百貨店・デパート興亡史
梅咲恵司(著)
/イースト新書
作品情報
江戸時代から続く「小売の王様」は、その使命を終えたのか?
三越、伊勢丹、高島屋、松坂屋、大丸、西武、東急、阪急……
変革はいつ止まったのか、再び革新は起こるのか。
江戸時代の呉服屋に起源を持ち、およそ四〇〇年の歴史を誇る百貨店。近代小売業の先駆、業界のトップとして、日本の消費文化を創ってきた。しかし、いまや経営は厳しさを増す一方で、その存在が揺らいできている。三越、伊勢丹、高島屋、松坂屋、大丸、西武、東急、阪急……。かつて隆盛を極めた百貨店は、商品販売で、宣伝戦略で、豪華施設で、文化催事で、いかにして日本社会を牽引してきたのか。「モノが売れない」時代となり、デジタル化が進む現代において、何を武器に活路を拓くのか。「週刊東洋経済」副編集長が、その歴史と展望に迫る。
【目次】
はじめに
序 章 「イノベーター」として君臨した百貨店
第一章 商い――「モノ」が売れない時代に何を売るか
第二章 流行創出――文化の発信地にまだブランド力はあるか
第三章 サービス――「おもてなし」は武器であり続けるか
終 章 かつての「小売の王様」はどこへ向かうのか
おわりに
主な参考文献
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商品情報
- シリーズ
- 百貨店・デパート興亡史
- 著者
- 梅咲恵司
- 出版社
- イースト・プレス
- 掲載誌・レーベル
- イースト新書
- 書籍発売日
- 2020.04.10
- Reader Store発売日
- 2020.05.07
- ファイルサイズ
- 3.2MB
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この作品のレビュー
平均 3.5 (5件のレビュー)
-
「ショッピングモールとは何か」とともに今、興味があるのが「百貨店はオワコンなのか」というテーマ。手始めにこちらを。
よく知られた話ですが百貨店の前身は呉服屋なので、創業が1673年(三越)とか、16…11年(松坂屋)とか、1717年(大丸)とか。1831年創業の高島屋は「歴史が浅い」のだとか。
三越のデパートメントストア宣言が1904年。明治の話です。
もう一方のルーツである電鉄系のターミナルデパートは1929年の阪急百貨店が最初。
歴史を遡ると小売業から「消化仕入れ」て店員が売るという百貨店方式の経緯がわかる。
呉服店のお帳場から外商制度やクレジットカードのシステムが生まれたのも納得。
私が初めてクレジットカードをつくったのも丸井なんですが(1990年代にはそういう若者は多かったはず)、創業者が月賦商だったというのは驚き。
もともと中流、上流階級を顧客としてきた百貨店が建物、広告、催事、食堂、屋上庭園など文化面で大きな役割を果たしてきたことも事実。
創業時代の話から1950年代、そして2000年代くらいに話が飛んでしまう感があり、どちらかというと1990年のピーク以降を知りたかった私としてはやや物足りない。
私にとって百貨店とは伊勢丹、京王、小田急あたりの新宿が中心なので、ここらへんの話が少なかったのも残念。
デパート誕生の時代から100年経っているので変革しなければ消えていくのもしょうがない。
本書のギンザシックスに見るように百貨店は百貨店ではなく、不動産ビジネスへと変わっていくことで生き残りをかけるのだとすると、新宿で進められている小田急や京王の高層ビルも完成の暁に百貨店が入らないこともあるのだろうなと思う。
この新書の発売日が2020年4月10日。コロナの緊急事態宣言第一回の頃です。売れなかっただろうなあ。
そして緊急事態宣言において百貨店も休業の対象となりました。(おぼえてますか?)
