電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ
宇田賢吉(著)
/中公新書
作品情報
時速100キロ以上の速さで数百トンの列車を率いて走行し、時刻通りにホームの定位置にピタリと停める…。このような職人技をもつ運転士は、何を考え、どのように電車を運転しているのだろう。また、それを支える鉄道の仕組みとはどのようなものだろう。JRの運転士として特急電車から貨物列車まで運転した著者が、電車を動かす複雑精緻なシステムと運転士という仕事をわかりやすく紹介する。
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商品情報
- シリーズ
- 電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ
- 著者
- 宇田賢吉
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2008.05.25
- Reader Store発売日
- 2014.12.21
- ファイルサイズ
- 31.2MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (24件のレビュー)
-
電車の運転技法とそれに関わる基礎知識(電気的な部分を含む)についての解説本。運転士を育成するための教本を読んでる感じであったものの、電車の運転が如何に職人芸的で、著者がその仕事を誇りに思っているかがひ…しひしと伝わってきた。身近でありながら、ブラックボックス化している鉄道というものについて理解するには最適な本ではないかと。ヘンにマニア的視点が一切ないのもポイント高し。続きを読む
投稿日:2008.11.01
【感想】
電車の運転を支えるさまざまな技術・工夫について、国鉄=JRの元運転士が余すところなく解説した、燻し銀のような渋い良書。鉄道のしくみをちゃんと理解するには電気の知識が必須だなと思った。
…【まとめ】
●交通機関の3原則: 安全、正確(高速)、快適 (=運転士の永遠の目標)
●鉄道の長短:
○決められた道(レール)を走る→線路の専用(閉塞)→定時・高速・大量輸送
○鉄(車輪)が鉄(レール)の上を走る→
①高速運転(走行抵抗が小さい)
②大量輸送(走行抵抗が小さい=重量あたり出力が小さい→大型化が可能)
③雪や雨に強い(車輪とレールの接触面が小さい=単位面積あたりの圧力が大きい→間に嚙みこんだ雪や雨を容易に排除)
✕上り坂に弱い(重量あたり出力が小さい)
✕曲線に弱い(軌間が狭い・車体が大きい・重心が高い→遠心力による横からの力に弱い)
✕進路を選べない(レール)
●安全第一を実現するために:
・踏面の整正
・速度制限
・三重ブレーキ = 貫通・常用・予備
・閉塞方式
・信号機
・保安機器(ATS-Pなど)
・運転士の怖いもの(下り勾配、ブレーキの効きが悪い、空転と滑走、雨・霧・霜、毎日がレンタカー、信号機の間近に止まる、ホーム端の乗客、居眠り)
【メモ】
●発車と加速
・マスコン(master controller)
・ノッチ ≡ 力行を指示するためのマスコン操作・速度指令
・力行(りきこう) ≡ モーターに電流を流すこと
・VVVF: variable voltage variable frequency、可変電圧可変周波数制御
・空転(slip): 力行時のモーターの回転力 > 摩擦力(レールと車輪)
・輪軸方式: 鉄道は左右の車輪を車軸に固定(輪軸=車軸+両輪)→ 左右の回転数が常に等しい
・踏面(とうめん、車輪外周のレールに接する箇所)は定期的に削正(さくせい)
●走る ― 駅から駅まで
・ノッチオフ ≡ 力行から惰行に移ること
・惰行 ≡ 無動力による惰力運転
・力行率 ≡ 力行距離 / 走行距離 (=平坦線区では1/4〜1/2くらい)
・運転士は自分の乗務線区の情報について、あらかじめ資料を読みこんで完全に頭に叩きこむ(→極論すれば速度制限標は不要)
・走行抵抗 = 純走行抵抗(車輪を支える軸受の抵抗、レールと車輪の転がり摩擦による抵抗)+ 勾配抵抗 + 曲線抵抗 +出発抵抗 + その他の抵抗(トンネルの空気抵抗、橋梁での抵抗など)
・カント ≡(曲線での)左右のレール頭部の内側における高低差
・スラック ≡ 曲線での左右のレール間隔のわずかな広がり
・勾配 ≦ 25‰(1/40、通常限度)、33‰(1/30、最大)
・レール = 電流帰路
・直流電圧: 標準1500V、✕変電所(複雑、送電ロスが多い→設置間隔が短い)、✕架線(電流が大きい→饋電線(きでんせん)が必要、送電ロスが多い)、○車両(簡易→軽い)
・交流電圧: 在来線20kV/新幹線25kV、○変電所(簡易、送電ロスが少ない→設置間隔が長い)、○架線(電流が小さい→簡易、送電ロスが少ない)、✕車両(複雑→重い)
・変電所の容量を超えないために: 停電後の再送電→列車ごとの時間差起動(全列車の同時起動を制限)、単線の行違い駅→上り・下りの時間差発車(同時発車を制限)
