日本人の神
大野晋(著)
/河出文庫
この作品のレビュー
平均 3.9 (8件のレビュー)
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・大野晋「日本人の神」(河出文庫)は いかにも国語学者大野晋らしい書であつた。内容は「日本語のカミ(神)という言葉の由来をたずねてみようと」(10頁)いふものである。語源に始まり廃仏毀釈まで、いやもつ…と幅広い話題にあふれてゐる。その根本には国語学者の思考と方法がある。もともとは「一語の辞典」といふシリーズの1冊として刊行され たといふ。この「神」へのこだはりもむべなるかなである。
・巻頭の語源で問題になるのがカミのミである。これが大野の上代特殊仮名遣ひに関連するといふのはよく知られたところで、神のミは乙類であつて、甲類の、 例へば鏡のミだとか、上のミだとかとは別の音であるといふことである。つまり、従来の「神」の語源説はまちがひなのであつた。そこから日本の「神」の概念を考へ、仏教の「仏」との対比をし、更にその両者の関はりを考へていく。この中で本地垂迹や神仏習合に触れ、関連して国学の発展に言及する。神をめぐる日本の思想史とでも言ふべき内容である。かういふので終はれば、失礼ながら何だこれだけかといふことになつてしまひさうである。ところがそこは大野晋である。そんな形では終わらない。まだ先がある。「カミの輸入」である。その前に「ホトケのぶちこわしとGodの輸入」なる章があり、西洋的な一神教に於ける神との違ひに触れてゐる。そのうへで、日本のカミはどこから来たかを最終的に考へるのである。結論から言へば、大野晋の専売といつても過言ではないタミル語である。日本のカミはタミル語から来た……大野晋であるから、ある意味で予定調和的な世界である。さうであるからこそ、ここできちんと日本語とタミル語の関係を説明してゐる。タミル語とは、「インドの最南端に、現在五〇〇〇万人の使用人口を持ち、B.C.二〇〇年~A.D.二〇〇年の間の、詩二四〇〇首 を持つ」(132~133頁)言語である。「日本語との間に五〇〇の対応語をもつが、それだけでなく朝鮮語との間にも何百という多数の対応語をもつ」 (133頁)言語である。しかも、考古学的にも日本とタミルの関係が明らかになつてゐる(134頁)。このあたりは他の大野の著作に詳しい。本書に関連して言へば、カミ関連の語の対応ももちろん多くあり、しかも、その意味内容から日本のカミと「音形と意味において全面的に対応する」(177頁)語もまたあるのである。ただし、この事実から日本のカミ概念が先かタミル語が先かの判断はできない。いづれにせよ、ここで大野の考への正当性が確認されることにな る。これを我田引水と言つては失礼であらう。ただ、私はタミル語を全く知らないので、大野が日本語との対応等を示しても、その妥当性を判断することができず、さうなのかと感心するばかりである。このカミに関しても同様、大野によれば、日本のカミは確かにタミルに続いてゐると思ふ。現在、この大野の起源説がどのやうに評価されてゐるのか、これを私は知らない。ただ、学会で広く受け入れられてゐるのかどうか。国語学会は困惑の体であらうか。言語学的にはいろいろと問題が多いらしい。だからといふわけではないが、私も眉唾の感を捨てられないのである。おもしろいことはおもしろい。例の如く、なかなか見事な素材の料理の仕方、書きつぷりである。首尾一貫してゐる。だから、こんなにうまくいくものかと思ひつつも、感心して読んでしまふ。それでも、私にはタミル語について今一つ釈然としないものが残る。この起源説によるカミ解釈が大野の言ひたかつたことだといふのは分かる。分かるからこそ、ここでもそれをもつとつきつめてほしかつたと思ふばかりである。続きを読む投稿日:2014.03.03
神と仏の違い、神の意味するところの歴史的変遷がよくわかる名著。神の意味するところは6種類ぐらい有る。元々神というのは恐ろしく、支配されるものだったが、仏の伝来により人々の心を鎮めたり、慰めたりする存在…にもなった。また、カミの語源がインド南部のタミル語から来ているという発見も面白い。コロナが収束したらインド南部を旅してみたい。続きを読む
投稿日:2022.01.23
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