サラ金の歴史 消費者金融と日本社会
小島庸平(著)
/中公新書
作品情報
個人への少額の融資を行ってきたサラ金や消費者金融は、多くのテレビCMや屋外看板で広く知られる。戦前の素人高利貸から質屋、団地金融などを経て変化した業界は、経済成長や金融技術の革新で躍進した。だが、バブル崩壊後、多重債務者や苛烈な取り立てによる社会問題化に追い詰められていく。本書は、この一世紀に及ぶ軌跡を追う。家計やジェンダーなど多様な視点から、知られざる日本経済史を描く意欲作。
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商品情報
- シリーズ
- サラ金の歴史 消費者金融と日本社会
- 著者
- 小島庸平
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2021.02.25
- Reader Store発売日
- 2021.06.30
- ファイルサイズ
- 15.7MB
- ページ数
- 360ページ
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この作品のレビュー
平均 4.4 (56件のレビュー)
-
不肖、自慢ではないが20代の頃にがっつりアコムとモビット、銀行カードローンにリボ払いに質入を重用し、口座やカードを凍結されながらも辛々生き延びた体験を持つ私にとって実に思う所のある新書。
オビの問いか…けについて、私にとっては紛う事なく「セイフティネット」であったと断言出来る。返済遅れた時の電話は怖かったけど、基本電話が鳴らない私には電話が鳴る事がちょっぴりだけど嬉しかったしまあまあの延滞っぷりだったからそりゃ怒りますよね。あの時に伴走してくれたのは家族でも会社でもなく担当窓口のお兄さんでした。いや、向こうは仕事だから仕方なくかもしれませんが。その節は誠に申し訳ございませんでした…。
内容としては(恐らく)他に類を見ない’日本サラ金史の総ざらい’と呼ぶにふさわしく、サラ金が「サラ金」として完成するまでの素人高利貸〜団地金融〜サラ金旭日期〜サラ金斜陽期〜日本の低成長とこれから、という各タームを日本社会史や家族史・政治史など実に多面から分析・研究した一冊。
「年利七万三〇〇〇%」(p267)という俄には信じ難い事例にはため息しか出ません。アコムの「らららむじんくん」や武富士の「シンクロナイズド・ラブ」をBGMに女性達が激しく踊るCMやアイフルの「くぅちゃん」レイクの緑の恐竜などなど、2000年代一桁の頃はお茶の間ゴールデンタイムにサラ金が実に身近なものでした。特に武富士はバラエティ番組でパロディコントまで放送されてましたね。「ザ・センターマン」って懐かしい。道端に「車でお金」とかの看板も実に沢山ありました。
という、妙なノスタルジーをくすぐりつつも真剣そのものにサラ金史をひらいた本書。ジャンルとしては大変ニッチかも知れないが実に読み応えある読書でした。
お金は大事だよ〜。ル〜ルル〜。(これはAFLAC)
1刷
2023.5.22続きを読む投稿日:2023.05.22
消費者に対する金融は大手の金融機関は昔は軽視していたので、信用力のない個人は身内などから入用の時は金銭を調達していた。そして戦後、個人間金融からサラリーマンという安定した月給を稼げる人を対象とした金融…サービスが登場することになる。
業者は何を目安に与信を与えたかというと、当時ステータスのあった公団住宅に住んでいるという事実であった。この着眼点は慧眼であると言え、この団地金融から上場企業に勤める会社員、そしてあらゆる層に無担保で貸し付けるサラリーマン金融の発展していく萌芽となっていく。
サラ金業者が伝統的な金融機関とは別に独自の発展をとげられた理由は、外資規制と政府が企業融資を重視したため従来の銀行が個人融資に熱心ではなかったこと、そしてグレーゾーン金利の存在により法外とも言える大きな利益を得られたことにある。
様々な層からの資金需要により繁栄を謳歌した消費者金融だが、無担保故の高利率、命を最悪奪ってしまうような過酷な取り立てによる世間の批判から、政府も様々な対策を講じた結果、自分たちの資本だけでは事業が継続が困難になる機会に見舞われた。そして組織の生き残りを図るため、伝統的な商業金融機関に段階を経て組み込まれ現在に至るのだ。
結局アウトサイダー的な存在から、日本の伝統的な経済システムに組み込まれた過程を読んでいくと、世論を巧みに利用した行政の熟練の手腕を何となく感じる。成熟した産業に見られる、創業時のダイナミックさというのは無くなっていく中でも消費者金融は蓄積し洗練された与信技術、債権回収業務を通じて堅実な発展を遂げていくのだろうと思う。
そもそも消費者金融機関というのは、当時の政府の方針など、外的な条件が発展するためにちょうどよく、隙間産業的に産まれた産業だと読んでいて感じた。その条件が徐々に国家によって規制もしくは規制緩和によって無くなって行ったら、苛烈な競争を戦い抜くために高いレバレッジを利かした新興の消費者金融はたちまち経営が苦しくなる。そのためこの消費者金融の隙間産業性は日本の支配構造に取り込まれて行くのも必然だったのだろうとも思う。別にその支配が悪であると糾弾している訳では無いが。続きを読む投稿日:2024.02.29
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