世界哲学史4 ──中世II 個人の覚醒
伊藤邦武(著)
,山内志朗(著)
,中島隆博(著)
,納富信留(著)
/ちくま新書
作品情報
13世紀、ヨーロッパは都市の発達、商業の成長、教育と大学の充実など様々な面で大きな発展を遂げ、世界史の舞台の中心へと歩を進めた。一方でモンゴル帝国がユーラシア大陸を横断的に征服したことで、世界は一体化へと向かっていった。その中で、世界哲学はいかに展開したのか。ユーラシア大陸の両端に現れた鎌倉仏教と托鉢修道会の運動など、超越的なものへの受動的な服従に還元できない個人の覚醒のありようを、同時代の諸文化の影響関係を視野に入れながら考察していく。
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商品情報
- シリーズ
- 世界哲学史
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2020.04.10
- Reader Store発売日
- 2020.04.17
- ファイルサイズ
- 4.9MB
- シリーズ情報
- 既刊9巻
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この作品のレビュー
平均 4.2 (10件のレビュー)
-
中世Ⅱ 個人の覚醒
本書は、12,13世紀の中世に光を当てる
「12世紀ルネサンス」という言葉があるこの時代は英雄譚や騎士道精神が誕生し、ヨーロッパのアイデンティティがしていく時代。
都市の発展、…商業の成長、教育と大学の発達なヨーロッパは様々な面から大規模な発展を遂げていく。
自らが聖書をよみ、人々が個人に目覚めていく時代、哲学は、個人の救済という問題に向き合うようになっていく。
気になったことは次です。
・16世紀のルターらの宗教改革は、実は第2ステップであった。その原点は、15世紀にチェコがおきたフスの宗教改革だ。個人が聖書に向き合うための準備をしたのがこの時代だった。
・トマス・アクィナスの神学大全など、宗教が哲学を取り入れ、キリスト教信仰と理性が融和する壮大な体系が生み出されていく
・修道会の勉学への重視は、やがて、パリ大学の神学教授を占めるようになっていく。それが、修道会と、それに所属しない聖職者の間で論争になっていく。
・中世ヨーロッパの哲学の中心は、スコラ哲学であって、アリストテレスの関係で語られる。彼の著作を原点に哲学が発展していくことで、アリストテレスは、中世哲学者の教師であった。
・トマス哲学の争点は、存在と本質との区別である。
・ユダヤ教のトマス・アクィナスである、マイモニデスは、ユダヤ教と哲学を融合し、大全を著作した。そして「迷えるものの導き」で、宗教と哲学とのあるべき境界線を引いていく。その境界の中であれば、哲学として議論ができるという限界なのである。
・イスラーム世界へも、アリストテレスが伝播していく。ギリシア語からアラビア語へと翻訳された彼の書が、アヴィセンナという大哲学者のもとで、宗教と哲学の融和が起こっていくのである。
・すなわち、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教という3大一神教が、アリストテレスの哲学で体系化し、宗教と哲学が融合していく。これが12世紀のルネサンスである。また、それぞれの宗教で注釈書によって、その境界点がさだめられているのも、興味ぶかい。
本書半ばにて、再び、中世哲学への振り返りがはいる。西洋中世哲学は、理性と信仰とをごった煮した思想である、厳密には哲学とはとても言えないのだと。
・普遍論争の中で、実在論と、唯名論が西洋中世哲学から分離していく。「この世界に実在する個物のうちに、普遍が実在的に内在する」というテーゼをとる実在論に対して、「この世界に実在するものは、徹底的に個物でしかない」という立場を唯名論はとる。
・個人という意識の台頭により、哲学の世界にも、社会共同体論なる概念が生まれ、階層的な秩序構造や、共同体内の人間同士の関わり合いについても思考が及んでいく。
