日本精神史 近代篇 上
長谷川宏(著)
/講談社選書メチエ
作品情報
縄文時代の巨大建造物から江戸末期の『東海道四谷怪談』まで、日本の美術・思想・文学の精神のありさまを、長大かつ深遠な歴史として一望のもとにとらえた傑作『日本精神史(上・下)』は、その年(2015年)の人文界の最大の収穫として話題をさらいました。
本書は、読者諸氏が待ち焦がれたこの本の続篇です。題して、『日本精神史 近代篇』!
この本が扱う時代は、その名のとおり江戸の終わりから20世紀の終わりにいたるまで。
日本の歴史上、最大のインパクトのひとつである幕末の大転換期から、21世紀のいまを生き、わたしたちの生活に多様な彩りをあたえ、生きる源となるゆたかな精神のその発露までを追っていきます。
日本近代の美術・思想・文学の三領域にわたる文物や文献を手がかりに、そこに陰に陽に示された精神のありようを、ときに冷静に、ときに客観的に言葉にした、前作『日本精神史』と双璧をなす大作です。
著者は、前著同様、本書についても難解であることを決していさぎよしとしません。読みやすさに細心の注意をはらい、あくまでも流麗に、そして明解に描ききります。
幕末から20世紀の終わりにいたるまでの150年にわたる時代の精神とはいったいどのようなものなのか? 近代における壮大かつ激しい精神の大河を、ここにご覧ください。
上巻は、近代の始まりから、啓蒙思想の転変や近代文学者の苦闘などを経て、岸田劉生や村上華岳らによる美の探究まで。
きな臭い時代へと突入するその精神のさまがじょじょに浮き彫りにされていきます。
【目次より】
はじめに
第一章 近代の始まり
1高橋由一/2『米欧回覧実記』
第二章 啓蒙思想の転変
1福沢諭吉/2加藤弘之/3中江兆民
第三章 近代文学者の苦闘
1坪内逍遥と二葉亭四迷/2北村透谷/3樋口一葉/4島崎藤村――抒情
第四章 美術表現の近代性
1青木繁/2菱田春草/3荻原守衛と朝倉文夫
第五章 日清・日露戦争――ナショナリズムの嵐
1日清戦争とその前後/2戦後経営/3日露戦争
第六章 森鴎外と夏目漱石――近代的知性の面目
1森鴎外(その一)/2森鴎外(その二)/3夏目漱石(その一)/4夏目漱石(その二)
第七章 韓国併合と大逆事件
1韓国併合/2大逆事件
第八章 民俗への視線、民芸への視線――柳田国男と柳宗悦
1民俗学の創成/2民芸を慈しむ思想
第九章 言語表現への熱情
1斎藤茂吉/2萩原朔太郎3宮沢賢治――修羅の苛立ちと彷徨
第十章 絵における美の探究
1岸田劉生/2村上華岳
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 日本精神史 近代篇
- 著者
- 長谷川宏
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社選書メチエ
- 書籍発売日
- 2023.10.12
- Reader Store発売日
- 2023.10.11
- ファイルサイズ
- 21.4MB
- ページ数
- 544ページ
- シリーズ情報
- 既刊2巻
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 2.0 (1件のレビュー)
-
近代の日本文化について解説した本。精神史なので文学が中心ではあるが、絵画にも触れている。明治維新後、富国強兵、殖産興業のスローガンに基づき近代日本は発展していくわけであるが、底流には国民が一体となった…ナショナリズムがある。著者は、この狂信的なナショナリズムに批判的で、反政府、反体制的な社会主義思想に親和的論調である。幸徳秋水や安部磯雄ら社会主義者に同調し、夏目漱石や柳田國男が体制に不満を持ちながらも政治批判をしないことに異議を唱えている。国際政治の基本的な考え方が理解できていないのだと思う。二葉亭四迷や樋口一葉などの文学者の記述は勉強になったが、反ナショナリズム的な偏った考え方には違和感がある。
「西洋文明の他と異なる特徴は、人間の社会において各人の説が一つにまとまらず、諸説が並び立ってたがいに和することがないということだ」p58
「圧制を憎むのは人の本性だというけれども、他人がこちらを圧さえつけるのが憎いだけのことで、自分の方が圧制を行うのは人間としてこの上ない快感だといってよい(福沢諭吉全集第八巻)」p63
「主戦論はジャーナリズムでもしだいに大きな勢力となり、非戦の立場を取っていた「毎日新聞」や「二六新報」や一部の地方紙も主戦論に鞍替えしていく。最後まで非戦論の孤塁を守っていたのが黒岩涙香の「万朝報(よろずちょうほう)」だったが、ロシア軍が満州撤退の最終期日になっても満州に居座っているのを知って、ついに主戦論に転じた。戦争へと向かうナショナリズムの勢いに抗しえなかったのである」p276
「1890年代の初めから1900年代の半ばに至る歴史をナショナリズムの時代ととらえた。それは重苦しい分裂と統一の時代だった」p300
「漱石は国家の動向や社会の風潮に容易に同調しえない知識人として時代を生きることになった」p366
「漱石はそういう時代の流れに乗れなかった。人々が国家の軍事力・経済力の強化と威信の向上を自分のことのように喜ぶ時代の風潮に対し、鋭い疑いの目を向け、おのれの知と思考によって自分なりに生きる道を見出そうとした」p369
「柳田國男のとらえる家は個を基本単位とし、個が集まって一つの形をなす共同体ではない。長く続く場があり、労働があり、しきたりがあり、儀式があり、伝統があり、そのなかで親族をなす数人あるいは数十人の人々が生まれて生きて死んでいく。そういう共同体が家だと柳田は考える。日々の暮らしを共にすることによって育まれ保たれる家々、村々の共同性が、権力支配の網の目を周到に張り巡らした近代国家の共同性と結びつくかのような記述がなされる(著者は批判的)」p419続きを読む投稿日:2024.01.07
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。