菜だと書かれ、新井白石(江戸中期)は「な」は魚菜だとしている。ただ、イエズス会宣教師らが編纂した有名な「日葡辞典」(1603年)には、肴が肉や魚のような食物だと書かれているそうである。
江戸時代に定着し、庶民にまで広まった寝酒(晩酌)の一番の敵は灯りだったようだ。当時は菜種油など植物油や、それより安い鯨やイワシなどからとった油を燃やして灯りにした。蝋燭は高価で手がでなかったようだ。ところが、油を燃やすと火事になりやすい。火事の多かった江戸では、夜遅くまで灯して寝酒を楽しむと注意されて早く寝ろと警告を受けたようだ。まちに設置された木戸が閉まる時間にあわせたようでもあるが、これも当然、守られない。酒に対する執着は、そんな甘くはない。
江戸の人々は、自分たちで肴を用意するほか、いろんなところで手に入れることができたという。屋台や惣菜屋で買ってくることはもちろん、料理屋でのテイクアウトと仕出し、仕出屋からの仕出しなど、今のデリバリーにも負けないような購入先があったほか、昔ながらの煮売り形式の売り子も、夜になると回ってきた。しかも、温めた燗酒までセットで。肴も、うなぎの蒲焼きや刺身など、なんでもあり。
なお、刺身は、今のような醤油とわさびというスタイルが定着する以前には、煎酒(いりざけ)、酢、味噌などの調味料が使い分けられていたらしい。一方、おでんも人気があったようで、最初は味噌田楽から変化した味噌おでんだったが、のちに燗酒とともに体が温まる煮込みスタイルのおでんへと変わっていった。意外なことに、煮込みスタイルのおでんになったのは明治になってからのようで、しかも、それが東京で主流になるまでには少し時間を要したようだ。続きを読む投稿日:2024.05.02
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