洪思翊中将の処刑

山本七平(著) / パンダ・パブリッシング

作品情報

冤罪に対し、なぜ弁明もせず絞首台に上ったのか?
日本・朝鮮・米国の歴史に翻弄されつつも、武人らしく生きた朝鮮人・帝国陸軍中将の記録。

洪思翊は、大韓帝国最後の皇帝に選抜されて日本の陸軍中央幼年学校に入学、(朝鮮王家以外では)朝鮮人として最高位の中将にまで出世した人物である。
しかし終戦直後から始まったフィリピン軍事裁判で、フィリピンの捕虜の扱いの責任を一方的に問われ、死刑に処せられた。

太平洋戦争に従軍した山本七平が、
・洪思翊中将が、アメリカをはじめとする連合国の軍事裁判の横暴さに対して、なぜ弁明もせず絞首台に上ったのか。
・そもそも生活に困っていたわけでもない朝鮮人エリートが、なぜ日本軍に入ったのか。
「忠誠」とは何か。
について問う。

■「あとがき」からの抜粋
「関心をもった」とか「興味をひいた」とかいう言葉は、使うには余りに深刻な問題だが、あえて「関心の的」がどこにあったかといえば、それは「法廷の場」である。洪中将の「無言」にはじめは軽い失望を覚えたが、この「無言の主役」をはさんでの検察側と弁護側との応酬、日本人証人の証言や「ヘイズ日記」等を読んでいくと、幾度か息詰るような場面が出てくる。

 では一体、裁かれているのはだれなのか。洪中将なのか。否、それは一面では「日本的あいまいさ」とでも言うべきものである。日本は「ジュネーブ条約」を批准していない。批准しなかったのは洪中将の責任ではない。従って「ジュネーブ条約の第何条云々」で洪中将の責任を問うのは筋違いだ、こうはっきり明言できれば、それはそれですっきりする。

 しかし「ジュネーブ条約は批准しない」が、「それに基づいて」とか「……の精神で」とか言うと、洪中将の責任の範囲がきわめてあいまいになってしまう。そしてこの「日本的あいまいさ」は、今も決して消えてはいまい。と同時に一種の不気味ささえ感ずるのが、アメリカ側の“形式論理”の積み重ねである。これを「リーガル・マインド」というのであろうか? それは最終的には実態から遊離した「論理を積み重ねた虚構のピラミッド」のように見えてくる。

 だが、彼らにとってはこれが「事実」で、判決は同時にこの事実の確定なのである。ではこの「語られた事実」は果して「事実」なのか。ミー弁護人のいう「時の法廷」が裁くのはこの点で、裁かれているのはアメリカであろう。そしてこの「時」を体現していたかの如く無言で立つのが洪中将である。こういう視点で読むと、四十年前に行われたこの裁判はきわめて今日的であることに気づく。

【著者略歴】
山本七平(やまもと・しちへい)
評論家。ベストセラー『日本人とユダヤ人』を始め、「日本人論」に関して大きな影響を読書界に与えている。1921年生まれ。1942年青山学院高商部卒。砲兵少尉としてマニラで戦い補虜となる。戦後、山本書店を設立し、聖書、ユダヤ系の翻訳出版に携わる。1970年『日本人とユダヤ人』が300万部のベストセラーに。日本文化と社会を批判的に分析していく独自の論考は「山本学」と称され、日本文化論の基本文献としていまなお広く読まれている。1991年没(69歳)。

もっとみる

商品情報

シリーズ
洪思翊中将の処刑
著者
山本七平
ジャンル
人文・思想・歴史 - 歴史・地理
出版社
パンダ・パブリッシング
Reader Store発売日
2016.07.01
ファイルサイズ
33.4MB
ページ数
560ページ

以下の製品には非対応です

  • PlayStation®Vita

  • 試し読み
  • 新刊通知

    • 山本七平

    • 洪思翊中将の処刑

    もっとみる

    この作品のレビュー

    0 (0件のレビュー)

    レビューを書く

    0
    0
    0
    0
    0

    新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。

    • ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
    • ・買い逃すことがありません!
    • ・いつでも解約ができるから安心!

    ※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「申込み」からお手続きください。

    ※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。

    不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)

    ※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。

    ※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。

    お支払方法:クレジットカードのみ
    解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です

    クーポンコード登録

    登録

    このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

    ご協力ありがとうございました
    参考にさせていただきます。

    レビューを削除してもよろしいですか?
    削除すると元に戻すことはできません。