項羽と劉邦(中)
司馬遼太郎(著)
/新潮文庫
作品情報
叔父・項梁の戦死後、反乱軍の全権を握った項羽は、鉅鹿の戦いで章邯将軍の率いる秦の主力軍を破った。一方、別働隊の劉邦は、そのすきに先んじて関中に入り函谷関を閉ざしてしまう。これに激怒した項羽は、一気に関中になだれこみ、劉邦を鴻門に呼びつけて殺そうとするが……。勇猛無比で行く所敵なしの項羽。戦さ下手だがその仁徳で将に恵まれた劉邦。いずれが天下を制するか?
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商品情報
- シリーズ
- 項羽と劉邦
- 著者
- 司馬遼太郎
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2005.07.01
- Reader Store発売日
- 2015.05.01
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- シリーズ情報
- 既刊3巻
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この作品のレビュー
平均 4.1 (78件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
【感想】
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初挑戦の中国歴史小説の第2弾!
上巻と変わらず、登場人物の多さや名前の読み方の難しさには辟易したが、、、ストーリーそのものは楽しんで読めた。
タイトル通り、項羽と劉邦の違いについて書かれていた。
上巻では仲間だったご両人だが、劉邦の裏切りによって関係が破綻、相対する関係となった。
英雄さながらの勢いで邁進する項羽に対し、劉邦の平凡さというか生々しさが本当に面白い。
己の平凡さや弱さ、また項羽の強さをしっかりと認識し、部下の容赦のない助言にも嫌な顔一つせずに信じて受け入れる劉邦は、項羽とは違った意味でトップとして優れているんだなと思った。
トップという立場の人間なのに、こんなにも執着なく自身を客観的に卑下できるのは、やはりトップとして求められるニーズの一つだろう。
運やツキと言えばそれまでだが、こんなトップだからこそ優秀な人材を獲得できたのかもしれない。
現代でいうところのトップダウンが激しい項羽軍に対し、杜撰なぐらいアメが多めな劉邦軍。
この群雄割拠の戦国でも、結局はこういった組織体制が功を奏するんだなぁ。
何と言っても、出てくる登場人物一人一人ののキャラクターが立ちすぎている!!笑
両将軍は勿論のこと、韓信・黥布・張良・随何、そして陳平。
本当にみんな、クセがスゴイ!!笑
最終巻である下巻が楽しみ。
【あらすじ】
叔父・項梁の戦死後、反乱軍の全権を握った項羽は、鉅鹿の戦いで章邯将軍の率いる秦の主力軍を破った。
一方、別働隊の劉邦は、そのすきに先んじて関中に入り函谷関を閉ざしてしまう。
これに激怒した項羽は、一気に関中になだれこみ、劉邦を鴻門に呼びつけて殺そうとするが……。
勇猛無比で行く所敵なしの項羽。
戦さ下手だが、その仁徳で将に恵まれた劉邦。
いずれが天下を制するか?