大打撃を受けたのは間違いなく、本書以降も閉店や改装、休業などが起こったはずなので、そこからの話も知りたいところです。
以下、引用メモ
004
そごう・西武百貨店
2001年 包括的業務提携
→セブン&アイ・ホールディングス
阪急百貨店・阪神百貨店
2007年 統合
→エイチ・ツー・オー リテイリング
大丸・松坂屋
2007年 統合
→J・フロント リテイリング
三越・伊勢丹
2008年 統合
→三越伊勢丹ホールディングス
023
1852年 世界で最初の百貨店
フランス・パリ「ル・ボン・マルシェ」
024
1858年 アメリカ・ニューヨーク「メイシーズ」
1863年 イギリス・ロンドン「ホワイトリー」
1879年 ドイツ「ガレリア・カウフホーフ」
1904年(明治37年)三井呉服店が三越呉服店に改称
1905年1月2日「デパートメントストア宣言」
026
三越呉服店は、1673年(延宝元年)に三井高利が創業した「越後屋」を起源とする。
その後、三井の姓を取った「三井高利呉服店」へと屋号を変更。1904年には、「〝三〟井」と「〝越〟後」を合わせて、「三越呉服店」と名乗るようになる。そして1928年に、三越呉服店は「三越(現在は三越伊勢丹ホールディングス傘下の三越伊勢丹)」へと商号を変え、現在にいたる。
027
三越呉服店の宣言では、〈デパートメント、ストーアの一部を実現致すべく〉と、英語で「部門」を意味する「デパート」という言葉が使用されている。
やがて長い時間を経て、「多種類の商品を大きな売り場の中で、各部門にわけて販売する大規模な小売店」を意味する「百貨店」という用語が一般化した。
028
百貨店のおもな顧客は中流、上流階級の人々だった。各百貨店に得意ゾーンがあり、三越は商工業の資産家階級や京都の公卿華族、大丸は比較的裕福な中流の一般市民、そして高島屋は宮内省関係の宮家の顧客が多かったとされる。
三越は新しい顧客として、東京の西側にある高台に住む人々、いわゆる「山の手地区」に生活する人々を開拓した。江戸時代に建てられた武家屋敷は、明治時代になると空き家になっていたが、そこに地方から上京してきた官吏、軍人、学者、銀行員、会社員などが移り住んできた。三越は、いわばこの「新しいエリート層」を主要顧客として取り込んでいったのである。
040
もっとも古い歴史を持つのが、松坂屋の前身・いとう呉服店である。1611年(慶長16年)、織田信長の小姓であった伊藤蘭丸祐道は、「本能寺の変」の後、武士を捨て商人になった。これが、いとう呉服店の始まりとされる。
042
1929年(昭和4年)、阪神急行電鉄直営の阪急百貨店が大阪の梅田駅に開業。ターミナルデパートの設立は、世界で初めてだった。
045
人の懐中を勘定して見ると、その当時は松屋が一日に彼れ是れ五万人、三越が八万人くらゐ、これだけの御客様を集めるのにそんなに金を使はなければならぬのならば、吾々の阪急のターミナルは当時一日十ニ三万人、御客様は放って置いても一日に十何万あるのですから、お客様を無理からに集める経費がいらない、此経費がいらぬものとせば私達は何処より安く売ることが出来る。
小林一三「私の経営法」
063
1932年、銀座線に「三越前駅」が開業した。
この駅は三越が建設費用を全額負担してできた駅だ。駅建設費用を三越が負担するかわりに、「屋号を駅名にする」ことや、駅から直接三越に出入りでき、地下鉄利用者が百貨店に流れやすくなるような「改札口を設置する」ことを要請した。
064
東京地下鉄の「上野広小路駅」が開設した際には松坂屋が、「日本橋駅」建設の際には白木屋と高島屋が、さらに「銀座駅」の建設にあたっては松屋が、建設費の一部を出資し、駅からの顧客の流れがスムーズになる動線を設計していった。
065
日本で初めて、デパ地下のスタイルを築いたのは松坂屋名古屋店、と言われている。
067
