[新装版]アフリカで誕生した人類が日本人になるまで
溝口優司(著)
/SB新書
作品情報
【累計5万部突破、第二回「弘栄堂ベスト~新書編」大賞受賞を受賞した
人気作が9年の時を経て新版として登場!】
「日本人誕生の謎」を探る旅へ出かけよう!
私たち日本人は、どのようにして生まれたのか。
700万年前に最初の人類でもある猿人がアフリカで誕生し、
そこからさまざまな淘汰を繰り返しながら、ホモ・サピエンスへと進化する。
そしてホモ・サピエンスはアフリカを出て、ユーラシア大陸に拡散し、
ついには日本列島にたどり着く──それは、果てしない時空を超えた壮大な物語だ。
これまで日本人のルーツについてさまざまな説が論じられてきたが、
人類学による最新の研究結果から、これまでの通説とは異なる新たな仮説が浮かび上がってきた。形質人類学研究における第一人者が、独自の切り口から日本人のルーツの謎に迫る!
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商品情報
- 著者
- 溝口優司
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 生物・バイオテクノロジー
- 出版社
- SBクリエイティブ
- 掲載誌・レーベル
- SB新書
- 書籍発売日
- 2020.10.05
- Reader Store発売日
- 2020.10.05
- ファイルサイズ
- 5.4MB
- ページ数
- 200ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (5件のレビュー)
-
■私たちの祖先は人類になる前はチンパンジーなどの類人猿と同様に樹上生活を営んでいたと考えられる。ところが何らかの理由によって木々がまばらにしか生えていない場所で暮らさざるを得なくなったため、地上生活に…適応して直立二足歩行をするようになった。何らかの理由とは地球環境の変化によって森林が縮小したことや、それに伴って食物が減少したこと、或いはほかの生物との競合が激しくなったことなど。
理由が何であるにせよ地上生活に適応して直立二足歩行をするようになったことがその後の人類の運命を決定づけた。直立したことによって人類は手の自由を獲得しその結果として発達した大きな脳を獲得し言語も獲得したからだ。
手で体を支える必要がなくなった人類は様々な用途に手を使うようになり、それによって脳が刺激され発達していくという循環を繰り返し、その結果人類の脳は類人猿の脳の大きさをはるかに超え最終的には今の大きさ1400cc前後にまで拡大した。
■私たち日本人の遠い祖先であり最初の人類でもある猿人は1000万~700万年のいつか、アフリカで誕生したとされる。事実として200万年前よりも古い人類の化石はアフリカでしか発見されていない。しかもアフリカの中では様々な地域で年代的にも様々な種の異なるいくつもの猿人の化石が見つかっている。さらに遺伝子研究からもゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザルと4種類いる類人猿の中で私たちホモ・サピエンスに最も近いのはアフリカに棲むチンパンジーということが分かっている。これまでに発見されたいくつもの事実が人類誕生の地はアフリカであると指示している。
■現在、最も古いとされる人類、即ち私たち現代日本人の最古の祖先は2001年に中央アフリカのチャドで発見された猿人・サヘラントロプスである。700万~600万年前に生息していただろうと考えられている。
■パラントロプスは生存競争に敗れて絶滅したが、顎と歯が比較的華奢なために「華奢型猿人」とも呼ばれるアウストラロピテクスは最初の「ヒト属」つまり「ホモ」のつく種類へと繋がったと考えられている。その最初の種は250万~150万年前にかけて棲息していたホモ・ハビリス。
ホモ・ハビリスが生きていた時代は猿人のアウストラロピテクスやパラントロプス、さらには原人のホモ・エルガスターやホモ・エレクトスなどとも重なっている。
■地球上に生きている人類はすべて同じホモ・サピエンスという種。同じ種であるとはどういうことか。有性生殖する動物の場合、基本的に交配第1世代に子が生まれるかどうか。例えば、馬とロバの間にはラバという子が生まれる。これが交配第1世代であるが、ラバとラバの間に子は生まれない。つまりラバは種ではなく馬とロバは異なる種ということ。
■各地に住む現代人のDNAを比較したところヨーロッパ人も中国人も日本人もアメリカやオーストラリアの先住民もすべてアフリカのホモ・サピエンス起源であるらしいことが分かってきた。
■DNAは細胞が分裂するとき自分自身を複製することで分裂前の細胞の遺伝情報を分裂後の細胞に伝える。ほとんどの場合、分裂する前と全く同じに複製されるがまれにちょっとしたコピーミス、即ち部分的な突然変異が生じることがある。この突然変異が命にかかわるものであれば、その人は死んでしまうのでDNAの変異は子孫に伝わらない。しかし命にかかわらない変異はそのまま子孫に伝わり、次第に蓄積されていく。
したがってDNAに蓄積された部分的な変異の種類や量を調べることでその人がどの人類の集団と近いか遠いかなどが分かる。
