ファスター ──1930年代のモータースポーツカルチャー
ニール・バスコム(著)
/パンローリング
作品情報
自動車が発明されて以来、スピードの記録は人々の想像力をかき立ててきた。1930年代は、ヒルクライム、サーキット、都市間ラリー、最速記録の挑戦など、あらゆる種類のレースが急速に増加していたが、開催のたびに惨事が伴う危険なものだった。それでも(だからこそ)人びとは熱狂し、その速さとエンジンの轟音を体感しようとサーキットに押し寄せた。
常に極限を強いられるレーサーたちは奇妙な友情を共有していた 。ある夜は共に笑って過ごし、翌朝には互いを打ち負かすために全力を尽くす。たとえ相手をコースからはじき出すことになろうとも……。ブレーキの故障、コース上の破片、相手ドライバーの動きのどれが原因であっても、死はいつでも仲間の誰かを連れ去っていった。それでも勝利への追求はとどまるところを知らず、毎週のように彼らはレース場に集う。やがてヨーロッパ情勢に暗雲が立ち込めると、かつては国籍・人種を超えて交流し合ったレーサーたちは、自国のプロパガンダに利用され、サーキットはスポーツの場ではなく、各国の威信をかけた戦場となっていく。そして彼らの友情は……。
本書は、当時のモータースポーツ界の内幕を再現したノンフィクション。自動車産業からの視点を通して、大戦へと突き進んでいったヨーロッパの様子が如実に伝わる。 全編に散りばめられたレースシーンは圧巻。掲載写真多数。年月を経たいまもなお私たちを勇気づけてくれる不屈の挑戦者たちがここにいる。
・モーター・プレス・ギルドのベストブック・オブ・ザ・イヤー
・ディーン・バチェラー賞の自動車ジャーナリズムの優秀賞受賞
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この作品のレビュー
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ニール・バスコム著、吉野弘人訳『ファスター ──1930年代のモータースポーツカルチャー (フェニックスシリーズ No. 127)』(パンローリング株式会社、2021年)は20世紀前半のモータースポー…ツ草創期のノンフィクション。フランスのチームがナチスが国家を挙げて臨んだドイツのチームを破ることがクライマックスである。
モータースポーツがスポーツと呼ばれることに違和感を抱く向きもあるだろう。機械の性能に依存するところが大きく、人間の体力勝負ではないためである。しかし、草創期のモータースポーツの描写を見ると人間も大変である。人間も限界に挑んでいる。マラソンやトライアスロンを観るようなドラマがある。
事故という危険と隣り合わせという点も人々を興奮させるのだろう。ローマの剣闘士に興奮したことと同じである。人間の限界に挑戦という点と危険と隣り合わせという点は現代のモータースポーツも受け継いでいる。
女性ドライバーはモータースポーツの世界で差別や偏見に苦しめられた。これはどこの世界でも同じである。むしろ女性がモータースポーツの早い段階から参加していたことに注目する。歴史が浅いと参入障壁が低い。
ナチスはモータースポーツを国威発揚に利用する。国と国の競争になり、スポーツが歪められる。これはオリンピックやワールドカップへの批判と重なる。国毎に代表チームを作らなくて良いのではないか。普段活動しているチームが地域で勝ち上がり、世界大会に出ればよい。政治的配慮から八百長が行われる。八百長を指摘された人物はモルヒネに手を出し、人生を破滅させた(242頁)。往々にして転落の裏には依存性薬物が存在する。
自動車レースへの取り組みは、ムッソリーニのエチオピア侵略やスペイン内戦が起きている中で進む。地中海の向こうやピレネー山脈の向こうでは戦争をしていた。しかし、やがてはヨーロッパ全土を巻き込む第二次世界大戦が起きる。戦争は遠い国の出来事ではなかった。ロシア連邦のウクライナ侵略がなされている現代も他人事ではない。
ドイツの自動車メーカーのメルセデスはナチスの国策に協力し、莫大な利益を上げた。『ファスター』はメルセデスが国家から命令されただけの存在ではないことを述べている。企業も戦争責任と無縁ではない。個人の頑張りの物語に終始せず、組織のマイナス面を指摘する点はノンフィクションとして社会性を示している。続きを読む投稿日:2022.04.08
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