1902年に大阪で繊維卸売業として佐々木八十八が創業した佐々木営業部は、1923年に「レナウン」を商標登録。
068
1927年には、それまで老舗百貨店の三越などで働いていた樫山純三が大阪で独立し、運動具や化粧品などの輸入卸を手掛ける樫山商店を設立した。これが後に大手アパレル会社「オンワード樫山(現・オンワードホールディングス)」となる。
続いて1943年には、東京・板橋で吉原信之が「三陽商会」を設立。さらに1959年、「ワールド」が神戸市生田区でニット婦人セーターの卸売業として誕生した。
070
百貨店を主要な販路と見ていた同社は、当時としては画期的な「委託販売」を思いつく。いったん商品を百貨店に買ってもらうが、売れ残った商品をオンワード側が引き取る仕組みで、これが発展して現在の「消化仕入れ」につながっていく。
073
堤は1970年代以降、GMSを志向した西友において、このビジネスモデルを導入しようと独自商品の開発に力を注いだ。そして、たどり着いたのが、「ノーブランドだけど品質は一流」とうたった「無印良品」である。
西友のPB(プライベートブランド:小売業者や流通業者によって企画販売される商品ブランド)商品として、1980年に無印良品を投入し、家庭用品9品目、食品31品目を展開した。
077
より商圏の広い、本格的なリージョナル・ショッピングセンターは、1969年にオープンした「玉川高島屋S・C(ショッピング・センター)」が初めてとされる。
081
2017年、大丸松坂屋百貨店を傘下に持つ、J・フロント リテイリングは、東京・銀座の中央通に面する場所に、大型の複合商業施設ギンザシックスをオープン。
082
J・フロントの単独ではなく、森ビル、住友商事、LVMHとの共同プロジェクトで、商業施設の上階は、七層にわたるオフィスビルとなっている。商業集積としての魅力を高めるためには、百貨店単独で出店するのではなく、他の企業・業種を巻き込んだ形のほうが、たくさんの人を引き寄せる魅力的な集積が作れるようになる。J・フロントはそのように考え、複数企業との共同事業を選択した。
ギンザシックスは、松坂屋銀座店の跡地を利用して建てられたものだ。
084
その店が立っている土地の価値に見合った利益を上げているのか。これは松坂屋銀座店に限らず、現在の百貨店が抱える構造的な課題の一つです。
冷静に分析した結果が「百貨店を入れない」という決断につながりました。
奥田務『未来の流通革命』
090
1998年 「ユニクロ」フリースブーム
2008年 スウェーデンの「H&M」日本上陸
092
丸井は1931年(昭和6年)に、創業者の青井忠治が月賦商(分割払いを条件とした月賦払いを中心とする小売店)の「丸ニ商会」から暖簾分けで独立し、開業した。現金販売を基本とする三越や大丸などの老舗百貨店とは違い、割賦販売により商品を販売する「月賦百貨店」として運営してきた。
107
1896 年、高島屋は京都店にショーウィンドーを設置した。これが国内百貨店で初めてのショーウィンドーと言われている。続いて、1899年に開店した高島屋大阪店がショーウィンドーを設けた。それ以降も、1903年に三井呉服店、白木屋呉服店、1904年に松屋呉服店、1906年に名古屋のいとう呉服店が、相次いでショーウィンドーを開設している。
108
1903年、白木屋は洋風三階建ての店舗をオープンした。高島屋は1907年に、大阪店を洋風店舗に改築した。その年には、松屋も三階建ての洋風の店舗を東京・神田の今川橋に改装してつくった。
三越は続いて1914年に、鉄骨鉄筋コンクリート造りの本店新館を完成させた。
128
1904年
日本の百貨店で、もっとも早く食堂を設けたのは、東京・日本橋の白木屋だった。
132
三越は食堂を開設した1907年に、洋風建築でつくられた元洋服部の建物の屋上を改造して、六〇坪程度の大きさの庭園を設置する。
