セラピスト
最相葉月(著)
/新潮文庫
作品情報
『絶対音感』『星新一』の著者が選んだ次なるテーマは、〈心の病〉だった――。河合隼雄の箱庭療法を試み、中井久夫から絵画療法を受け、自らもカウンセリングを学んだ。心の治療のあり方に迫り、セラピストとクライエントの関係性を読み解く。そして五年間の取材ののち、〈私〉の心もまた、病を抱えていることに気づき……。現代を生きるすべての人に響く、傑作ドキュメンタリー。文庫版特別書き下ろし「回復の先に道をつくる」を収録!
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商品情報
- シリーズ
- セラピスト
- 著者
- 最相葉月
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2016.10.01
- Reader Store発売日
- 2017.03.24
- ファイルサイズ
- 10.3MB
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この作品のレビュー
平均 4.1 (30件のレビュー)
-
著者が、心理学やカウンセリングの世界を取材し、掘り下げたルポルタージュ。しかしジャンルを「ルポルタージュ」とまとめてしまうのはちょっと違うかも、と思える。著者本人の物語も含まれているし、日本にカウンセ…リングが持ち込まれてから、「心の病を治す」という分野の仕事がどのように研究・発展してきたのかを掘り下げた、歴史書や分析書のようでもある。
今や「カウンセリング」という言葉は世の中に浸透して、精神病ではなくても心が不安定になったとき、誰でも「カウンセリングが必要かも」と考えたりする。あきらかに病気ではなく、いじめや職業(職場)との不一致など、環境による不安であっても「カウンセリング」で何とかしようと考えたり。
私も不安感に耐えかねて、職場が紹介している窓口に問い合わせたことがある。(実際に受診するまでには至らなかったが)。
今ではそのように一般的になった「カウンセリング」だが、日本に持ち込まれてまだ70年しかたっていないらしい。心の病を引き受けるのは医者(精神科医)なのか?心理学者なのか?教育者なのか?そもそもそのような線引きもなく、”自称セラピスト”のような人も多数存在した。今でも民間の団体が主催する研修を数時間受けた程度で、もっともらしい看板を掲げてセラピーやカウンセリングを行う人がいる。今では「臨床心理士」という国家資格があるが、資格を取るのは大変難しく、経験が必要なのにも関わらず、待遇はあまりよくない。
それでも現代社会には、心に不調を抱え、カウンセリングを求める人がたくさんいる。社会はどのように対応していけばよいのだろう?求められる「セラピスト」とは?
本書の大部分は、かつて注目を浴びた「箱庭療法」や「絵画構成法」といった芸術療法の解説や、河合隼雄に影響を受けた研究者たちを取材した内容が占めており、日本の”心の診療”がどのような歴史をたどって発展したかをひもといている。箱庭療法はいかにして日本に持ち込まれ、どのように発展したのか。どんな人がどんな箱庭を作ったかの興味深い事例も少々取り上げられている。私も箱庭療法にとても興味がある!やってみたい!・・・しかし、今はそのような手法は下火になったようで、認知行動療法が主流だ。(これは私も仕事上多少の知識はある)。
残念ながらカウンセラーとクライアントが箱庭や絵画を通して心に向き合い、深いところに降りていくような治療は、もう現在はできないということだ。時間がないから。一人のカウンセラーが一日に何十人も診ている。数分間の診察で、抗うつ剤や睡眠導入剤を処方して終わり。それが当たり前になってきている。
本書を読んで、本当に病気で、薬の処方が必要な場合でなければ、一番のセラピストは身近にいる親しい人なのではないかと私は思った。そばにいて、相手の話に耳を傾け、深く共感したり、一緒に悩み悲しんだりして時には深く降りていってしまい(時にそれは危険なことでもあるらしいが)、そして一緒に上がってくる。
今は心療内科などの看板を掲げるクリニックに行っても、そんなに時間をかけて話を聞いてもらえないのならば、よっぽど素人であろうとそばで話を聞いてくれる人の方が心の回復の支えになるだろう。
私の友人に、個人でサロンを経営しており、とてもカウンセリングマインドがあり聞き上手な人がいる。時々無性に彼女に会いたくなり、友人として、ときには顧客としてサロンに通っている。先日会ったとき、「ねえ、あなたはサロンをやっていくために、なにかカウンセリングの勉強や研修をしたの?」と聞いてみた。本人曰く、傾聴ボランティアをするときにほんの少し研修を受けたがたいしたものではなく、もともと人の話を聞くのが好きなのだと言っていた。
傾聴っていうのも、誰にでもできそうで、できないよな。やっぱり彼女はもともと、向いているんだろうな、人の心を癒やす、何かを持っているんだろうな、と思った。
そういう興味もあって本書を読みました。数十年前の研究や、心理学の歴史の記述などは少々難しかったけど、とても興味深く読めました。続きを読む投稿日:2021.03.22
始終圧倒されっぱなしだった。登場するセラピストのみなさんの思慮深さや鋭さと、それをあますことなく表現する最相さんの筆致。
クライエントが回復することを、手放しで喜んではいけない。心の病と向き合うこと…の長く苦しく、ときどき光が差しこむ道のりを垣間見た。
口絵の、中井久夫さんの書いた風景構成法のイラストがとてもいい。じんわり、何でも受け入れてくれそうな風景。続きを読む投稿日:2023.03.13
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