■人類学の研究対象となっているDNAは二つのタイプがある。一つ目は「核DNA」と呼ばれるもので細胞の核の染色体を構成している。核DNAのうち男性だけが持つY染色体のDNAはそれを分析することで父系の道筋を追えるため集団の類縁関係の研究にもしばしば使われる。
二つ目が細胞の核の外にある小さな器官ミトコンドリアの「ミトコンドリアDNA(mtDNA)」である。
■mtDNAには突然変異を蓄積しやすいうえに構造が単純で扱いやすく、母から子へと母系遺伝するために父からの遺伝情報が入らず進化の道筋をたどりやすいという特徴がある。
現代人のmtDNAの起源はアフリカの一人の女性のmtDNAだとする有名な「イヴ仮説」もこのようなDNAを調べることで立てられたもの。
■「私たちの起源はアフリカの一人の女性である」と「私たちのmtDNAの起源はアフリカの一人の女性のmtDNAである」の違い
すべての核遺伝子は核の中の23対の染色体のDNA上にある。1対の染色体のうちの1本は母親から、もう1本は父親から受け継ぐ。2本の染色体のDNA上のある位置に存在する遺伝子は父方と母方の2つがあるがメンデルの法則でおなじみの優劣関係があり、どちらかが優勢遺伝子の場合はどちらか一方のみでも、劣性遺伝子の場合は両方揃ったときだけその遺伝子が支配する形質が出現する。
この2本の染色体のうち1本、例えば母由来の1本の祖先はというと母方の祖母と祖父のうちのどちらかの染色体だったわけである。さらにその1本が祖母のものだったとするとその祖先は祖母方の曽祖父か曽祖母の染色体の1本ということになる。しかもこれが変化せずにすんなり受け継がれるのではなく精子と卵子が作られる時には母方と父方の2本の染色体が一部だけ交叉してから分離して1本になりそれが卵子や精子に入ったりするので、同じ両親から少しずつ異なる子供が生まれる。
したがって一人の個体の1本の染色体(即ち核DNA)自身の祖先はちょうど時間軸を下れば下るほどたくさんの子供がいるのと同じように時間軸を遡れば遡るほど、たくさんの祖先がいることになる。このため過去に遡ったら一人の祖先に行き着いたということにはならない。
mtDNAの場合は核DNAの場合とは異なる。ミトコンドリアは細胞の核ではなく細胞質の中にある。そして細胞質は卵子にはあるが精子にはない。したがって男女ともすべての人の細胞質は母親のものと同じ。仮に一人の女性から娘が生まれその娘がまた娘を産めばその最初の女性の細胞質は存在し続ける。しかし息子しか生まれなかったときは息子は精子しか作れないので息子が結婚してできた子が娘であろうと息子であろうと細胞質はすべて配偶者のものになってしまう。つまり最初の女性の細胞質はそこで絶滅してしまう。
一方、最初の女性の核遺伝子は息子だけではなく孫にも息子の配偶者の細胞質とともに引き継がれていくので最初の女性が生物体として絶滅してしまうわけではない。最初の女性の細胞質とその中のミトコンドリアだけが絶滅するのである。そのような絶滅の過程を繰り返すとある有限の地域には結局、ある時点に存在していいた一人の女性の細胞質(ミトコンドリア)だけが生き残ることになる。逆に言えばmtDNAの場合は過去にさかのぼれば一人の女性、つまりミトコンドリア・イヴに行き着く。
したがって「私たちのmtDNAの起源はアフリカの一人の女性のmtDNAである」とは言えるが、「私たちの起源はアフリカの一人の女性である」とは言えない。
■ヒトは暑い地域では小さかったが寒い地域では大きくなった(寒冷地適応)
なぜかというと体が大きいほど熱を体内に溜め込みやすく体外に放出しにくくなるから。
単純に身長が2倍になったとすると体表面積は2の2乗で4倍に、体積は2の3乗で8倍になる。一方熱の生産量は細胞の数、即ち体積に比例し熱の放出量は体表面積に比例する。つまり身長が2倍になると熱の生産量は8倍になるが熱の放出量は4倍にしかならない。そのため同じ種類の動物であれば寒いところへ行くほど体が大きくなるという法則が成り立ち、これを発見者の名をとって「ベルクマンの法則」という。
また、寒いところに行くほど凹凸が少なく丸くなるという法則をやはり発見者の名をとって「アレンの法則」という。これは凹凸が多いほど多様面積が大きくなり熱を放出しやすいため寒冷地では同じ体積なら体表面積が最も小さい球に近付くため。
ヒトも基本的に暑いところでは体が小さく寒いところでは大きくなる。例えば中国では南の方の人は小さく北に行くほど大きくなるということが知られている。続きを読む投稿日:2022.02.11
とても面白く読めた一冊。
昔、学校で習ったジャワ原人も北京原人もネアンデルタール人もアウストラロピテクスも、その当時の知見は陳腐化して、今はいろんなことが分かってきて、その分、いろんなことが新たに謎…となって生まれているのだろうと思います。
類人猿と比べて、私たちは鼻が高い。実は鼻が高くなったわけではなく、進化の過程で、頭は丸く大きくなり顎と歯は小さく華奢になったために、鼻が高くなったように見えるのだそうです。時代が変わっても空気を温めて湿り気を与える鼻の機能は変わらず必要だったからだそうです。鼻が高いと言っても鼻の角度そのものは類人猿と変わらないそうです。・・・だって、クレオパトラさん。続きを読む投稿日:2023.05.31
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