142
イタリア語で公園を意味するパルコの一号店が、東京・池袋にオープンしたのは1969年のこと。当時はまだ、百貨店が小売業界をリードしていた。その中で、パルコは当時では珍しかったファッションビルとして事業を開始した。
164
松坂屋上野店は1929年に、日本で初めてエレベーターガールを採用した。
175
三越は、外商制度と表裏一体の関係にあるお帳場制度を創業期から脈々と受け継いできたが、これを1953年にシステム化し、帳場票と顧客名簿とによる「個人売掛制度」をあらたに設けた。
この「個人売掛制度」は1960年に、三井銀行、第一銀行との提携により発足した新しいクレジットシステム「帳場票による売掛制度」として発展。
177
日本百貨店協会が公表している全売上高に占める外商の売上高比率の推移を見ると、2006年には都市部店舗で14.3%、地方店舗で10.5%だった。
191
商品情報の一元化やECサイトの拡充に向け、伊勢丹新宿店に隣接するパークシティイセタンの一、ニ階を改装し、「ささげ」(商品をECサイトに掲載するための撮影、採寸、原稿書き作業のこと)用の施設「イセタン スタジオ」として稼働している。
203
1957年4月 ダイエー創業
1958年 ヨーカ堂(後のイトーヨーカ堂)創立
ヨーカ堂の前身は、1920年創業の東京台東区浅草の「羊華堂洋品店」である。
204
1963年4月 西友ストアー誕生
池袋にターミナルデパートとして構えていた西武百貨店は、一事業部門だった西武ストアーを西友ストアーと改称し、スーパーマーケット・チェーンとしての運営を始めた。
206
1969年 池袋パルコ
1969年 代官山ヒルサイドテラス
1973年 渋谷パルコ
1978年 ラフォーレ原宿
1979年 渋谷109
1976年 JR東日本によるルミネ新宿
1982年 小田急電鉄による本厚木ミロード
212
1974年 セブン-イレブン一号店 東京・豊洲に誕生
このセブン-イレブン一号店は、イトーヨーカ堂がアメリカのコンビニエンスストア企業であるサウスランド社と提携して設立したヨークセブン(後のセブン-イレブン・ジャパン)のフランチャイズ店で、朝七時から夜一一時まで営業をする店として有名になった。
西友ストアーを母体とするファミリーマート
ダイエーが母体のローソン
215
松坂屋の前身であるいとう呉服店は、1768年(明和5年)に東京・上野広小路の松坂屋を買収し、「いとう松坂屋」として開業した。
1662年(寛文2年)創業の老舗百貨店、白木屋は、1958年に東横百貨店(現在の東急百貨店)と合併。
1978年には新潟の小林百貨店が三越のグループに入り、1980年に新潟三越となった(新潟三越は2020年3月に閉店予定)。
216
2000年7月 そごう 民事再生法の適用を申請
2001年 そごうと西武百貨店 包括的業務提携
2006年 セブン&アイ・ホールディングスの傘下に
2007年10月
阪急百貨店と阪神百貨店が経営統合し、「エイチ・ツー・オー リテイリング」が誕生
続きを読む投稿日:2023.04.23
とあるギャラリー店主から、百貨店勤務であれば貸すよと言っていただいた本。
復習も兼ねて面白かった。
時代と共に呉服屋から百貨店へ進化してきた過程、その中には消費行動・価値観の変化・環境の変化など様々に…適応してきた事が分かる。
カメレオンのような小売りの王様に返り咲く為に、研究していく必要がある。
この本に巡り会えたのも、偶然入ったギャラリーの店主とお話をしたから。
人と人をつなげるものとして"本を渡す"こと、
絶対にその人に返さなくてはならないしその気持ちには良心が働く。本で繋がる事に感動を覚えました。続きを読む投稿日:2022.03.01
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