この作品のレビュー
平均 4.4 (9件のレビュー)
-
最終巻となる本書には『意志と表象としての世界(正篇)』の第四巻「意志としての世界の第二考察」および序文が収められている(付録の『カント哲学の批判』は収録されていない)。
第四巻の冒頭でショーペンハ…ウアー自身がおごそかに宣言しているとおり、『意志と表象としての世界(正篇)』のクライマックスである本書では、生(性)と死、善と悪、などといった倫理的な問題が集中的に論じられている。ショーペンハウアー哲学に対する「性と死の哲学」という形容は、この第四巻のためにあるといっていい。
世界は私の表象に過ぎず、知性は意志の奴隷に過ぎない。その知性が意志に対し謀反を起こし、芸術という形で脱却する可能性が第三巻において明らかにされた。だがそれは天才において、しかも一時的に発生する束の間の夢でしかない。知性が永続的に意志から解き放たれる可能性はないのだろうか。
意志の否定。それがショーペンハウアーの回答である。意志に翻弄され苦痛を味わい尽くし、最終的に意志を否定する境地にたどり着くこと。それが解脱であり、悟りへの道である。だがそれは自殺ではない。自殺とは意志の強烈な肯定でしかない。意志が否定された暁には、私は夢から覚め、世界は無に帰することであろう――。
預言的な内容を含む本書は、事実宗教と、とりわけ仏教(インド哲学)との親和性が高い。だがショーペンハウアーは預言者としての道は歩まない。哲学者は聖人である必要はないからである。本書を読んだニーチェがやがてツァラトゥストラとなり、意志の肯定を説くことになるのとは対照的である。
ダイナマイト・ニーチェの導火線に火を点けた本書を読まずして、ニーチェ哲学の理解は覚束ないであろう。これなくして哲学者ニーチェは生まれなかったであろう本書を、ニーチェ研究家の西尾による名訳で読めるわれわれ読者は幸せである。続きを読む投稿日:2019.07.02
ショーペンハウアー「 意志と表象としての世界 」
3冊(4巻)は長いが、認識論(主観と客観)に始まり、芸術論(純粋主観)を経て、倫理学(主観と客観の無)に終わる展開は見事。想像をはるかに超える結論(…ユートピア)だった。
人生に関する名言格言も多い。西尾幹ニ 氏の訳も良かった
印象に残った論考
*生きんとする意志の否定し自由に転換することと、自殺と生きんとする意志の否定を明確に区別
*個体化原理を乗り換えて、苦しみを与える者と苦しみを受ける者は同一とした
著者が目指す人間像は「世界の超克〜真の認識を開き、生きんとする意志を捨離し、真の自由を得て、寂静たる生活振舞いをする」と捉えた
人生に関する名言格言
*人生は苦悩と退屈の間を往復している
*苦悩は人生の本質をなす〜苦悩は外から自分の方へ流れこんでくるものでなく、誰でも自分の心中に苦悩の泉をかかえて生きている
*他人の苦しみと自分の苦しみとの同一視こそが愛である。愛は共苦である
*普通人は認識によってでなく、苦悩を通じて解脱に近づく。苦悩には人を神聖にする力がある
苦しみを与える者と苦しみを受ける者は同一である〜永遠の正義(罪の悪と罰の悪を一つに結びつける天秤の竿)を認識するには、個体化の原理を超越することが必要〜輪廻の神話
生は 生きんとする意志 の模像であり鏡である〜表象としての世界において、意志の目前に 意志を映す鏡が現れ、鏡に照らして 意志は己れ自身を認識する
苦しみを与える者と苦しみを受ける者は同一である〜永遠の正義(罪の悪と罰の悪を一つに結びつける天秤の竿)を認識するには、個体化の原理を超越することが必要〜輪廻の神話
生きんとする意志の否定とは〜神聖さであり、意志の鎮痛剤の中から生じる。鎮痛剤とは 意志の内部抗争、意志の本質的な空虚性をいう
意志を廃絶するのは認識によってしかなし得ず、自殺は意志の肯定の一現象である。自殺は個別の現象を破壊するのみで、意志の否定にはならず、真の救いから人を遠ざける
意志の否定こそ現象の中に現れる意志の自由の唯一の行為である〜意志の否定の本質は、苦悩の嫌悪にあるのではなく、人生の享楽を嫌悪することの中にある
自殺は意志の否定でなく、意志の強烈な肯定の一つの現象である〜自殺は現在の自分に満足できないだけにすぎない〜自殺者は生きんとする意志を放棄するのでなく、生を放棄して、個別の現象を破壊するととどまる
完全に必然性に支配されている現象界の中へ意志の自由が出現するという矛盾を解く鍵は、自由が意志から生じるのではなく、認識の転換に由来することにある
意志が自分の本質自体の認識に到達して、この認識の中から鎮痛剤を獲得し、動機の影響から脱したとき、意志の自由が出現する
意志の完全な否定に到達した人にとっては〜無こそが存在するものである。彼はいっさいの認識を超えて、主観も客観も存在しない地点に立つ
意志がなくなるとともに意志の現象がなくなり〜現象の一般形式である時間と空間もなくなり、現象の根本形式である主観と客観もなくなる
癒し難い苦悩と悲惨が意志の現象である世界の本質であることを認識し、意志の廃絶により世界が消え去り目前に空虚なる無が残る
意志を完全になくしてしまった後に残るものは〜無である。すでに意志を否定し、意志を転換し終えている人々にとっては、現実のわれわれの世界が無なのである〜一切の認識を超えた世界〜主観も客観も存在しない地点
続きを読む投稿日:2021.05.21
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。