日本の経済システム改革―「失われた15年」を超えて
鶴光太郎(著)
/日本経済新聞出版
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なぜバブルが起き、崩壊したのか。なぜ、ITで日本が出遅れたのかを経済システムから考察している。
これを読んでいると、反省を生かしてかなり制度改革を行なっている印象を受ける。
一方で、アメリカ型のシステ…ムを後から導入しても、周回遅れになってしまっている可能性もあり、勝ちにいくためにはどのようなシステムが必要なのかの最先端の部分の話を知りたいと感じた。
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アメリカ、イギリス的な株式市場などの市場金融システム、日本、ドイツなどの銀行などの関係依存型を主とした経済システムがある。
第二次世界大戦後の時代では、日本は世界第2位の経済大国になり、アメリカは経済的な敵国として日本を置いていた。当時は日本型の経済システムが世界的な優位だった。しかし、バブル崩壊、アメリカのIT革命の流れの中で、日本の経済システムへの評価は失墜し、アメリカ式のシステムこそが最高のシステムという認識が広まった。一点、注意しなければいけないのは経済や技術の変化の中で、当時は日本型のシステムの方が優勢であり、現代はアメリカ型のシステムが優勢であるということは認識しておかなければならない。
日本型の関係依存型金融のメリットは、銀行が長期的な関係を企業と築くことで、モニタリングするコストが低下することである。一方で、デメリットとして、技術革新のスピードが速い産業などは、経営者自身にとっても最適な戦略が明らかでないことも多く、銀行がモニタリングを行なっていたとしても、経営者を信じて、成功するかどうかを見守るしかない。構造的に銀行が監視者としての役割を行うことが難しい。逆に、市場型金融の場合は、さまざまな投資家が得た異なった情報を集約することで真の企業価値を反映するように働き、効率的な資源配分になるようなシグナルを示してくれる。
日本のバブルの芸人は三つある。一つ目は、1970年代の金融・資本市場の自由化により、優良な大企業が海外からも含めた資本市場からの資金調達を増やし、銀行借入の依存度を低下させたことにある。これにより、融資先の優良な顧客層を失い、リスクの高い中小企業向けの貸し出しのウエイトを上げざるを得なかった。銀行への需要が減少したのである。第二は、金融自由化により、ノンバンクなどがマーケットの参入を行い、金融機関同士の競争が厳しくなったことである。競争の増加により、銀行がリスキーな分野への融資に拍車をかけたことがある。供給が過剰になり、銀行の利益幅が減少したことが挙げられる。三つ目は、地下の上昇を期待して、土地を担保に不動産関連への融資を行なったことである。不動産は値付けの根拠が曖昧で将来性把握することは難しい。そのため融資先としてはリスクが高いと言える。土地の値段は下がらないという「土地神話」を根拠とした土地担保による融資が加速しすぎたことが挙げられる。
このような背景の中で、銀行は融資をし続けた。土地が不良債権と化したとしても、関係依存型金融システムと、土地神話への幻想がある中で、いつか値上がりするだろうという楽観に基づいて追加融資を行い続けた。これは銀行の監督当局が銀行のバランスシートをモニターする能力が不完全であり、かつ仮に銀行が債務超過になれば当局は必ず預金保険制度のもとに必要な公的資金を注入するという護送船団方式が裏としてある。銀行からすればダウンサイドリスクは政府によって完全に遮断されており、地下が高くなった時に売り抜ければ十分に高いリターンが挙げられると考えられていた。
日本のような関係依存型はバブルが起きると、経済への影響が深く、長くなりやすい。企業をスクリーニングして、評価、モニタリングを行う機能が銀行に集中しており、借り手が財務危機に陥った場合、再融資や救済などの行う銀行も同様に機能が麻痺してしまい、甚大な影響を与えてしまうからだ。これは個別の金融機能が、格付け機関、商業銀行、投資銀行などに分散しているアメリカの市場型金融システムの方がショックを分散化しやすい状況となる。
日本の長期雇用、後払い賃金は、解雇されずに長く働けるように若者にインセンティブを与える。定着率の高い労働者が集まるというメリットがある。しかし、この年功序列型賃金を保証してきたのは、安定した高成長とピラミッド型の社内年齢別従業員構成であったからで、自らの生産性を超えた中高年授業員の賃金を企業内の再分配で支えていた。しかし、1980年代以降の企業の成長率の低下、団塊の世代の中高年化によるピラミッド型従業員構成の崩壊が後払い賃金の維持を不可能にさせた。また景気低迷の中で相対的に高まった労働コストを削減のために、中高年の雇用を守り、新卒採用を抑制するというものであった。これにより、若年失業率が増加した。続きを読む投稿日:2023.09.22
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