琉球ゴールデンキングスの奇跡
木村達郎(著)
/学研
作品情報
プロバスケットボール・bjリーグの2009年シーズンに奇跡の優勝を果たしたのは、参入2年目の琉球キングスだった。東京生まれの著者が、縁も縁もない沖縄に初のプロチームを立ち上げ、地元出身の選手とともに夢をつかんだ奮闘と情熱の物語。
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商品情報
- シリーズ
- 琉球ゴールデンキングスの奇跡
- 著者
- 木村達郎
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 学研
- 書籍発売日
- 2009.10.09
- Reader Store発売日
- 2014.02.21
- ファイルサイズ
- 3.2MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 4.8 (5件のレビュー)
-
沖縄が引き寄せたまっすぐな情熱
読み終わって胸が熱くなった。
東京の大学へ行き、アメリカでネットを通じて知り合い、東京で初めて対面した二人の男(木村達郎氏&大塚泰造氏)がプロバスケットボールチームを…創り、優勝へ導いていくのだが、この本を読み強く思い出した一冊がある。
それは、大分トリニータの誕生から優勝、そして一気にJ2に降格したまでを描いた「社長・溝畑宏の天国と地獄 ~大分トリニータの15年」
現在なぜかすんなり観光庁長官のポストを務めている溝畑氏とトリニータの歴史には、やはり官僚出身の彼が中心にいたせいか、常に官僚と役人の色が出ており、純粋にサッカーが好きという情熱となぜか重なり合わない印象を受けた。
地元サッカー協会等の協力を得ずに強引に進めたあたりが後々の没落につながる訳だが、豪腕社長のトップセールスと情熱ばかりが目立つ内容になっていた。
それと比較し、沖縄ゴールデンキングスの軌跡はなにもかもが違う。
中心人物の二人は元々大のバスケ好き。
二人ともアメリカに留学し、本場NBAに現地で触れている。
二人はbjリーグの開幕戦を見て可能性を感じ、そこから本格的に動いていくわけだが、やはり大分の物語とは差がでる。
唯一同じなのは情熱である。
しかし生い立ちの根本目的がやはり違うから、そこからのストーリーも違うのだろう。
ワールドカップを招致して大きなスタジアムを建ててというどこか箱モノ行政的な役人的な思想のもと、県知事を全面に出して進めて創られたチームと、バスケットボールが好きで、競技に対する愛がある地域でそこにチームを創り、日本のスポーツ界を良くしようという想いで創られたチームでは当然のことだろう。
まず協力してくれている人物の質が違う。
皆バスケットボールが好きな人たちが登場する。
沖縄県バスケットボール協会の人、沖縄のバスケットボールショップの店長、ストリートボールのリーグ運営に関わっていた人、とにかくバスケットボールという競技への愛がある人間が登場してくる。
ここは、溝畑氏個人の情熱と魅力に懸けてみたくなった人とやはり差がある。
さらに、現地の企業、現地の広告代理店、現地のスポンサー、現地のメディア、現地の人脈が次々に登場してくる。
やはり行政溝畑氏個人の伝てと頑張りで無理矢理進めているのと違って、本当の地域密着を狙った成果なのだろう。
そして最後に決定的に違うのは、スポーツチームの運営のプロが加入したこと、及びマーケティング調査をしたことの勝利だろう。
彼らはNBAのチームのフロントで12年間務めた安永淳一氏をフロントに招き入れている。
彼はネッツに長く在籍し、セールスから施設管理、ゲーム運営まで行っていた経験を持つ。
その道のビジネスのプロがいたことによって経営面での差も大きく出ただろう。
ちなみに余談ではあるが、ファイナルで敗れてしまったヒートのヘッドコーチ、エリック・スポルストラの父は昔劇的に弱かった時代のネッツのセールスマーケティングの担当で、様々な工夫で観客動員を増やしていた人物である。
スポーツマーケティングの名著も残している。
「エスキモーに氷を売る」
「エスキモーが氷を買うとき」
モットーの一つは、「とにかく売り上げをあげること!」
安永氏とは接点があっただろうか?
さて本題に戻って、マーケット調査を徹底的に行い、沖縄というバスケ人気が高く、人口が都市に集中している地域を選んだことも成功の要因の一つだろう。
米軍基地の影響もあってか、沖縄でバスケが盛んで、中高の大会も観客が多い。
さらにやはり米軍基地の影響か、アメリカンスタイルの個人技を有する選手が多く育つ特色も持つ。
それを考えると、やはりバスケが好きだという沖縄の熱が、東京の二人を呼び寄せたような気がしてならない。
人生や仕事でもそうのように、火の元になる熱が弱いところに強引に生み出したものと、元々熱があるところに着火させるのとではやはりかなり違いがあるのだろう。
チーム創設後1年目こそ大苦戦するものの、その後bjリーグ2連覇。
選手の顔ぶれにも当然沖縄出身の選手も多く、外人選手の質も高く、一体感のあるチームになっているようだ。
本の後半の後世はチームの創設から運営というよりかは、シーズンを追いかけた内容と選手の声を中心に構成されている。
そして最後は今後の夢、沖縄からアジアへ、そしてさらにNBAへ、さらに専用スタジアムの夢なども含まれている。
聞くところによると、競技への熱だけでなく、ビジネスの面でもしっかり意識して成長してきた沖縄琉球ゴールデンキングスは黒字経営らしい。
地元の熱がこういった形で結実したケースは日本では珍しいだろう。
そんなケースの裏側には当然読み手の胸を熱くするエピソードは詰まっているし、何より人間の意志と情熱の勝利を感じずにはいられない。
沖縄の熱が東京からのジョン万次郎を誘ったように、今度はその熱がどんどん伝播することを期待したくなる一冊だった。続きを読む投稿日:2011.06.18
沖縄初のプロスポーツチーム、琉球ゴールデンキングスの誕生と、2年目の優勝に至るまでの経緯が綴られた本。すでに10年前なので、出てくる選手たちは、今のチームにはまったく残っていないのだが、創設者の苦悩と…喜びが伝わって非常におもしろく読めた。
何よりすごいと思うのは、ないちゃーが沖縄の人を相手にここまで成功する事例はなかなかないのではないか。ないちゃーが沖縄でないちゃー向けの(ホテルなど観光業を主として)ビジネスをして成功する例はたくさんあると思うが、沖縄の人をここまで虜にしたのはすばらしいと思う。木村氏の熱い思いと経験と人間力が為せた偉業だろう。
と言いながら、実は一度も試合を見たことがないので、是非見に行ってみようと思う。続きを読む投稿日:2019.10.05
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