新マーケットの魔術師 ──米トップトレーダーたちが語る成功の秘密
ジャック・D・シュワッガー(著)
/パンローリング
作品情報
前著マーケットの魔術師を書き終えて講演旅行をしていたとき、いくつかの疑問が定期的に私の中に沸いてきた。その一つは、「世界で最高のトレーダーを何人もインタビューしたのだから、それによって、私のトレーディングは向上したのだろうか?」と言う疑問だった。私のトレーディングは向上する余地が多くあったが、この疑問に対する私の答えは及び腰であった。
『マーケットの魔術師』の著者がトレードしていないのは何か妙ではあったが、私には正当な理由があった。トレーディングに関して基本的なルールがあるとすれば、その一つは「損を出せないときは、トレードしてはいけない」というルールである(べきだ)。損をしてはいけない資金でのトレードは、勝つことよりも負けることの方が多い。資金が重要すぎると、いくつかの決定的な間違いを犯すことになりやすい。最高の取引機会は、リスクもまた高いことから、これを逃すことになりやすい。また、完全に良好なポジションを作っていながら、市場がちょっと反対に動き始めると、最終的にマーケットが自分の思っていた方向に動き出す前に、つまり時期尚早な段階で、手仕舞いしてしまったりする。
マーケットに貴重な資金を持って行かれてしまうのを怖がるあまりに、最初にちょっとでも含み益が発生すると、すぐにポジションを閉じてしまう。皮肉にも、損をすることに対する過剰な配慮は、その恐怖心が決断能力を低下させ、車のヘッドライトに驚いて動けなくなってしまう鹿のように、損を出しているポジションに適応することができず、必要以上に持ち続けることになる。
要するに、「怖がりなカネ」でトレードすることは、決断力を低下させ、必ず失敗させる方向へと人を導くのである。
前書の完成は、私が家を建てたのと同時期だった。この国のどこかには、最初に自分が予想したとおりの金額で家を建てた人がいるのかもしれない。しかし、私にはそれが疑わしく思える。家の見積もりを作っているとき、何度も言うフレーズがある。「たかがもう二〇〇〇ドル」。ここで二〇〇〇ドル、ここでも二〇〇〇ドル、そしてもっと大きな金額が最終的に加算されてくる。わが家の贅沢の一つは、屋内プールだった。このプールのために、私は取引口座を閉じたのである。このとき、私はマーケット・リスクにさらすことのできるそれなりの資金ができるまで、トレードはしないつもりでいた。そして、終わりのない周辺工事などで、トレードを再開する日はどんどん先に追いやられて行った。また、フルタイムの仕事を持ち、同時に本を出版するのは、なかなか骨の折れる作業であった。トレーディングにはエネルギーが必要だし、私としては、負担を増すことなく疲れを癒す時間が必要だった。
チャートを見ていて、英ポンドが下落寸前なのを確信したのは、そんなある日の午後だった。その前の二週間、ポンドは調整もなく直線的に下落していた。 そして直前の一週間、ポンドは狭い値幅の中を神経質に上下しているだけだった。私の経験からすると、この一連の価格の動きは、多くの場合、再び価格が下落することを示していた。多くのマーケットは、多くのトレーダーたちを惑わせる行動を示す。
もっとみる
商品情報
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.8 (7件のレビュー)
-
・Q:20億ドルなんて、どうやってさばくのですか?そんな金額に対して、プライスなんかあるのですか?
A:例えば、5億ドル以上の顧客注文が入ってくるだろう。受けたトレーダーが立ち上がって、「電話しろー!…」って叫ぶのさ。その瞬間、他のトレーダー、見習いトレーダー、事務員、テレックスのオペレーター、40人くらいが他の銀行に電話をかけ始める。みんな自分のコール・リストを持っていて、複数の人間が同じ銀行にコールするのさ。それぞれ3回くらい電話をするのかな。全部で120通話。数分の間に、だよ。
・次の日、数値が発表されて、それが前の晩見た夢の数字と同じだった。それに、修正値や反応したマーケットの価格の動きも、夢の通りだったんだ。唯一、違ったことといえば…、僕はトレードしなかったんだ。
なぜ?
