終わりの始まり──ローマ人の物語[電子版]XI
塩野七生(著)
/新潮社
作品情報
広大な版図を誇り、平和と安定を享受した五賢帝時代。その掉尾を飾り、「哲人皇帝」としても名高いマルクス・アウレリウスの治世は、配慮と協調を尊んだことで、後世からも高い評価を得てきた。しかし、その彼の時代に、ローマ帝国衰亡への序曲が始まっていたのだとしたら……? 現代にも通じる鋭い洞察に裏打ちされた、一級の指導者論。 ※当電子版は単行本第XI巻(新潮文庫第29、30、31巻)と同じ内容です。
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商品情報
- シリーズ
- ローマ人の物語[電子版]
- 著者
- 塩野七生
- 出版社
- 新潮社
- 書籍発売日
- 2002.12.11
- Reader Store発売日
- 2015.05.29
- ファイルサイズ
- 25.7MB
- シリーズ情報
- 既刊15巻
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この作品のレビュー
平均 4.3 (24件のレビュー)
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ローマ帝国は内からも外からも変わっていく
五賢帝でも名高いマルクス・アウレリウス帝の治世に紙数の大半をさき、コモドゥス帝の即位と暗殺、それに続く内乱時代、内乱を収束したセヴェルス帝の死までを扱ったのが、この巻です。帝国が変質していかざるを得な…かった背景が書かれていて、とても読み応えがありました。
ゲルマン民族で、遠蛮族のロンゴバルト、ゴート、ヴァンダルといった強力な諸族が南下を始め、それに押し出されるように近蛮族が帝国内に決死の侵入を試みてくる。それにひたすら対応したのが、マルクス・アウレリウスの治世の特徴でした。本人は不本意だったでしょうが、戦場暮らしの日々。そして擦り切れるように死を迎えます。
帝国内部でも、コモドゥス帝の失政からの混乱により、軍の力が強くなり、ミリタリーとシビリアンのバランスが崩れ始めます。歯車が狂い出した帝国はどこにいくのか?
全部が全部、悪評高いコモドゥス帝のせいではないけれど、彼は皇帝として認めないという無言のメッセージが、表紙に彼の写真がないことでわかります。塩野さん、こういうところ容赦ないです(笑)。続きを読む投稿日:2017.04.15
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マルクス・アウレリウス治世の前からセヴェルスの治世までを描く。
ネルウァからマルクス・アウレリウスまでを五賢帝と呼び、この時代がローマ帝国の絶頂期と一般的には捉えられている。しかし実は五賢帝4番目のア…ントニヌス・ピウスからローマ帝国崩壊の兆しが見え始めるのではないか、というのが塩野女史の見方。
アントニヌス・ピウス治世は運良く平和に終わったが、マルクス・アウレリウス治世では、パルティアから侵攻、ゲルマニアから侵攻、ペストの流行、総督の謀反と散々な不運に見舞われる。それでも誠実に対処する皇帝の姿が描かれる。
その息子コモドゥスは皇帝としての責務を放棄。その死後ペルティナクス、ディディウス・ユリアヌスと短命皇帝が続き、内戦でセヴェルスが帝位を勝ち取る。
セヴェルスは皇帝になった後パルティアに攻め込む。滅ぼしはしなかったが、その一端を担う形となった。塩野女史曰く、パルティアはローマにとっては仮想敵国であり度々諍いを起こす相手ではあったが、滅ぼしてはいけない相手だった。それはパルティアがローマにとって他民族からの攻撃を和らげる緩衝材になっていたからだ。パルティアは大国であり、そのために周辺の蛮族が侵入する対象になり得る。パルティアを支配下に入れた場合、その矛先はローマに向かう。そうなるとこれまで以上の軍備を整える必要がある。それはローマにとって避けるべき事態だった。だから歴代皇帝はパルティアを温存した。一方パルティアにとってのローマは強大すぎて本気でやり合う相手ではない。為政者が国威発揚のために、時々攻撃を仕掛ける程度だった。
そのパルティアをセヴェルスは弱らせてしまった。その結果ササン朝ペルシアに滅ぼされる。そしてこの国はローマ帝国の真の敵となる。
セヴェルスが良かれと思ったことは結果的にローマ帝国衰退の端緒を開くことになる。パルティア攻撃後、元老院も市民も大喜びだったという皮肉。政治というのは後になってしか成否が図れないのだと思わされる。続きを読む投稿日:2024.02.14
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