・東アジアでの動きについては、中国の朱子学と、日本の鎌倉仏教がのべられている。
・中国儒教にとって、科挙の再開と仏教との出会いが新しい転機である朱子学を生んだ。それは誰もが学問を修めることによって聖人に至ることができるというものだ。朱子学を「理学」とよび、
朱子学を批判する、陽明学を「心学」という。
・良知を致す 性善説で心の働きに重きを置く、陽明学は、格物窮地たる知の追求を行う、朱子学を鋭く批判する。しかして、本書は、近代以降の学問研究において、学を窮めるということに
ついては、朱子学の「窮理」が受け継がれているのではないかとの示唆をおこなっている。
・日本では、平安時代から続く、顕密仏教から離れて、「顕密、浄土、禅」というキーワードで、仏教界に巨人が多数現れる。
・法然、聖道門と、浄土門の2つの教えから、末法の時代にあったものは、浄土門であり、方法も、正しい行、正行と、雑多な行、雑行があり、正行は、南無阿弥陀仏と、称名をとなえることと主張した。
・弟子親鸞は、阿弥陀本願の第18願である、全ての衆生は本願が成就しているのですでに阿弥陀仏に救われているとの立場に立つ。法然のそれを、念仏為本というのに対し、信心為本という
・達磨を祖とする禅宗も興隆した。栄西は、興禅護国論を著し、天台と密教の混然一体になった仏法をといた。
・禅宗は、五山と林下に分かれたが、幕府の庇護のもと、京都と、鎌倉に寺院をおいた五山が栄えた。
・道元は、正法眼蔵を著し、その中で、自己を忘れることが大事であることを解く。臨済禅として伝わった十牛図の考えとも関連しているのだろうか。
・日本でも、仏教と神道との融和が起こり、仏教側が神祇との関係を模索し、神身離脱や、仏教擁護、神仏隔離などの主張に対して、鎌倉仏教は新しい回答を用意した。神は本来心の外に存在するものであったが、それが心の中に入りこんだという。西洋では、哲学が果たした、融合を、密教が胎蔵した膨大なテキスト群を有する仏教が果たしている。この関係は、明治まで続いていく。
目次は以下の通りです。
はじめに
第1章 都市の発達と個人の覚醒
1 13世紀と哲学
2 都市という集住形式
3 中世における個体と個人
第2章 トマス・アクィナスと托鉢修道会
1 トマスの思想体系の基本的特徴
2 托鉢修道会の基本的特徴
3 パリ大学と托鉢修道会
第3章 西洋中世における存在と本質
1 歴史の中の中世哲学
2 存在と本質
3 本質と形而上学
第4章 アラビア哲学とイスラーム
1 イスラーム地域への哲学の伝播
2 アヴィセンナによる哲学統合プロジェクト
3 宗教と哲学の対立
4 その後の展開
第5章 トマス情念論による伝統の理論化
1 基本概念と思想源泉
2 多様な情念をどう理解するか
3 情念論の目的と背景
第6章 西洋中世の認識論
1 「志向性」の問題
2 光学と志向性
3 感覚認識
4 知性認識
第7章 西洋中世哲学の総括としての唯名論
1 西洋中世哲学と普遍論争
2 唯名論的な哲学がもつ二つの特徴
3 唯名論的な哲学の現場 オッカムとビュリダン
第8章 朱子学
1 中国儒教の再生と「個人の覚醒」
2 心学としての朱子学
3 理学としての朱子学
4 朱子学から考える
第9章 鎌倉時代の仏教
1 全体図
2 顕密仏教の営み
3 新たに登場する諸宗
4 まとめ
第10章 中世ユダヤ哲学
1 異邦の思想
2 マイモニデス 中世ユダヤ哲学の頂点
3 ユダヤ教文化のなかの哲学へ
あとがき
編・執筆者紹介
年表
人名索引続きを読む投稿日:2022.10.27
・存在と本質というアリストテレス的な概念の上に、本性についてのアヴィセンナの学説が交差することで、一三世紀から一四世紀の代表的なスコラ学者たちの形而上学は多様な発展を見せている。これら二つの概念、とく…に本質に関しては、これまで考察してきたような意味で、各々の哲学者による形而上学的な探求の要となるような概念であることが明らかとなった。続きを読む
投稿日:2023.12.28
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