【ポイント】
1.劉邦の長所
劉邦は主将みずから鉾をふるって敵陣におどりこむという個人的戦闘力は持っていない。
劉邦軍は流民や敗残兵を吸収しつつも、項羽軍のような圧倒的な膨張力は持たなかった。
劉邦の長所は、劉邦という人間がつくりだしている幕営の空気が、なんともいえずいきいきしていることであった。
人を包容し、ささいな罪や欠点を見ず、その長所や功績をほめてつねに処を得しめ、劉邦に接すると何とも言えぬ大きさと温かさを感じさせる。
この大陸でいうところの「徳」という説明しがたいものを人格化したのが劉邦だった。
2.劉邦の長所2
功をたてた者への恩賞は惜しみなく与えた。
寛容さと気前のよさという劉邦の特質は、劉邦一個の能無しを補ってあまりがある。
肝心の戦のほうは一向にはかばかしくないのに、この一軍はつねに陽気で、ここにだけ陽が照っている具合でもあった。
3.戦場で叩きに叩いて秦人の敗北感を徹底させる以外に、彼らの抵抗心を奪う方法がないと張良は見ていた。
非戦闘員に対しては慰撫を、軍人に対しては打撃をという両面を徹底的に使い分けた軍略家はこれまでいなかったが、この方法が後世の模範となった。
4.(秦を滅ぼしたのは、果たしておれだろうか)
5.項羽は配下に官位や封土を与えるのに老婆が小銭を出し惜しみするように吝嗇であったが、一方劉邦の放漫さも世間では定評になっていた。
劉邦は鼻くそをほじるように、「同じ都尉でも、楚の都尉は重く漢の都尉は軽いと思っているのだろう」と、声を上げて笑い出した。
陳平は劉邦が世評をよく聴き知っていることに驚き、先刻の感想を胸のうちで取り消しつつ、(どうせ馬鹿だろうが、ただ馬鹿にするとひどい目にあいそうだ)というふうに思い直した。
【引用】
p6
劉邦は抜群の偉丈夫であるという点ではかろうじて士卒たちを安堵させたが、しかし主将みずから鉾をふるって敵陣におどりこむという個人的戦闘力は持っていない。
劉邦軍は流民や敗残兵を吸収しつつも、項羽軍のような圧倒的な膨張力は持たなかった。
が、劉邦軍にも長所がある。
劉邦という人間がつくりだしている幕営の空気が、なんともいえずいきいきしていることであった。
人を包容し、ささいな罪や欠点を見ず、その長所や功績をほめてつねに処を得しめ、劉邦に接すると何とも言えぬ大きさと温かさを感じさせる。
この大陸でいうところの「徳」という説明しがたいものを人格化したのが劉邦だった。
言いかえれば、劉邦の持ち物はそれしかない。
徳と侠以外にはどういう力も持っていないという点では、劉邦はやはり遊侠に近い。
p41
劉邦は、西進へのみちみち酈食其(れきいき)のような奇才の士をひろい、奇功をたてさせることによって勢力をふくらませた。
功をたてた者への恩賞は惜しみなく与えた。
寛容さと気前のよさという劉邦の特質は、劉邦一個の能無しを補ってあまりがあり、肝心の戦のほうは一向にはかばかしくないのに、この一軍はつねに陽気で、ここにだけ陽が照っている具合でもあった。
ついでながら、酈食其が劉邦のために辣腕をふるうのは少し後のことになる。
p69
(張良、ええ加減にやめんか)
劉邦はその執拗さが不愉快になったが、張良はかまわずに劉邦の手元から大小の部隊をむしり取っては次々に秦軍に向かわせ、突撃させた。
戦場で叩きに叩いて秦人の敗北感を徹底させる以外に、彼らの抵抗心を奪う方法がないと張良は見ていた。
非戦闘員に対しては慰撫を、軍人に対しては打撃をという両面を徹底的に使い分けた軍略家はこれまでいなかったが、この方法が後世の模範となった。
p110
(秦を滅ぼしたのは、果たしておれだろうか)
劉邦はごくあっさりと、おれではないと思った。
かえりみると、始皇帝の死後、大小の流民が次第に数を増していき、ついにはその一方の大親分として自分が存在するようになった。
が、項羽の吸引力のほうが巨大で、人数では比較にならなかった。
しかもその項羽が河北で秦の主力を引きつけておいてくれたおかげで、自分は河南に南下し、関中から入ることができた。
