この作品のレビュー
平均 3.7 (4件のレビュー)
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1985年に発生した日航123便墜落事故の原因を改めて整理し直した価値ある著作。毎年8月12日にニュースで報じられるこの悲劇は、有名人含む死者520名と過去に類を見ない大事故で、無残なご遺体の前に泣き…叫ぶご家族の様子、懸命に操縦に集中するボイスレコーダーのやり取りなどが、衝撃的だった。が、当時学生の自分は、悲しいニュースは知りたくない性格もあり、また「圧力隔壁の修理ミス」というそれらしい結論を聞くと「そんなこともあるのか」という程度に理解していた。それから三十何年後に本書に出会ってびっくり大仰天した。なんと、原因と再発防止策が曖昧になっているとは。私もメーカー勤務で製品開発を長く担当しましたが「こんな理屈が正々堂々とまかり通るとはいったいどういうこと?」と信じられなくて思わず公開の調査報告書まで見てしまいました。当時の時代背景の影響もあったのか?と無理に納得しようとしてもなかなかそうはいかない。こんなことも知らずに、その後パスポートの捺印欄が何度もなくなるほど、飛行機に乗りまくった私自身を振り返ってもぞっとする。著者指摘の通り整理するとつじつまの合わない点が沢山あるが、一番あり得ない点は「衝撃音のあと2万feet以上の上空をしばらく酸素マスクなしで飛び続けていたこと。」さすがに平成23年の7月に疑問に対する事故調査報告への解説書が出ているが、明らかに本質を語っていない。まず減圧について。最初から長ったらしく説明しているが、要するに数秒(2.9秒)で急減圧客室状態になるということ。どんな大きさであれ隔壁に穴が開くと一瞬で空気は抜ける。普段いろんな圧力の絡む操作や実験をしてる人には当たり前の話で計算するまでもない現象。それをタイ航空(A300)で圧力隔壁が爆破されたが、幸いにもすぐ急降下できた事故例とつなげて矛盾はないと言っている(比較すべき本質は酸素濃度であるべきだが、論点が減圧までの秒数にすり替わっている。タイ航空の例も日航123便シミュレーション2.9秒も同じことで急減圧には変わらない。日航123便事故では急減圧が起こらず乗員乗客が恐怖の中、何分間も間無事であったことが問題なのに)。こんな稚拙な論法が「調査報告書」という名前で提出されればまかり通ってしまうのか? フライトレコーダー上では何分間も2万feet以上の上空を飛んでいるのに・・・。挙句の果てに、管制に対する機長の回答が酸素不足のために少し遅れていると書いてあり大笑いした。柳田邦夫氏もこの解説書に「この解説書の大きな意義、納得感のある開かれた事故調査への一歩」という補足コメントを書かされているが「長い道のりを経た上での意義のある大きな一歩・モデル」と書くにとどまっている。技術者誰が見てもつじつまの合わない報告書に対して、専門家として最低限のプライドを守るために「解説書の評価に微妙な違いはあるし、全面的に納得感が得られたわけではない。」とコメントせざるを得なかった柳田氏が気の毒で仕方ない。520名の命よりも優先させたい何かがあったことは確実だが、亡くなられた方々やご遺族の方々さぞかし無念のことと思います。外部から何がぶつかったか明らかになる日が来るのを祈っています。続きを読む
投稿日:2021.08.16
このレビューはネタバレを含みます
■白と黒と灰色
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読み終わった瞬間、まず頭をよぎったフレーズだ。
二項対立・二者択一。
物事を判断する際、白か黒かだけでなく、その中間の灰色・・・グレーという選択肢もありうるということは、現実世…界ではよくある事と私は考えている。
日航123便の墜落事故の直接原因となったのは「垂直尾翼の破壊」であると言われている。
・(圧力隔壁の破壊からの)急減圧による内部からの垂直尾翼の破壊
・ミサイル/他機の衝突などによる外部からの垂直尾翼の破壊
おもな原因、考えられる原因はこの二者という事とのことだ。
そして、どうやら客観的な事実は「急減圧」は無かった様子(と私にも考えられる)。そこで、著者は「急減圧ではないから外部からの破壊に違いない」という理屈に直結する。
ちょっと待って、である。
急減圧は無かったことは事実のようだけど、「ゆるやかな減圧」はあったことも事実のようだ。であれば、
・緩やかな減圧からの垂直尾翼の破壊
という可能性は考えなくても良いのだろうか?ゼロと言い切る根拠はどこに?という考えがどうしても頭をよぎる。
この本の中には「・・・に違いない」という表現が非常に多く、やや強引な判断や推定が多い気がする。
ミサイル誤射による撃墜や他機の衝突という可能性はある、ゼロではないとは私も思う。しかし、そこに導かれる論拠がやや説得性に欠け、情緒的な感情的推定に基づく判断が目に付く。
ジェット燃料の成分は灯油の純度を上げたようなものであるという。その燃焼性から、遺体の炭化の度合いがまるで「(焼死体をもう一度焼き直した)二度焼き」されたような状態からは想像できないという。
なぜ、二度焼きしなくてはいけないかった」かは、民間機撃墜・民間機との衝突などの「自衛隊の落ち度を隠す」為ではないかとほのめかす(さすがに断定はしていない)陰謀論となる。
ありえなくはない。可能性は否定しない。
しかし、現場は斜度30度はおろか40度も越えるような急斜面とのことだ。私はスキーをやるのでちょっとだけ想像できる。30度では歩行すら難しく、ましてや40度を超えるようになるとそこは「崖」で「火炎放射器で遺体を二度焼き」するなどの「重量のある機器を操作する」事など人間ワザとは思えない。
訓練された自衛隊員でも、そう容易ではないと思うのだ。著者は現場にも足を運んだとのことだが、それ(超急斜面の岩場での重装備での難作業であったこと)には触れてはいない。ましてや、その「作業」をおこなったとされるのは真夜中から早朝。障害物の無い処ならともなく、「崖」の中で手元が覚束ない真夜中に出来る事なのだろうかと思えてならない。
冷静に考えれば考えるほど、著者の「ほのめかし」(=政府や自衛隊の陰謀論)の現実味が薄くなると感じてしまうのだ。
勿論、全否定はしない/出来ない。可能性は「ある」ゼロではない。
それは、ミサイル・他機との衝突の方が「物理的破壊」の説明がしやすいからだ。急減圧はなかったらしい。「ゆるやかな減圧」では、垂直尾翼を吹き飛ばすほどの突発的な暴風が起きたことの説明がしにくい。従って圧力隔壁破壊からの直接の垂直尾翼破壊のストーリーがとても説明しにくいのだ。
ただ、だからと言って「自衛隊員?の火炎放射による?証拠隠滅、遺体二度焼き」にも、素直に首肯出来ない。あまりにも無理がありすぎるように思えてならない。
だから、急減圧でもない、陰謀論でもない、第三の原因の可能性は本当にあり得ないのだろうか、と思えてしまうのだ。
灰色の選択肢、グレーな可能性・・・も、またあり得るのではないかと、である。
読後感は、白と黒と灰色・・・灰色もあるのではないか・・・とだ。
しかし、小説作品としては非常に優れている。そして、事件の資料性としても優秀な記録であると思う。
ややエモーショナルで感情移入が強いきらいはあるけれど、遺族の心情に沿った読者を引き込む描写は見事の一言。
丹念な取材や新聞等の記録調査と整理にも卓越した作品である。
一読の価値はある。続きを読む投稿日:2024.05.29
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