夢や噂でトレードしないことにしているからさ。
・(コイントスを)試してみると、それほど回数を重ねることなく、裏と表を均等にすることができることに気が付く。別に驚くには値しないけれどね。均等な時点から始めている訳だから、次に均等になるまでには、それほど時間がかからないのさ。ただ、時として、裏と表のどちらか一方が続くことがあるね。こんなとき、均等になるまでひどく時間がかかることがあるんだ。
・「堅牢な」アプローチでは、どれに主軸を置くかではなく、すべての指標を1か0で表すのが最良の戦略なんだ。言って見れば、その数字を採用するか否か、のアプローチだな。その指標が受け入れられるべきものであるなら、他の受け入れられた数字と同等に扱うべきで、もし採用基準に満たない指標ならば相手にしない、ということさ。同様の原則がトレードを選択するときにも当てはまるんだ。
・それに、良いシステムというのは、時として何か間抜けなことを指示するものなんだ。そんなとき、自分の判断が非常に重要なんだな。一般的に言うと、もし良いシステムであれば、明らかにそのシステム・デザインに反しているとき以外、それに従うことだね。システムに小細工する癖を付けてはいけないんだ。そういう発明と想像力は、システム開発の研究用にとっておくことだね。
・安く買って高く売りたい、そのこと自体が流れに逆らう行為だからね。しかし、安いとか高いの概念は何かに固定されていなくてはならないんだ。人は、正常価格と思われているレベルから価格が動いたら、異常だとみなす傾向がある。この見方が人に、新しいトレンドとは逆の行動を起こさせ、つまり価格はそのうち正常に戻るという想定の元に取引をさせてしまう、そして、それは大惨事への道につながっているのさ。
・何年か前に、ある会社が恒例のチャート・コンテストを行った。そのコンテストでは、締切日までに幾つかの先物商品の特定の日の清算価格を予想する、というものだったんだ。僕のオフィスの誰かが、きっとふざけてだとは思うけど、ランダム・ウォーク理論を使うことにしたんだ。つまりは、単に締切日の清算価格を彼の予想として応募したのさ。すると、彼はこの方法で優勝ぎりぎりまでいき、ベスト50の中で5位に入賞したのさ。このコンテストには、何百という応募があったんだけど、95%、いや99%以上の人が、彼のいい加減な予言より悪い結果を出したんだ。
・小さな利益は消えてなくなりやすいから、マーケットは利益が消える前に現金化するように教えるんだ。また、マーケットは価格トレンドが変化して大きく動くよりも、小さいレンジに収斂することに時間を費やすので、価格が下がったら買って、上がったら売るように教える。マーケットは同じ価格を何度も何度もトレードし、もし長い時間待てば、以前通過した価格をまた通るので、損を出しているトレードも手放さないように教える。マーケットは高い成功率を有したテクニックの間違った安心感にトレーダーをなだめこもうとするが、長い目で見ると、それは多くの場合、悲惨な損失を伴うことになる。一般的に、常に(注:常に、だと長期も含むと考えられる。多分、‘普段’とした方が意を汲んでいる。)効果があるものは、長期的に効果のあるものとは逆の存在なんだ。
・多くの場合、ポイントとなる要因は収益に関連するものです。銀行株に関しては特にそうだ、と言えます。しかし、化学株の場合は、全く異なった動きをします。この業界のポイントとなる要因は、生産力のように思えます。化学株を買う理想的なタイミングは、多くの生産余力があって、需要を喚起する引き金が認識できるときです。
・その当時、社の資産は5万ドル足らずでした。そのとき、私は、金利は絶対に低下する、と確信していました。会社中の資産を集め、Tビル(財務省証券)の先物へとつぎ込みました。
そして、私は、四日間でそのすべてを失ったのです。
皮肉なことに、その後、一週間もしないうちに、金利は天井を打ったのです。それ以降、金利がそのレベルに達したことはありません。そのとき私が学んだことは、相場に関して正しい考えを持っていたとしても、レバレッジを利かせ過ぎると、結局、損をすることになるということでした。
・マーケットのタイミングを計るのに、株価評価を用いたことはありません。考慮するのは、市場流動性とテクニカル分析です。株価評価は、トレンド転換の兆候が現れたとき、マーケットが実際に反転するまであとどのくらい動くか、ということを示すに過ぎません。
・ソロスは私のトレーディング哲学の20年先を行っているようでした。その哲学とは、核となるグループの銘柄を買いで、同時に、核となる別のグループを売り持ちで抱え、S&P先物、債券、通貨などでファンドのレバレッジを計る、というものでした。続きを読む投稿日:2014.02.13
読み応えタップリのアメリカの名トレーダーの金言集。
「規律」という言葉の重みが凄かった。
正に“温故知新”という言葉がピッタリの一冊だった。投稿日:2021.04.14
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。