天才たちの日課 女性編
メイソン・カリー(著)
,金原瑞人(訳)
,石田文子(訳)
/フィルムアート社
作品情報
草間彌生、ピナ・バウシュ、フリーダ・カーロ、ヴァージニア・ウルフ、マルグリット・デュラス、スーザン・ソンタグ、ミランダ・ジュライ──女性の作家、画家、デザイナー、詩人、アーティストたちは、いかにして日々「制作」に立ち向かい、「生活」と「仕事」 の折り合いをつけていたのか。
働く女性にとって、これはもはや実用書だ。
――伊藤亜紗(美学者・東京工業大准教授)
143人の日課が束になって力をくれる。
――斎藤真理子(翻訳家)
ロングセラー『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』の第2弾! 前作で取り上げた161人のうち、女性は27人しかいなかったことに大きく反省した著者が、創作に打ち込むクリエイティブな女性たち143人の、惚れ惚れするほど鮮やかでとても真似できない、ユニークで並外れた苦闘と試行錯誤の連続を丁寧に拾い集め、できる限り正確にまとめあげました。
それぞれの人物を特徴づける日々の日課や「仕事のお供」の嗜好品などはもちろん、創作に適した精神状態の保ち方や自信がなくなったときの対処の仕方など、彼女たちが切実な状況を乗り越えてきた姿は、現代の窮屈で不自由な枠からはみ出そうと格闘するすべての才能あふれる人々にとってとても他人事とは思えない、自由と勇気を得る福音の書となるはずです。
さらに今回、女性にフォーカスを当てたことで明らかになったのは、わたしたちがいわゆる「天才」に期待する奇行や儀式めいた日々のルーティンよりも、もっともっと切実な女性特有の葛藤や波乱があったということです。
女性たちは常に、おもに家庭生活において自分だけの場所や時間を確保できないという困難や、女性であるがゆえに受ける偏見や差別を乗り越えるという苦闘に直面させられています。収録されている143人すべての女性たちの日課を見てみると、その先には、女性が創作を仕事にするためにどれだけ格闘し、仕事を続けることがどれだけ困難だったのかを、如実に感じることでしょう。本書は、過去、現在そして未来の、ものをつくり、はたらき、生活していくすべての女性たちの姿を静かに照らし、現在進行形の問題としてわたしたちの胸に迫る、本物の実用書なのです。
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この作品のレビュー
平均 3.5 (20件のレビュー)
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前作『天才たちの日課』の男女比を反省した著者は、女性アーティストに絞って新たに一冊書きあげた。ライフとワークのバランスに思い悩み、性差別と闘いながらクリエイティビティを発揮してきた女性たちの言葉に打た…れる小伝集。
ブログの書籍化であり、日課にフォーカスしたトリビア的な内容だった前作とは全く別物。このためにインタビューしたアーティストも多く、コンセプトも構成も「日課」から飛びだして「生き方の多様性」へと広がった続篇になっている。
女性作家やアーティストを紹介するガイドとしても楽しく、特にジャネット・フレイムとジーン・リースの人生が強烈で本を読んでみようと思った。西洋人中心だが、アフリカン・アメリカンの比率は前作より高いかな。出版当時現役の人も前より多い。人選について強いて言うなら、作家はエンタメ系の人もいるのに、音楽家はハイカルチャーの人ばっかりで少し残念。ここにフィメール・ラッパーとかいたら面白かったはず。
読みながら書きとめた言葉がいくつもある。「俳優はほかのどんな職業にも増して時間の奴隷だ」と言ったタルーラ・バンクヘッド、「書くこと以外はぜんぶ楽しい」と言ったドロシー・パーカー、「ハリウッドでいいデザイナーであるためには、精神科医とアーティストとファッションデザイナーと仕立屋と針山と歴史家と看護婦とバイヤーの全ての役を兼ね備える必要がある」と言ったイーディス・ヘッド。「どんなものを手に入れようとも、すべてのものを、世界を手に入れるべきだと思うから。なにもあきらめるべきではないと思う。人生に取り組むために必要なのは、猛烈な貪欲さだと思うの」と語るグレイス・ペイリー。そして、タマラ・ド・レンピッカの恰好良すぎる「奇跡なんてない。あるのは自分が作るものだけ」。
また、やはり結婚をめぐる諸問題は一大トピックにならざるをえない。特に同業者と結婚したケースで、自分の仕事には理解と支援を求めながらも妻の創作活動は妨害する夫たちにうんざりする。若いころのコレットが夫に執筆を強要され、監禁されて書いた小説を夫名義で出版されていたというのも知らなかった。画家アリス・ニールの「よい妻がいたら、私はもっと成功していたはずです。いかにも男性優位主義者的な発想ですが、これが私の前に立ちはだかってきた社会の現実なのです」という言葉は、『龍彦親王航海記』を読んでから私のなかで地味に頭を離れない「〈家庭内編集者〉〈家庭内秘書〉としての妻」という問題を端的に表していると思った。
軽快な語り口で一人一人の分量も数ページだし、さくさく読み進められるが、ケイト・ザンブレノの『ヒロインズ』や山崎まどかの『真似のできない女たち』に通じるスピリットのある本だった。女ことばを使いすぎず、その人らしい口調で自然に読める訳文がとてもありがたい。これは作品のテーマ上、とても大切なことだったと思う。面白くて一気に読んでしまったけど、毎日一人分ずつ読んでいくのでもよかったなぁ。続きを読む投稿日:2024.02.02
女性編ではない方を読んだ方が良かった気がする。天才達は普通であることが難しいのだと思った。それでいいのだ
投稿日:2024.04.05
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