ヒトと文明 ──狩猟採集民から現代を見る
尾本恵市(著)
/ちくま新書
作品情報
二〇世紀後半から、生物学としての人類学「ヒト学」は大きく変貌した。著者の専門である分子人類学は、タンパクの遺伝マーカーの研究で始まったが、現在ではゲノム全体の情報を用い、アジアの古層民族集団の起源および系統進化を明らかにしつつある。さらに、日本で長い歴史をもつ人類学は、文理合同の学際研究を通じて、ヒトの特異性と多様性および起源の総合的な解明をめざす。本書は筆者の研究史を追いながら、「DNAから人権まで」をモットーに「文明とは何か」「先住民族の人権」「人類学者の社会的責任」などの問題を解き明かしてゆく。
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商品情報
- シリーズ
- ヒトと文明 ──狩猟採集民から現代を見る
- 著者
- 尾本恵市
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 生物・バイオテクノロジー
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2016.12.10
- Reader Store発売日
- 2016.12.22
- ファイルサイズ
- 9.5MB
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この作品のレビュー
平均 4.7 (3件のレビュー)
-
好きな著者の自伝などはたいがいすぐに飛びつくのですが、尾本先生の著書はいままで読んだことがなかったので、少し迷いました。が、これは断然、読んで正解でした。正月の帰省中、高速バスの中で、何度もクスクスと…笑えてしまいました。ドイツ留学時の話。共用の冷蔵庫に入れておいた味噌を捨てられてしまった。においをかいで、腐っていると思われたらしい。東大医学部受験時の問題「シラミの絵を描け」。50年以上前の話ですが、これはすごい。結果は、絵は描けたが、他の問題がとけず不合格。そして、「医学部くずれ」の独文学科。そのあとの鈴木尚先生との出会いがいい。文学部で行われた「人類の進化」についての講義を聴く。授業後の質問。どうやら的を射ていたようで、授業後に声をかけられる。「君は文学部にしては変わった学生だね」これが、尾本先生と人類学との出会いだったそうです。いつの時代も、こうした偶然の、いや必然だったのかもしれませんが、出会いが人生を変えていくのですね。後半は我が意を得たりという感じで、気持ちいい記述が続きます。アメリカにしろ、オーストラリアにしろ、先住民の大虐殺という歴史を忘れてはならない。経済が「右上がり」でなければならないという原理を見直すこと。ヒトの原点の「生き証人」である狩猟採集民から学ぶべきことがたくさんある。現在の文明の状況が真に危機的であるという認識を共有し、世界中の人間が「自己規制」という共通の目標を持ちたい。「スモール・イズ・ビューティフル」。人類学を学ぼう!続きを読む
投稿日:2017.01.04
明治17年に坪井正五郎など10人が、日本初の人類学の組織「じんるいがくのとも」を立ち上げた。これは数年後に東京人類学会に発展し、その後、現在の日本人類学会となる。明治26年に東京大学理学部の前身である…理科大学に、日本初の人類学の講座が設けられ、坪井が初代教授に就いた。
アボリジニには、岩壁壁画が描かれた場所で、ディジュリドゥというホルンのような楽器を吹き鳴らし、夜通し歌って踊る儀式がある。
斎藤成也や著者らは2012年に、ゲノム全領域のスニップ検出法を用いて日本人の二重構造説をほぼ支持し、アイヌ・沖縄同系論の証拠も得られた。スニップ検出法は、ゲノム上に点在する多数の独立の単一ヌクレオチドをデータとして用いるもので、ミトコンドリアDNAやY染色体遺伝子とは非常に異なる。
黄河文明へのコムギの伝来は、4500~4000年前に遊牧民によって短期間に成し遂げられたことが、先史考古学や植物遺伝学の証拠から示されている。
前回の間氷期の終末の7万5000年前頃、身体装飾、シンボル記号、海産資源の利用などの行動が現れた。
現在、フィリピンにいる多数の先住民族は、約5000年前の新石器時代以降に東アジアから渡来した農耕民。山間部にいる小柄で暗色の肌と縮れ毛の人々は、後期旧石器時代にインドネシアから渡来した狩猟採集民の子孫。
戦争の起源については、人類学者の間でも、生物としての攻撃性・暴力が原因とする説と、農耕の開始による人口増大や土地・富・権力の私物化や獲得競争が原因であるという説に分かれている。
アイヌ民族は、江戸時代の前までは北海道から東北地方の最北部に広がり、両地域のアイヌ民族は津軽海峡を超えて自由に交流していた。幕藩体制が確立されると、北海道アイヌは松前藩に支配された。松前藩はアイヌ民族との交易を独占し、アイヌ人を労働力として利用するようになった。江戸時代末に蝦夷地を探検した松浦武四郎は、アイヌ民族の惨状を記録して幕府に報告している。続きを読む投稿日:2020.12.09
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