日本銀行 我が国に迫る危機
河村小百合(著)
/講談社現代新書
作品情報
2013年日銀が「量的・質的金融緩和」を始めてからはや9年が経つ。世界経済の急激な局面の転換によって、わが国は、この“超低金利状態”を維持できるかどうかの瀬戸際、まさに崖っぷちに立っている。これまでの放漫財政路線を安易に継続し、超金融緩和路線を強引に押し通し続けようとすれば、遠からず、どういう事態に陥るのか。そして、それを回避するためには、私たちは何をなすべきなのか。世界の中央銀行の金融政策と財政運営に精通したエコノミストが警鐘を鳴らす。
異次元金融緩和は限界
日銀が「いくらでも国債を買えた」
時代はもう終わりだ
●長期金利は“糸の切れた凧”に
●新規国債発行ストップで、社会保障費も防衛費も義務教育国庫負担金も一律4割カットに
●財政破綻したギリシャは4年間、国民1人・週あたり5万円の預金引き出し規制に
●「取るものは取る」終戦直後の財産税の悪夢も再来も絵空事ではない
本書の内容
プロローグ 異次元緩和から9年、ついに現れた不穏な兆候
第1章 日本銀行に迫る債務超過の危機
第2章 わが国の財政運営に待ち受ける事態
第3章 異次元金融緩和とはどのようなものだったのか
第4章 欧米中銀との金融政策運営の比較でわかる日銀の“異端”さ
第5章 異次元金融緩和が支えたアベノミクスと残された代償
第6章 事実上の財政破綻になったら何が起きるか-戦後日本の苛烈な国内債務調整
第7章 変動相場制下での財政破綻になったら何が起きるか-近年の欧州の経験
第8章 日本再生と私たちの責任-“甘え”と“無責任”からの脱却と“真の市民社会”の再構築
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商品情報
- シリーズ
- 日本銀行 我が国に迫る危機
- 著者
- 河村小百合
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2023.03.16
- Reader Store発売日
- 2023.03.15
- ファイルサイズ
- 36.9MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (7件のレビュー)
-
黒田さんの「黒田バズーカ」はアベノミクスと相まって、その当初は日本の経済を復興させ押し上げるものとの期待が高かったが、結局は10年経っても成果を出さず、かえってあまりにも自己の政策に固執したがために日…本を未曾有の危機に晒し、その実験は壮大な失敗に終ろうとしているように思える。
本書はその金融政策と財政が絡み合ったリスクを、分かりやすくときほどき説明してくれている。
本書を読んでいると能天気な政治家とマスコミに何をやっているのかと喝を入れたくなる。不勉強な我々もいけないのだが。
平たく言えば、借りたものは返さなきゃいけないんですよね。もう後世の世代にツケを残すのはいい加減にやめねば。
筆者が第八章でまとめているが、今この危機にしっかり向き合い、出来る事をやらねば大変なことになる。もっとも私には手遅れのようにも思えるが・・
個人の防衛策としては、少ない資産ではあるが一部でもいいので、金に変えとけばいいのだろうが、市場最高値となっている今では遅きに失する気がする。
ドルに変えとくしかないのかな・・?続きを読む投稿日:2023.05.03
この本で明示的に批判されているのは黒田東彦・前日銀総裁と安部政権だが、本書を突きつけて黒田日銀を責めても暖簾に腕押しだろう。なぜなら彼らは市場参加者の期待、すなわち将来の物価予測を人為的にプラスに形…成せんがために「無責任な中央銀行」をわざと演じてきたからだ(中央銀行は将来の物価上昇局面で金利を上げるだろうと市場参加者が予測してしまうと、現在の利下げの効果が薄くなってしまうので)。つまり彼らはいわば確信犯なので、説明不足で無責任だとの批判には冷笑で答えるのみだろう。その日銀の姿勢を奇貨として最も利益を享受したのは安部政権だが、彼らに対する批判も当を失したものとなるに違いない。何せ特に安部元首相本人は、おそらく金融政策というものを殆ど理解していなかったように思えるからだ。およそ理解しようとする意思すら無い者との議論ほど不毛極まり無いものはない。
著者が真に糾弾の対象としたいのは、我々国民の不勉強と「いずれ国が何とかしてくれる」という乞食根性だろう。何せこの放漫財政と野放図な金融政策を(消極的にせよ)選択したのは我々自身だ。「財政政策・金融政策とは何か、通貨とは何か、国家に対する信任とは何か」を考えることを放棄して、耳に心地よいだけの近視眼的な弥縫策に票を投じ続けた結果、日本はここまで来てしまった。
確かに金融政策は理解するのが難しい。しかし本書で述べられているように、他国の国民には「フリーランチなどあり得ない」「人間は近視眼的な生き物なので制度面で制御する必要がある」という知恵があり、これを政策に反映させている。ポピュリズムの嵐吹き荒れる米国ですら、デットシーリングや「債券自警団」の機能を停止しようという議論は生まれていないのだ。西欧の「ノブレス・オブリージュ」の精神が我が国に根付いていれば、政治家や官僚の主導のもと、制度内に属人的ではないオートマティックな制御装置が備えられたはずなのだが、残念ながらそうはならなかった。ファイナンスの知識を教育に取り入れるべき、という議論が盛り上がるのもさもありなん、という気がする。続きを読む投稿日:2024.02.05
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