内奏-天皇と政治の近現代
後藤致人(著)
/中公新書
作品情報
内奏――臣下が天皇に対し内々に報告する行為を指す。明治憲法下では、正式な裁可を求める「上奏」の前に行われた。戦後、日本国憲法下、天皇の政治関与は否定され、上奏は廃止、内奏もその方向にあった。だが昭和天皇の強い希望により、首相・閣僚らによる内奏は続けられる。天皇は「御下問」し、それは時に政治に影響を与えた。本書は、「奏」という行為から、天皇と近現代日本の政治について考える試みである。
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商品情報
- シリーズ
- 内奏-天皇と政治の近現代
- 著者
- 後藤致人
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2010.03.25
- Reader Store発売日
- 2014.12.21
- ファイルサイズ
- 5.1MB
- ページ数
- 246ページ
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この作品のレビュー
平均 3.4 (10件のレビュー)
-
愛知学院大学文学部准教授(日本近現代史)の後藤致人(1968-)による戦前・戦後を通じた臣下から天皇への内奏・御下問に絞った研究。
【構成】
序 章「奏」の近代化-上奏・内奏
第1章上奏と陸海軍-帷…幄上奏と最終決定
1 帷幄上奏-天皇との直結
2 海軍の「奏上」
3 陸軍の上奏-南部仏印進駐と上奏・御下問
4 上奏・御下問対策-日米開戦までの道
第2章内奏-曖昧な慣習の姿
1 東京裁判と「内奏」論議
2 多彩な内奏-口頭・公文書・私文書
3 形式と内容
第3章権力者たちの認識-日記に登場する内奏
1 大正期-『原敬日記』の上奏・内奏
2 昭和戦前・戦中期-宮中と内閣の文書による相違
3 密葬の系譜を継いだ内奏
第4章昭和天皇の「御下問」
1 田中義一首相不信任
2 二・二六事件と天皇の「厳命」
3 東條内閣人事の上奏・内奏と御下問
第5章敗戦直後の内奏-廃止と継続の迷走
1 日本国憲法と天皇の政治関与
2 内奏廃止から復活へ-芦田均と吉田茂の意識の相違
3 岸信介内閣による知事会議の奏上復活
第6章自民党政権下の内奏
1 佐藤栄作の昭和天皇への傾斜
2 昭和天皇と佐藤の「君臣情義」関係
3 閣僚内奏と御下問の「威力」
4 増原防衛庁長官の内奏漏洩-内奏の政治問題化
5 1980年代の内奏
第7章平成の内奏-代替わり後の継続と変化
1 天皇明仁の特別な意識
2 内奏の変遷-竹下政権から小泉政権
3 象徴天皇制と天皇明仁
終 章 近現代日本の「内奏」とは
前半3章は、広く「奏」と呼ばれる臣下から天皇への報告・決裁を仰ぐ行為全般を分類していく。文書により正式な裁可を仰ぐ「上奏」、上奏を含み天皇へ政府決定事項を報告する「奏上」、そしてその奏上との境界が曖昧な「内奏」。
特に書名となっている「内奏」についてはその曖昧さゆえに実態の把握が課題となるが、本書では、
①上奏前に天皇に内々に奏したもの
②上奏はないが、天皇大権との関係で上奏が想定されるものの何らかの理由で上奏の代わりに内奏されたもの
③上奏と直接関係ないもの
と区分している(p.80)。
特に人事関係の内奏の手順は興味深い。想像するに親任官クラスの人事の場合は、天皇から御下問がある場合があるため、上奏前にかならず内奏を行い天皇の内諾を得た上で、正式な上奏手続きを取っていたように見える。つまり、天皇大権に基づく人事権が不文の慣習として確立されていたと言えるだろう。
また、後半の4章は昭和の戦前・戦後から平成にかけての内奏・御下問による天皇の政治的指示についての概観が行われている。
張作霖爆殺事件に際しての田中義一首相への不信任表明はよく知られているが、それについての昭和天皇の誤解を指摘する視点は面白い。田中は事件直後の1928年12月に内奏した厳重処罰方針から一転して、微温的な対応にとどめる旨の上聞(裁可を求めず、報告をお耳に入れる)を行った。しかし、昭和天皇はそれが田中が政府として決定した正式な「上奏」と思い、自らにそれを裁可させようとする田中の態度に対し、自ら報告を打ち切った。
そしてその後経過により田中内閣総辞職となり、昭和天皇は反省する。『昭和天皇独白録』によればその後昭和天皇は、「上奏」に対しては拒否権を行使しないと決意したという。
そして、この誤解の故、「上奏」以外の「内奏」に対しては引き続き御下問を通じて自らの意思を反映させていく。
戦後の内奏については、よく知られる占領期の天皇外交だけでなく、芦田、吉田、鳩山、岸そして佐藤と首相の性格を踏まえた内奏の温度差を指摘している。特に佐藤の態度変化は面白い。ただ、占領期以降については、ほとんどエピソード紹介にとどまっており、分析・議論というレベルにはない。
全体として、興味深いテーマであり、各用語の違いをくみ取って戦前期の政治過程を見直してみると、新たな発見があると思う。また、昭和天皇個人の政治思想を読み解く上で戦後の内奏・御下問は史料公開を進めながら、掘り下げていくことが必要である。
ただ、本書において、近現代史の天皇-政府関係の構造を捉えるというところまでは、踏み込めていないという印象である。続きを読む投稿日:2013.11.24
序章 「奏」の近代化―上奏・内奏
第1章 上奏と陸海軍―帷幄上奏と最終決定
第2章 内奏―曖昧な慣習の姿
第3章 権力者たちの認識―日記に登場する内奏
第4章 昭和天皇の「御下問」
第5章 …敗戦直後の内奏―廃止と継続の迷走
第6章 自民党政権下の内奏
第7章 平成の内奏―代替わり後の継続と変化
終章 近現代日本の「内奏」とは
著者:後藤致人(1968-、神奈川県、日本史)続きを読む投稿日:2018.11.28
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