この作品のレビュー
平均 4.1 (17件のレビュー)
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進学校だけあってか、登場する生徒はみな賢そうでした。著者は個性あふれる生徒たち一人ひとりの成長を静かに見守っていて、司書という職業をとても魅力的に感じさせてくれました。
投稿日:2020.01.01
このレビューはネタバレを含みます
北海道・札幌南高校の図書館。ここを訪れる生徒たちは、本を介して司書の先生に自分のことを語り出す。生徒たちの数だけある、彼らの青春と本にまつわるかけがえのない話。
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目次
●日常を跳ぶ
・作家と「言葉の…キャッチボール」
・壇上から見た景色を忘れない―高校生ビブリオバトル大会
・わたしを取り巻く世界を、わたしの言葉で
●世界を追いかけて
・文字―その魅惑的な世界
・地図を片手に三次元の世界へ
・格好いいな、寺山)
●創造に魅せられる
・最後の一音が消えるとき
・山と、ダンスと、太宰治
・絵を描くこと、本を読むこと
・小説を書く
●旅ははじまったばかり
・遠距離通学と読書の時間
・SFの想像力と世界史
・わたしたちは少しずつ大人になる
著者等紹介
成田康子[ナリタヤスコ]
1955年北海道生まれ。1982年より学校司書として札幌月寒高校、大麻高校、札幌南高校勤務。2004年より2015年まで北海道高等学校文化連盟図書専門部事務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想:
本にまつわるエピソードも読んでいて楽しかったが、高校生一人一人の姿が生き生きとしていて、ぼーっとした高校生活を送った(大人になってもボーっとしている)私にはまぶしい。好きなものがある、好きな場所がある、本の世界でも、部活でも、自分ひとりの場所でも。そういう人は強い、優しい、まぶしい。今からでも札幌南高校の生徒たちを見習い、人生を生きてみよう。そうおばちゃんは励まされたのでした。
p12「彼らは、本を通して自分のことを語ります。高校一年生から三年生まで、部活動や塾、予備校に通うなど忙しい日々を送っています。それでも、本を読みたい、読む事が欠かせない人たちです。悩んだり苦しんだりすることと本を読むことが並行しているようなのです。」
p18「『野菊の墓』(伊藤左千夫)はじいちゃんがすすめてくれた。とてもきれい、という印象だった。悲恋なのに、妙にスーッとする。「民さんは、野菊のようだ」と野菊を手に持って、恥じらってやりとりしているのが見えるようで、そして、最後の場面は動きや風景が浮かんで、今でも忘れられない。湧き上がってくるような感情を思い出す。きれいに世界が閉じている。ライトノベルとの違いって、こんなところにあるように思う。」(高2)
p28「(おいしい本が好き)マンガだったらそうだな~。部屋の本棚のなかから探す。『3月のライオン』(羽海野チカ)は、ー話もすごくいいけど、出てくる食べ物がすばらしい。超おいしいものカレー(カレー+唐揚げ+温泉卵)、手巻き寿司、角煮丼。ここに出てくる、”無限ループ”、わかるなぁ。甘いものを食べたら、しょっぱいものも欲しくなって、でもまた、甘いものが食べたい・・のエンドレス状態。」(他に、『ひよこの食堂』(ものゆう)、『ぼくのレシピ』シリーズ(ぼく)も紹介。)
・ビブリオバトルを通して自分が変わったこと、感じた事。
・p40「マイブームは旅行。ここ数カ月はずっと海外旅行中で、今はインドにいる。といっても、もちろん実際に外に出るわけではない。そんな時間もお金もない。でもいつかはしてみたいと思っている。じゃあその旅行とやらはなんなのか、と聞かれると、その答えはガイドブック。ー『地球の歩き方』『るるぶ』『ことりっぷ』『タビトモ』・・書店のガイドブックが並ぶ棚の前に立つと、行先の多さ、飛行便の豊富さに圧倒される。ー観光地、おみやげや料理のページを付属の地図と合わせて読むのは、町中で食べ歩きをするのと同じこと。簡単会話フレーズ、現地の交通手段、ビザ申請について。こんなページもじっくり読んでみると楽しいものだ。」
・地図と自転車が好きな女子高生。地図を見て、ルートを決めて走ったり、適当に走って後でスマホのGPSを見ながら地図でたどるのも楽しい。
p68「自分の脚力で目に映る風景を変えていく。一回通った所を何の気なしにもう一度通った時の既視感がたまらなくなる。ー街そのものが好きだ。地図を見ながらとりとめもなく考えるのが、好き。札幌駅って冷たい感じ・・すすきのって懐深いところなんじゃないか。街並みの昔の写真とかを見るのもすごく好きそこに人々の暮らしがあるからかな。時代背景とかの知識はそれほどなくてもこれだけわくわくできる。」
