モンテーニュ入門講義
山上浩嗣(著者)
/ちくま学芸文庫
作品情報
宗教戦争のさなか、通念や世間の道徳に懐疑の目を向けつつ、自然に従って生きることの喜びを説いたモンテーニュ。その著『エセー』では、自己の判断力を試し鍛えていくさまが、自由な文体によって描き出される。異文化への関心と共感、戦時における人間の狂気や暴力、性の歓び、ボルドー市長としての政治経験、旅と読書の愉楽など、扱われるテーマは実に幅広く、われわれの心を揺さぶる文章に充ちている。ストア的克己主義と節度ある快楽主義とを往還し、メメント・モリの受容から拒否へと至る過程で、独自な思想が紡がれていく。類まれな開明的人物の核心に迫る出色の講義。文庫オリジナル。
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商品情報
- シリーズ
- モンテーニュ入門講義
- 著者
- 山上浩嗣
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま学芸文庫
- 書籍発売日
- 2022.03.14
- Reader Store発売日
- 2022.07.08
- ファイルサイズ
- 17.3MB
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この作品のレビュー
平均 4.3 (4件のレビュー)
-
もう大分前に、岩波文庫版『エセー』を通読したことがあるが、箴言のように感心した箇所はあったものの、引用されるギリシャ・ローマ時代のこともピンと来なかったし、全体的に良く分からないままに終わってしまっ…た。
本書では、いくつかのテーマに即して、モンテーニュが如何なる問題関心の下に、長い時間にわたって思索を深めていったのかが、引用文と著者の解説とによって、初学者にも分かりやすく紹介されている。
特に、モンテーニュが生涯その友愛を抱いたエティエンヌ・ド・ラボシとの関係については、その著作『自発的隷従論』を読むことができるようになり、より理解できるようになった。
また、フランス宗教戦争の時代を、ボルドー市長として政治の真っ只中にいたこと、急激な改革を否定し、秩序を守ることが大事だとする姿勢、しかし、上位者には外形的に従えば足り、内心とは違っていても良しとする考え方など、いろいろ興味深かった。
『エセー』をもう一度読みたくなった。おそらく、多少ランダムに、毎日少しずつ、ゆっくりと読んでいくのが良さそうだ。続きを読む投稿日:2022.03.20
モンテーニュを本当に味わうにはある程度の「成熟」が必要だ。端的に言えばそれは「老い」である。『エセー』の最大の読みどころはその死生観だと思うが、本書もその点にフォーカスする。この世界に常住不変の真理は…なく、自己を含めて全ては移ろい行くと観ずるモンテーニュにとって、よく生きるとは、ありのままの自然を受け入れ、その変化を味わい尽くすことだ。「メメント・モリ(死を思え)」とは、よく生きる為には死を見つめよという意味だが、モンテーニュは死を積極的に意味づけることも、意志の力で死を乗り越えようともしない。木々が芽吹き、花を咲かせ、やがて枯れていくように、人は生まれ、成長し、そして死ぬ。それが凡ゆる生が経巡る自然の成行きならば、何も恐れることはない。
日本人になじみ深い無常観にも通じるが、それを頭で理解するのでなく、心で実感するのはそれほど易しくはない。人は自分の死を経験できないが、死が生の彼方にあり、生と断絶した絶対的な不可知であればこそ死を恐れる。そこでモンテーニュは言う。我々は少しずつ死んでいるのだ。老いとともに、気力・体力は衰え、病にも襲われる。それは日々経験する小さな死ではないかと。歯が一本抜け落ちるように痛みもなく、という感覚は異様にリアルだ。キリスト教は人間のライフサイクルを「生-老-死-生」と考えるが、モンテーニュは「生-老-死-無」と見做すと著者は言う。そこでは死はもはや受け入れる対象ですらない。「私は溶け、(生が)私から抜け出していく」のだ。死生観のコペルニクス的転回とも言えるが、それを身に染みて感得するのは、自らの「老い」を自覚した者だけだろう。
著者は第一線のパスカル研究者だが、パスカルが生と信仰の問題を愚直に探求する魂の人だとすれば、モンテーニュは洗練された都会の教養人の趣きがある。一方は生と死に思想的に対峙し、他方は感覚的に受容する。青臭い思想家と老練な芸術家、生真面目で野暮な近代人と洒脱で粋なポストモダンの先駆等々、比較は幾通りにも可能だが、著者は必ずしもパスカルの心酔者ではない。年齢とともに、どちらかと言えばモンテーニュへの共感が増しているのではないか。パスカルは39歳で世を去り、遺稿集『パンセ』を残したが、モンテーニュは39歳で『エセー』を書き始め、死の直前まで書き続けた。堀田善衛、保苅瑞穂、宮下志朗などの優れたモンテーニュ論が、いずれも壮年〜老年期に書かれたのは偶然ではない。ちなみに三木清が『パスカルに於ける人間の研究』を書いたのは29歳だ。評者と同い年の山上氏も50代の半ばを過ぎた。本書はその年輪に相応しい渋みを感じる。でも学生さんにはこの良さはわからんのじゃないかな。それでいいと思う。モンテーニュを愛読する若者なんてあまり可愛くない(笑)。続きを読む投稿日:2023.12.30
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