功の九割までは項羽に帰せられるべきだということは劉邦にもよくわかっていたし、関中にまず入った自分を項羽が怒る気持ちも尤もだと声を上げてやりたいほどに、わかっている。
(なにか、挙兵以来、宙に浮いてここまできたようだ)
p118
項羽はもはや劉邦を殺す気がなくなっていた。
かれは劉邦の弁疏(べんそ)を信じたわけでなく、ろくに聞いていなかったし、憶えてもいない。
項羽は本来、視覚的印象で左右された。
体全体が、寒夜の病犬のようになってしまっている劉邦に、その本質を項羽なりに見てしまい、こんな憐れなやつをおれが殺せるかと思った。
p155
韓信は、自分を影のような人間だと思っている。
さほどに生存欲はなく、まして出世欲などはない。といって厭世家ではなく、ただひたすらに自分の脳裏に湧いては消える無数の戦局を本物の大地と生命群をかりることによって実現してみたいということだけがこの世で果たしたい希望であった。
p177
劉邦は、国名を創った。
「漢」と呼んだ。漢中王であったときその地域呼称にすぎなかった「漢」を、そのまま関中にまで持ってきたのである。
p196
劉邦とその軍は、東進した。
劉邦の軍は、つかのまに56万になっていたのである。
劉邦がかつて関中を去って漢中への桟道をたどったときは、3万しかなかった。この3万こそ、劉邦と運命を共にしようとする中核であるといっていい。
関中に戻って中原に出るにあたり、かつての秦人を募り、これによって6万の兵になった。
「敵を攻めるより、味方を維持する方が難しい」
張良などは、統制のために肝胆を砕いた。
p263
「私は死を決している。漢王に対してでなく、九江王に対してです。」
随何は、自分が黥布に説得しようとする外交上の内容よりも、まず使者としての自分の死骸の価値を説いたのである。
話を聞けというだけでなく、話がつまらぬと思えば殺せ、私の死骸はあなたの楚に対する外交上、非常な価値を持つはずだ。
話を聞いた黥布は、すぐさま随何と20人の使節団を呼ばせた。
p264
黥布は戦場では悪鬼のように強かったが、我が身の振り方となると、信じがたいほどに小心であった。
そのくせ、大望がある。この男は、天下を望んでいた。
漢と楚を激闘させて漁夫の利を得れれば、と思っていたが、黥布軍の唯一つ、そして致命的な欠点は、中立を維持できるための強大な武力を持っていないことだった。
(この男は、利の計算に窮している)
在来、随何は黥布のことを飢えた虎が肉を欲しがるように利を求め、利のためなら何をするかわからない男ととらえていた。
が、黥布はその利の計算をしぬいた挙句、窮している。
この男を随何の掌中に入れるには、利の話以外にない。
p296
「官位は何であったか?」
「都尉でございます」
「ああそれなら今日から都尉に任じよう」
劉邦があっさりそう言ったとき、陳平は喜ぶよりも、何か大きな穴の中に吸い込まれるような恐ろしさを感じた。
が、同時に劉邦の甘さを思った。
項羽は配下に官位や封土を与えるのに老婆が小銭を出し惜しみするように吝嗇であったが、一方劉邦の放漫さも世間では定評になっていた。
が、劉邦は鼻くそをほじるように、
「同じ都尉でも、楚の都尉は重く漢の都尉は軽いと思っているのだろう」と、声を上げて笑い出した。
陳平は劉邦が世評をよく聴き知っていることに驚き、先刻の感想を胸のうちで取り消しつつ、
(どうせ馬鹿だろうが、ただ馬鹿にするとひどい目にあいそうだ)というふうに思い直した。
p366
陳平の奇術と周苛と紀信により、栄陽城の寿命が延び、劉邦や張良、黥布らは脱出に成功した。投稿日:2019.06.24
2024年、読了一冊目。
上巻から一転、項羽はあまり出てこず、主に劉邦、そして劉邦に仕えた陳平が主に書かれている。
いよいよ劉邦が追い詰められる、結果は知ってるけど全然面白くて、初めて読むような感…覚。
項羽と劉邦、2人の相反する人間性が分かりやすく書かれていて、早く下巻を読みたくてウズウズしてる。続きを読む投稿日:2024.01.06
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