歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで
武井彩佳(著)
/中公新書
作品情報
ナチによるユダヤ人虐殺といった史実について、意図的に歴史を書き替える歴史修正主義。フランスでは反ユダヤ主義の表現、ドイツではナチ擁護として広まる。1980年代以降は、ホロコースト否定論が世界各地で噴出。独仏では法規制、英米ではアーヴィング裁判を始め司法で争われ、近年は共産主義の評価をめぐり、東欧諸国で拡大する。本書は、100年以上に及ぶ欧米の歴史修正主義の実態を追い、歴史とは何かを問う。
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商品情報
- 著者
- 武井彩佳
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2021.10.25
- Reader Store発売日
- 2022.01.21
- ファイルサイズ
- 5.2MB
- ページ数
- 264ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (25件のレビュー)
-
一読しての感想は、大変勉強になったということ。
歴史修正主義という言葉自体は知っていたものの、"アウシュビッツにガス室はなかった"などホロコーストを否定したり、自国の歴史に誇りを持つために"侵…略"の語を避けたりといった動きの背景にある考え方、といった程度の知識だったので、本書を読んで、歴史修正主義の意味合い、社会に及ぼす深刻な悪影響、放置することなく闘うとはどういうことか等について、大いに考えさせられた。
まず序章では、歴史を再検証して「書き直す」ことと歴史修正主義とはどう異なるのか、学術的に許容される歴史の見直しと、批判される歴史修正主義とを隔てるものは何なのか、という提起がなされる。
そして第1章以降、ヨーロッパそしてアメリカにおける具体的な歴史修正主義的な言説を紹介していく。
(なお、本書は、欧米社会における歴史修正主義に対象を限定しているのだが、例えば、第2章のニュルンベルク裁判への不満ードイツだけが悪いのかーなどを読むと、東京裁判史観のことがどうしても頭に浮かんでくる。)
1950〜60年代のドイツでは、ネオナチの組織化もあったのだが、ドイツが置かれた国際情勢と、それに対応するために作られた「民衆煽動罪」等の上からの法的・政治的規範があったため、歴史修正主義が抑え込まれていた、という。
第3章では、70年代に入り、明白なホロコーストの否定、矮小化の動きが出てきたことが説かれる。欧米では、こうした主張は「否定論(dinial)と呼ばれる。
「AはBでない可能性があると主張する人もいる」⇨「AはBではない」と結論付ける訳で、科学的な根拠はないのだが、自らは「歴史の解釈の一つ」を提示していると主張する。
ではどうしてこの時代にホロコースト否定論は登場してきたのか?一つは戦後世代への世代交代。それから六日間戦争の勝利などイスラエルの軍事強国化が背景にあるという。ユダヤ陰謀論支持者にとっては、シオニストによる世界支配が現実化したと捉え得るからである。
第4章では、1980年代後半のドイツ「歴史家論争」が分析される。ここは大変読み応えがあったし、非常に啓発された。著者は、歴史家論争には二つの中心的議論があったとする。
1 ホロコーストが比較可能かという問い
ホロコーストが唯一無二かどうかが、学問的ばかりでなく、イスラエルの存在や行動に対して政治的に大きな意味を持っていた。
2 歴史の政治利用の問題
歴史が「国民史」(ナショナルヒストリー)であったことから、国家の利益になるような歴史を示すことに問題はないと考える政治家は多いが、他者を排除することにつながるのではないか、自国民のみが満足する歴史は、将来の選択肢を狭めているのではないか。
第3章ではツンデル裁判、第5章ではアーヴィング裁判という、歴史を巡り争われた裁判が紹介される。特にアーヴィング裁判で、ホロコースト否定論が司法の場で「事実でない」と宣言されたことで、ホロコースト否定論は許容できないというヨーロッパ社会の合理形成を促したと、著者は評価する。
第6章では、ヨーロッパで進む法規制の動向や内容が紹介される。この辺りの動向は全く知らないことだったので、大変参考になった。法学的に言えば、保護法益は何なのか、過剰規制される恐れはないのか、そもそも司法が立ち入るべき領域なのかといった論点について、丁寧に説明はなされている。ただ、大陸法系のヨーロッパと英米法系の国では、表現の自由を巡る考え方が異なるし、歴史的・政治的背景も異なるし、難しい問題だ。
そのほか、アルメニア人虐殺問題や、冷戦崩壊後の東ヨーロッパ、そしてロシアにおいて、新たな歴史認識問題が現れていることに言及される。
本書の帯の文言、"歴史とは何か?""事実とは何か?"
そうしたことを考えることは、一人ひとりにとって無縁なことではない。続きを読む投稿日:2021.10.17
本書を読了して、歴史とは一枚岩で語られるものではなく、色々な支店から立体的に俯瞰することで「事実」を抽出していく作業が大事だと感じた。これからはテレビやニュースで報道されている事件について鵜呑みにする…のではなく、一呼吸を置いて違った視点で物事を見つめることを心掛けようと思う。続きを読む
投稿日:2024.04.12
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