p69「凝り固まった思考がいやになって、頭のなかをからっぽにしたいから外に出るときと、積極的に考えるために外に出ようとする時がある。自転車で走る前は「すべてが嫌だ」という気持ちになっていたときに歩いていた。そう、「やけ歩き」。
p105 「私がうまく投げられなかった言葉も、ちょっと先を尖らせすぎた言葉も、司書の先生はいつもするっとすくった。そう!それ!と共感してくれた。ひとりの本好き、悩める人として同じ目の高さで聞き、うなずき、話してくれた。図書館は夕方のオレンジがかった陽光の色で、それは先生との会話も同じだった。いつも、ぽかぽかで。」
・p106「本の世界と、音楽の世界。どちらも大好きだけれど、本当に忙しいときはかまっていられない。しばらく離れていると、離れていても平気になる。でも、一度触れてしまうと読みたくなるし、楽器を吹きたくなるし、弾きたくなる。勉強だったり部活だったり、タスクをこなすだけのマシーンから人間にもどる。」
・p119「僕は解決できないことをつい考えてしまうタイプだ、悲観的ともちがうのだが、あとで冷静に考えると本当に浅くて笑ってしあうのだけど、いつの間にかずっと考えている。たおてば、友達と話していてなんとなく雰囲気が悪くなってしまったとき、自分が何か変な事を言ったかなーと悩んでしまう。反対に、相手の言葉で「わっ」と違和感を覚えても、自分の中で気持ちを戻せばいいからと思って、気にしないようにしている。太宰の小説の流れの中で一緒に悩み苦しむと、最後にはバカバカしくなる。だから、変な感じだけど、気分が落ち込んでいるときには太宰が一番自分に効くんだと思う。」
・p164「本を読んでいると車内でもそこだけ自分のテリトリー、みたいな感覚になる時がある。ー電車のなかは人がたくさんいて混んでいたり、暑すぎたり寒すぎたり人いきれがすごかったりして居心地がよくない。けれど、本を読んでいる間はあまり気にならなくなる。自分のかたちに空間が切り取られて、そこで本を読んでいるみたいな感じで、読んでいる=本に書いてある光景が頭に映し出されているような状態になる。」
・p171「三年生になって受験に向けて勉強しているが、無性に読みたくなる時がある。年をとったら読めなくなる、と聞くが、日常的に読んでいなかったら、読む力は衰えるのではないか。試験で現代文の文章を読むのは、読む力ではなくて分析する力なのだろうし、「それには想像力とか意思が必要だよね」と司書の先生が話していた。ほんとにそう思う。意思がないと文章が流れていく。情報として入ってはくるが、思考に結びつかない。」
・「歴史とSFのおもしろさは共通している」と語る男子学生の話もおもしろい。
・学校で本に関するフリーペーパーを作った学生の話:
あとがきより
p.194「10人の「本のはなし」が並んでいますが、全員、読書だけが特別に大好き、という訳ではなく、だけど読むことが生活に溶けているような人たちに、自分の好きな本のことを自由に書いてもらえないかとお願いした。」
「この本おすすめ!!!でも、こんな本を読んでいる素敵な私!!!でもなくて、そういえばこんな本読んだ、いま大事だ、好きだ、と書き手が思い返しているようなそんなものが並んでいても、いいんじゃないかと思いました。わたしと、わたしのとなりにいるだれかの、好きなものや大事なことやこれがあたりまえだ、という感覚は、それぞれ、こんなにもちがう。」
あとがきより
p203「自分の読んだ本のことなど、誰にも話す必要はなく、ましてや強制など無意味なことかもしれません。個人的なことはそっとそのままにしておくほうがいいという考え方もあるでしょう。でも、これまで私に話してくれた生徒たちは、その本のなかに自分が自分であるというかけがえのない存在理由を見出してくれるようにも、私には思えます。だから話したくなるのだと思います。」
「私がかつて本をとともに幸せな時間を過ごしたように、彼らもまたその時間を手にしていました。想像力を満たし、好奇心を呼び覚ますひととき。自分でどこまでも行ける喜びを味わっています。そして、本を読む<孤独>に浸っています。温かな孤独です。この孤独は魅力的です。これを知ってしまうとーまた読みたくなる、読みたいから読む。ただそれだけのことなのかもしれません。とても自由で自然です。」続きを読む投稿日:2023.04.13
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