この作品のレビュー
平均 4.1 (288件のレビュー)
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なぜサブマリンか、解説にあるように、「意識の奥底のほうに押さえつけている、どうしようもない欲動」の比喩か。帯にもある「暗い深海からの声」か。
今回もまたヘビーなテーマを扱う伊坂先生。
交通事故は、誰…もがあっという間に加害者にも被害者にもなりうるもの。さらに、加害者が少年であるということや、その少年の背景であるとか、家庭環境であるとか、そういうところに思いを馳せずにはいられない。少年は、加害者である前に、被害者だったんだ。
とある番組で、「制裁として」いじめをした側がクラスを変わったり転校するのではなく、いじめられた側がそれらを強いられてしまうことについて、スクールカウンセラーさんに意見を問うたところ、「なぜいじめた側が制裁を受けないのか」答えられなかった、といったような内容のニュースを目にしました。そして、それに答えられなかったカウンセラーさんを信用できないと。また、コメントを見るとそのように思っている方が多くいらっしゃるそうで。
けれど、このスクールカウンセラーさんが言いたいことは、いじめをした側の話も聞こうよ、って、そういうことだと思うんだ。なんにもない子がいじめなんてしないもの。何かがあるんだよ。大人が、その何かに気づいてあげないと。
少年に必要なのは、制裁ではなくって、SOSに気づいてあげること、そのいじめっ子にとっては、そのいじめがイコールSOSなんじゃないかな?加害者とか、被害者とか、そういう風ではなくて、みんな感情と肉体を持った生身の人間で、思っていることや育った環境なんてみんな違うんだから、みんなが安全に、自分らしく生きることができるようにしましょうよ、っていうことではないのか。
決していじめっ子を擁護しているわけではありません。暴力はよくない。
個人的には、あのスクールカウンセラーさんの意見に、批判が多いことのほうが驚きました。
話は逸れたけれど、ちょうどこの作品を読んでいる時に、そんなニュースを目にして。
スクールカウンセラーさんの意見に納得できなかった人は、この作品を見てどう思うだろう。若林青年が生きていること、棚岡佑真が生きていること、小山田俊がこのまま日常生活を送ることは、許せないのだろうか。
みんないろんな事情がある中で精一杯生きていて、自分ではどうにもならなくなったことを、暴力でどうにかしようとする人がいる。いじめも同様に。それは、どうにもならなくなったことへの発散方法がいけないだけで、別の方法で発散すればいいのだ。その発散方法を、関わっている大人は一緒に考えていくべきで、加害者=犯罪者=はじき出す、みたいなやり方は、その子からただ逃げているだけで、その子にもきちんと向き合う機会を失わせるし、大人は大人としての責任を放棄してしまっていると思うんだ。だから、「制裁として」いじめっ子を転校させるのは楽だし、その学校でのいじめ被害はなくなるかもしれないけれど、根本の解決には全くなっていなくて、結局また、転校先で同じことが起こるかもしれない。だから、武藤も陣内も、奇跡を信じて、少年と向き合いつづける。暗い深海からの声に、耳をすませる。次の声が、その少年の、本音かもしれないから、諦めずに、向き合い続ける。続きを読む投稿日:2019.07.17
本作は『チルドレン』の自作となっており、陣内と武藤が引き続き少年事件を担当する。
今回は交通死亡事故を起こした棚岡くんが中心。
読後素直に抱いた感想を述べるなら。
「なんて素敵な世界だろう」だ。
…棚岡くんの他にも過去に事件を起こした少年が二人登場するが、一人は就職の際に「人を過去轢き殺した」と素直に話す。
もう一人は反省の色こそ見せないものの、その根本は悪に思えない不正アクセス少年。
そして本作の中心である棚岡くんは過去に友人を轢き殺した犯人に復讐するつもりが他人を轢いてしまい、そこに無差別な殺意はなかった。
つまり犯人たちは皆、その根本が悪ではないことが描かれているのである。
皆いい子たちなのだ。そのため武藤等が行っているのは「悪意を持つ人間を更生・矯正するために判断を下す」のではなく「若さで覆い隠した優しさを表に引き摺り出す」という行為である。
おそらく手をつけられない程悪意に満ちた少年犯罪者もいることだろう。
しかし本作、前作通してそのような人物は描かれない。そういう意味で「素敵な世界」である。
だが、そのような人にフォーカスを当てた意味を考えてみると、思い当たるところもある。
それは、犯罪者の中には不本意に事件を起こしてしまった人がいる。
または悪意だけを持った犯罪者は少ない。ということ。
「目には目を、歯には歯を」のハンムラビ法典で全てを裁けるほど人の気持ちは簡単なものではない。
むしろハンムラビ法典で心持ちがすっきりするのは本作に登場したおばさんのような第三者じゃないだろうか。
では、私の視点はどちらだろうか。
フラットな視点で犯罪は犯罪、善行は善行と区切りをつけて物事をみる陣内。
凄惨な事件を起こしたものには凄惨な処罰をのおばさん。
正直、おばさん側だろう。ニュース等で事件の表面的な情報しか得られない私はハンムラビ法典に縛られたおばさんの視点に立ってしまう。
しかし『チルドレン』、『サブマリン』を通して、そんな簡単に判断を下していい犯罪者ばかりではないと知った。これはそれなりに大きな収穫だと思う。続きを読む投稿日:2024.05.31
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