経済大陸アフリカ 資源、食糧問題から開発政策まで
平野克己(著)
/中公新書
作品情報
アフリカを「援助」する時代は終わった。新興国をはじめ、世界中が凄まじい勢いで食糧、石油やレアアースといった鉱物資源を呑み込んでいく現代。これらの需要に対する供給源として、アフリカの重要性は突出している。いまアフリカとの経済連携は、中国が一頭地を抜く。世界各国がそれを追うなか、さらに大きく遅れている日本に挽回の余地はあるのか――。広大なアフリカ大陸を舞台に、世界の未来と命運とを描き出す。
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商品情報
- 著者
- 平野克己
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2013.01.25
- Reader Store発売日
- 2023.04.28
- ファイルサイズ
- 12.7MB
- ページ数
- 304ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (35件のレビュー)
-
<総評>
本書は、アフリカの「リアリティ」を客観的なマクロデータにもとづいて浮かび上がらせている。開発経済の専門的リテラシー(高度な計量経済・統計分析を用いなくても)を用いずにここまでアフリカ(そして…世界の)開発問題の全体像を、えぐりだした筆者の力量は素晴らしい。アフリカの開発が低調だった時期から一貫して現地に駐在してきた平野氏だからこそ書けた内容かもしれない。
マルサスの人口論や、(単にそう労働人口や労働単価だけでなく)人的資本の観点における東アジア・南アジア・アフリカの比較、(ただでさえアフリカの土地は肥沃度が低いのみ)気候変動によってアフリカが被る被害などについても、触れてあるとより多面的な議論になったかもしれない。一方で、これまでの国際開発のアプローチがほとんど効果を上げられなかったアフリカにおいて、資源高を背景にした中国のビジネス=援助ミックスの展開によって地殻変動を従来では考えられないスピードで起こしている、という本筋がブレずに簡潔にまとまっていると思う。
<各論>
◆第1章 中国のアフリカ攻勢
・将来の資源需要を見込んで、アフリカにビジネス=援助ミックスを早くから展開していった中国のブレーンの慧眼は見を見張るものがある。
・現地雇用が少ないのは、アフリカの「高賃金体質」という指摘は鋭い。
◆第2章 資源開発がアフリカを変える
・資源価格が高止まりするようになったことが、中国のアフリカ進出を進め、アフリカの開発に変化をもたらしたのであれば、それは先進国の成熟と(民主化を契機とする)中国の消費増大によって、原油および鉄・レアメタル等の資源の需要増大することが必要条件だったのかもしれない。
◆第3章 食料安全保障をおびやかす震源地
・ジンバブエからザンビアに移った白人農家達がもたらしたアフリカにおける緑の革命が、全体として肥沃度の低い他のアフリカ全体に広まるのかは疑問。
・アメリカのシェールガス産出によって、バイオエタノール用のメイズの需要が下がったことで、しばらくは穀物価格は下がるはずであり、自給率やや高まる余裕のある間にサブサハラ各国が資源で得た外貨をいかに自国の農業生産性向上に活かせるかがカギ。
◆第4章 試行錯誤をくりかえしてきた国際開発
・欧米ドナーにとって、ODAの目的は「国益の追求」であるから、ODA大国でなくなった今日本も国益を追求するのは当たり前だ、という意見は近年よく見られる。その意味で、英、仏、米の援助の起源や国際機関が自己の存在意義の証明のために理念を後から理論武装のために発明したとの記述は、は目から鱗。また、日本の経済協力も今考えれば、現在の中国的な発想を当時の官僚が持ち合わせていたことに驚いた。(単に戦後賠償として認識していなかった。)
・ドイツGTZと日本JICAは、ODAの中で技術協力(人づくり)に相対的にかなりの予算を割いて来た。それは、民間ベースの技術移転だけでなく、法制度・現場のノウハウのようなものもOJTベースで様々なプロジェクトで伝えられてきた。(キャパシティ・ディベロップメントという言葉は欧米で発明される前から日独は実践してきた)この定量的な効果を学術的に論じることは難しいが、その東アジアの開発への貢献は大きかったのではないか。
※第5章、第6章追記予定。続きを読む投稿日:2013.12.15
中国すごい。
先進国でも貧困国でもない、世界の中での独自の立ち位置を正確に把握し、かつ自国の利益や打算も現実的に加味した、建前や理想論に振り回されない対アフリカ政策。
「北京コンセンサス」、読む。投稿日:2023.02.22
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