ヨーロッパの中世美術
浅野和生(著)
/中公新書
作品情報
古代ギリシア美術といえば「ミロのヴィーナス」、ルネサンス美術といえば「モナ・リザ」。さて、典型的な中世美術といえば、何だろうか。キリスト教美術というイメージもあって日本人にはとっつきにくい印象があるが、先入観を取り払って見てみれば、奥深く多様な魅力に溢れている。エフェソス、ラヴェンナ、ブリュージュなどの遺跡や町をめぐり、大聖堂のステンドグラスを見上げながら、未知の世界に触れよう。
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商品情報
- シリーズ
- ヨーロッパの中世美術
- 著者
- 浅野和生
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2009.07.25
- Reader Store発売日
- 2021.08.31
- ファイルサイズ
- 55.4MB
- ページ数
- 344ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (7件のレビュー)
-
『ヨーロッパの中世美術―大聖堂から写本まで』(浅野和生、2009年、中公新書)
「大聖堂から写本まで」となっていますが、大聖堂や写本の前提となるキリスト教の成立の歴史も簡単に述べられており、中世のヨ…ーロッパのキリスト教文化にもとづく美術が理解できるのではと思います。
大聖堂や絵画などの写真も多いのですが、ただ白黒印刷なのが最大の欠点ですね。口絵にはカラーの写真もあるのですが、圧倒的な少なさとなっています。
(2010年2月20日)続きを読む投稿日:2010.02.21
このレビューはネタバレを含みます
カテゴリはイギリスですが、イギリスの内容は少なめです。ほとんどはイタリアとか、トルコとかギリシャです。
レビューの続きを読む
口絵を見て、カンタベリー大聖堂があったので(1章を割いている)、図書館で借りてみました。
久々…に読んだ気がする新書。
先日行ったイギリスの記憶が鮮明なうちに、勉強しておこうと思い、手に取りました。
確かに、美術館で見る名画の数々の多くは、ルネサンス以降のものなんですよね。
イギリスに限って言えば、中世の芸術が見たければ、本国に行けば見られるというのはあります。この本が多くのページを割いている大聖堂は、のちの時代に改修している可能性が高いですが、基礎はかなり古い時代のものですし、ステンドグラスや彫刻などは中世のものが多いようです。日本の美術館でヨーロッパの中世美術を見ることは大変でも、本国に行けば簡単にみられるんですね。
そして中世美術と言えば、やはりキリスト教に関わるものが殆どです。日本でなかなかお目にかかれないのも、中世美術がヨーロッパの人々の宗教観を強く反映していて、日本人に理解するのが、ルネサンス以降の美術と比べやや難しいというのはあると思います。でも、それを日本の芸術にたとえてみると、私は鎌倉時代の芸術を外国の人に見てもらい、質実剛健な文化を知ってもらいたいなと思います。日光や京都は外国の方に人気のある場所だから、やっぱり中世の芸術はヨーロッパも日本も、その国に行って、見てもらうのがいいのかも。
おもしろいと思ったのは、3世紀にヴェネツィアで作られたらしい「四皇帝像」についての記述。面白いというか、ここは著者の意見に違和感を覚えたので印象に残っています。前1年に作られたらしい有名なアウグストゥス像と比べて、お地蔵さんのようなこの四皇帝像は理念を表していて、人間の作りも簡略化されているからこういう像になったんだ、という説明。加えて、時代の美術の趣味の変容、という説明もされています。
アウグストゥス像は確かに美しいと思う。とても前1世紀のものだとは信じられないくらい美しいギリシャ風の彫像です。でもキラキラしすぎていて、何だかメッセージが薄くなるというか、つまり件の四皇帝像のほうが心に訴えかけてくるものがあると思うのです。著者はそれで「理念」重視と言ったのだろうけど。その理念を理解せよという感じで、芸術としての評価は低いように書かれていますが、信仰の対象になりやすいと思うし、こういうのも何ですが、かわいいと思います。アウグストゥス像は美男子だけど、拝む気持ちにはなれない。日本人的には、等身大の美しい男の人の像よりも、お地蔵様の方に畏敬の気持ちを持ちやすい気がします。
キリスト教の教会建築の名前はいろいろあって「カテドラル」と「チャーチ」は違うのだろうなと思いつつもどこが違うのかはっきりわかっていなかったので、その説明があったことは嬉しかったです。
建物の大きさがどうとかではなく、司教様がつかさどるところがカテドラルなんですね。
(じゃあ、なんでヨークはミンスターなんだろう?)
それから、ヨーロッパでは遺体を保存するが日本では火葬、というところに焦点を当てて、遺体保存についての説明をしていたところも興味深かったです。
著者によれば、ヨーロッパでは最後の審判を受けるときのために、遺体を保存しておくのだそうです。極悪人が火あぶりにされるのは、残酷な刑死を与えるためでなく、最後の審判を受けさせないためなのだとか。私なんかは、神さまは公平にさばくのだから、本当に極悪人なら天国に行くこともないだろうに、生まれてきたからには誰もが審判を受ける権利があると思ってもよさそうなものなのに、それこそ残酷な、と思いますが。
この本には、いろいろ刺激を与えてもらいました。図書館の天使がいましたね。読んでみてよかった!続きを読む投稿日:2014.09.21
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