倭人伝を読みなおす
森浩一(著)
/ちくま新書
作品情報
古代史の一級資料「倭人伝」。邪馬台国や卑弥呼への興味から言及されることの多い文章だが、それだけの関心で読むのは、あまりにもったいない。正確な読みと想像力で見えてくるのは、対馬、奴国、狗奴国、投馬国…などの活気ある国々。開けた都市、文字の使用、機敏な外交。さらには、魏や帯方郡などの思惑と情勢。在りし日の倭の姿を生き生きとよみがえらせて、読者を古代のロマンと学問の楽しみに誘う。
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商品情報
- シリーズ
- 倭人伝を読みなおす
- 著者
- 森浩一
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2010.08.10
- Reader Store発売日
- 2016.07.15
- ファイルサイズ
- 20.5MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (9件のレビュー)
-
倭人伝を読みなおす
森浩一 ちくま新書
何気なく手に取ったいわゆる邪馬台国ものである。
この邪馬台国ものは昔よく読んだ。邪馬台国ブームなんてのがあった、その頃である。
松本清張の「古代史疑」、古田武…彦の「邪馬台国はなかった」邦光史郎の「邪馬台国を推理する」などが思い浮かぶな。変わった切り口だと思ったのがタイトルは忘れたが安本美典の古代史もの。推理小説を読む感覚で読んでいたが、その推理の展開については忘れてしまっている。邪馬台国ものの内容は、その国がどこにあったかが説かれ、大きくは九州説と畿内説に分かれているのである。
この本の著者、森浩一氏は考古学者である。1928年生まれというからもう82歳。西日本新聞に連載されたものをまとめたという事であるが、年齢を感じない内容だ。歳をとってもこういう頭の働きができるのだろうか俺は、と自問する。
内容はタイトルどおり、魏志倭人伝を逐語的に読み直し、それぞれのキーワードに対して考察を加えるというスタイルである。
また、60年に及ぶ考古学人生のフィールドワークあるいは現地踏査の経験を交えて倭人伝の読み直しに厚みを加えている。
新しい説が展開されるということはないのだが、例えば、松本清張の説などは古代史の学会などからは無視されていたのらしいのだがそういうところも評価できるところは評価する姿勢は好感が持てる。
この人が、歳をとって寛容になったのか、あるいはもともとそういう学問態度だったのか。
多分、むかしこの人の本、多分岩波新書とか中公新書の類だが読んだことがあるに違いない。続きを読む投稿日:2010.11.17
森先生の邪馬台国論。
帯方郡が魏の出先機関であったことから説き起こし、倭と界を接した弁辰の国を巨済島、巨文島とし、そこから、対馬、壱岐(一支国)、松浦(末盧国)、糸島(伊都国、斯馬国)と順を追ってクニ…の規模や土地や風俗の倭人伝の記述を考古学からの裏づけがられる。これは臨場感があり、帯方郡からの道程が納得させられる。
伊都国が邪馬台国の都と想定しているが、奴国も大きなクニであった様子。不弥国(福岡平野の宇美川流域)までリレー式に臨場感を持っていた記述が、投馬国、邪馬台国で記述が変わる。台与の時代に晋への遣使の新しい情報(但し、不正確)が書き加えられた所為とする。この辺の説明も無理がないと思う。
邪馬台国は南の狗奴国と戦争状態であったが、魏は邪馬台国の味方という訳でもないという。狗奴国にも王があり、官に狗古智卑狗ありとされる。この後の記述は狗奴国についての記述ではないかとのこと。
魏は卑弥呼を見限り難升米(奴国の有力者?)を王と見なし黄幢を授けている。卑弥呼の「以死」はこの戦争の責任を取っての自死とする。
魏の張政の役割は邪馬台国と狗奴国を纏めることにあり、そして台与の時代に邪馬台国は東征したという仮説。
では、狗奴国(後の熊襲)も東征したのだろうか。その東征は物部の祖、饒速日のことなのか、応神・仁徳の河内王朝のことなのか。北部九州と近畿を繋ぐ道筋はまだよく見えない。更に、単なる一氏族の移動に留まらず、各地から多くの氏族が纏向に集結したのは何故なのか。
森先生の衣鉢を継ぐ志のある学者が古代日本の誕生の秘密を明らかにすることを期待しているのだが、纏向で考古学の成果があると卑弥呼だと騒ぐ輩が多く、正直暗澹とすることが多いのである。続きを読む投稿日:2016.04.12
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