高校英語教育を整理する! 教育現場における22のギャップ
金谷憲(編著)
,隅田朗彦(著)
,大田悦子(著)
,臼倉美里(著)
/アルク
作品情報
英語教育の現場では、個々の教師が生徒のために授業改善を試みようと提案しても、同僚や周囲の賛同を得ることができず、孤立してしまう、ということがあります。
そのような問題が起こるのは、教育用語の認識一つをとってみても、個々の教師によってギャップが存在しているからではないでしょうか。 そして、そのギャップが指導法や教育目標にまで広がっているとしたら?
本書では、同僚との会話のみならず、保護者など学外の人たちとの間で起こるささいな行き違いの原因は、問題認識のギャップにあるのではないかという仮説から、教育現場で起こりがちな対立の事例を会話形式で取り上げ、「<言葉の定義>のギャップ」「<指導のイメージ>のギャップ」「<理想と現実>のギャップ」という3つの角度から、英語教育が抱える問題の徹底整理を試みた読み物です。
会話の表面からは一見把握しづらい、「ずれの本質」を深く掘り下げ、それぞれのギャップの原因を丁寧に解説していきます。
「コミュニケーション(活動)」「授業は英語で行う」など新学習指導要領を踏まえた最新の事例も収録。
本書は元東京学芸大学教授の金谷憲先生をリーダーとするSherpaチームの選書第2弾。数々の研究授業を見てきた著者ならではの整理観は、英語教育の原点に立ち返ることができるお薦めの一冊です。
対象:英語教師向け
金谷 憲(かなたにけん):
東京学芸大学名誉教授。1948年東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程(英語学)、教育学研究科博士課程(学校教育学)およびスタンフォード大学博士課程を経て(単位取得退学)、1980年より32年間、東京学芸大学で教鞭を執る。現在、フリーの英語教育コンサルタントとして、学校、都道府県その他の機関に対してサポートを行っている。専門は英語教育学。研究テーマは、中学生の句把握の経年変化、高校英語授業モデル開発など。全国英語教育学会会長、中教審の外国語専門部会委員などを歴任。1986年より3年間NHK「テレビ英語会話I」講師、1994年から2年間NHKラジオ「基礎英語2」監修者。著書に『英語授業改善のための処方箋』(大修館書店刊)、『英語教育熱』(研究社刊)『高校英語授業を変える!』(編著/アルク刊)など多数。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
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「コミュニケーション能力を育成するために」や「英語の授業は英語で」と言う時の「コミュニケーション能力」とは何を指すのか、誰が「英語で」授業中話すのか、といった議論の前提になる部分を整理したもの。教員…同士、教員と保護者や校長といった対話の中から、なぜ議論が噛み合っていないのか、議論を建設的に発展させるためにはっきりさせたい概念は何か、といったことが述べられている。
この本を読んでて一番印象的なのは「関係代名詞(後置修飾)」の部分。なぜならちょうどおれが今授業で関係代名詞を教えているから。しかも、この章で出てくる「C先生」とまったくもって同じことを言いながら教えている。「特に、A先生とC先生は、関係詞の使い方について認識がずれています」(p.36)と書いてありドキッとする。この文の意味は「正しい認識から逸脱している」という意味ではなく、単純に「2人が違う意識を持っている」という意味なんだろう、と思うことでおれ自身を安心させた。どの章でも、どっちが正しいか、どうすれば良いか、ということは、ほとんど教えてくれない。自分で考えるきっかけにしろ、ということだそうだ。
「議論のずれ」とは、「議論が噛み合わない」という意味で、例えば「ナチュラルスピード」や「CBI」、「音読の役割」などの章で、同じ言葉に対して2人(以上)の思っていることが違う結果、話が噛み合わないという事態になっている。(しかも「音読の役割」の章では、「音読」に対する認識がずれているというより「アウトプット」に対する認識のずれだと思う)ただ、例えば「基礎・基本」の章や「やさしい教科書はダメ?」、「『環境』問題」などの章では、別に話が噛み合ってないという訳ではなく、ある問題についてそれぞれ異なる意見を持っている、ということが確認されるだけであり、別に話が噛み合っていない訳ではないと思う。そういう意味で、この本の言う「ずれ」には2種類あると思うのだが、どうだろうか。「整理する!」という本の中身自体を整理したくなる衝動に駆られた。
ただ悪いことやムダなことは書かれていないし、読んでいてとても面白い。というか英語の教員としてはこれらの全ての問題について、正しい認識や、自分なりの考えというのを持っておくべきだと思う。
特に「状況的真正性」と「交流的真正性」というのは知らなかった。また、「自分の意見を言う」というのはどういうことなのか、表現系の授業では特に計画段階、年度当初で担当者で確認して決めないといけないと思う。
最後に、第5章、第6章ではまとめ的なことが書いてあるが、共感できる部分が多い。例えば、p.184には「さまざまな授業を見せていただく機会がありますが、何か問題点を指摘したり、改善を提案したりといった意見はあまり出ない」と書いてあり、おれが自分の授業を他人に見せても、「面白かったです」くらいのコメントがもらえればいい感じで、あまり建設的なコメントがもらえなかったりした時があって、どうなんだろうと思ったことがあった。同じページの「教師には、互いに不可侵という文化がある」というのも、ある程度はそうなんだろうなと思う。また、「『準備のための授業』」(p.198)や、「形式を整えるための真面目さ」が「落とし穴になっている」(同)というのも、特にうちの学校に極めて日常的に起こっている現象だなあと思った。最後に、「実力のある教師ほど努力していて、時間がない」(p.188)、「努力する教師は、(略)時間もコストも無視して人生を捧げてい」(同)る、とか書いてあり、これはたぶん良くない現状の例として挙がっていることなのだろうけど、おれも「時間を惜しんで努力する教師」でありたいし、その結果として「実力のある教師」になりたいと思った。(13/11/24)続きを読む投稿日:2013.11.24
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