●止まる
・運転士の最大の工夫 = ブレーキの衝動防止
・再ブレーキ、舟漕ぎブレーキ(再ブレーキ2回以上)を極力減らす
・転動(≡ 勾配などのため無動力で動くこと)しないよう、停車後はただちにブレーキ
・応荷重装置 ≡ 車両重量の変動に応じて車両ごとにブレーキ力を調整するシステム(車体を支えるバネのたわみを機械的に測定)
・滑走(skid): ブレーキ時のブレーキ力 > 摩擦力(レールと車輪)、ブレーキ力が粘着力より大きくなる→車輪がブレーキ力によりロックされる→回転せずにレールの上を滑る
・湿気(雨・雪・霜・霧、トンネルの中)+ 埃(レール表面)→ 泥 → 粘着力が小さくなる → 滑走
・雨天時の踏切 → 車・歩行者による泥 → 滑走
・滑走対策: 砂まき機構(機関車)、ブレーキ時にセラミックス粒子を吹き付け(新幹線)
・ブレーキ: フェールセーフ(故障時に動作)or フェールアウト(故障時に不動作)
●線路と架線
・JRのホームの高さ = 76cm、92cm、110cm
・車両限界: 最大幅 3000mm、最大高さ 4100mm/パンタグラフ込み 4300mm、車体底部はレール面から75mm
・建築限界: 側面は車両限界から400mmずつ、ホームは車両限界から75mm
・キロポストの起点 = 東京(東北本線)、神戸(山陽本線)、門司港(鹿児島本線)、米原(北陸本線)、函館(函館本線)
・レール1本の長さ = 標準25m
・レールの寿命 ← 摩耗(∝曲線、加速・ブレーキ)+ 金属疲労(∝通過量)
・レールを連結する継目板のボルトの数 = 6本(60、50Tレール)/4本(それ以外のレール)
・バラスト ≡ 枕木の下に敷く砕石
・スラブ軌道 ≡ バラストと枕木を使わずにコンクリートのベッド上にレールを直に敷設
・分岐器 = ポイント(分岐)+ クロッシング(交差)
・架線 = 吊架線(上)+ ハンガー +トロリー線(下)
・最も重要なのはパンタグラフに接するトロリー線を水平に保つこと
・パンタグラフ(の摺板)の同じ箇所が連続接触して発熱損傷しないよう、架線は左右にジグザグに張る(左右幅≦400mm)
・離線 ≡ パンタグラフが架線から離れること(→大きなアークを発生、直流ではアークが自然消滅しないので絶対に防止)
・パンタグラフを架線に押し付ける力 ≒ 5kg
・摩擦する物体は同じ材質のときに抵抗と摩耗が最も大きい → 硬銅(架線)と軟銅(摺板)の使い分け(架線交換よりも摺板交換のほうが費用が安い→摺板に軟銅を使用)
・サードレール: 地下鉄で採用、電圧≦750V
・架線の電圧降下は大きい(∝架線の電気抵抗と電流値∝電源からの距離)、変電所から遠い場所では20%ほど降下することも
・鉄道法→鉄道・甲種免許、軌道法→路面電車・乙種免許、車種=電気車・内燃車・蒸気機関車・新幹線電車
●安全のこと
・閉塞方式: ①閉塞区間に列車がなく空いていることを確認→進入許可、②1つの列車に進入許可を出したあとは他の列車に進入許可を出してはならない、③列車が通過して閉塞区間が空いたことを確認→次の列車に進入許可
・軌道回路: 閉塞区間に列車が入る → 車軸が左右のレールを短絡 → 電流が検知装置に届かなくなる=区間内に列車がいると判断 → 信号機に停止信号
・現示(げんじ)≡ 信号機が表示する信号の内容
・場内信号機、出発信号機、閉塞信号機など
・無閉塞運転 ≡ 例外的に閉塞区間に2本の列車を入れる
・進行(緑)→減速(緑黄)→注意(黄)→警戒(黄黄)→停止(赤)
・踏切警報機 = 第1種(警報機と遮断機)、第3種(警報機のみ)、第4種(防護装置なし)
・警報開始〜遮断桿(しゃだんかん)降下 = 標準20秒/最短15秒、遮断桿降下〜列車前頭が踏切通過 = 標準15秒/最短10秒、列車の検知は軌道回路による
・ドアが閉じる力 ≒ 60kg(人力で開けるのはむずかしい)
・マスコンのバネ: マスコンから手を離す→オフに戻って力行が終わる(運転士が意識不明になっても力行を続けなくて済む)、新幹線のマスコンから手を離す→オフに戻らない(新幹線は力行時間が長く、ほとんどノッチ投入)
・EB: emergency brake、居眠り対策
・ATS-P: automatic train stopper-pattern、信号機が停止現示 → ブレーキパターンを生成 → 信号現示どおりに(パターン内の速度で)運転すれば警報なし/パターンに接近すると警報/パターンを超えると自動ブレーキ作動
・ATC: automatic train control、信号現示とすべての速度制限に対して自動ブレーキ(制御するのはブレーキだけで力行は運転士)、新幹線や都市圏の鉄道(地下鉄、山手線)など
・ATO: automatic train operation、すでに仙台市営地下鉄などで部分的に採用
・保安機器の取り扱いは厳格に: 運転士に警報 →「ここで警報を受けるはずがない、誤作動だろう」と判断(正常性バイアス)→ 事故
・前部標識(前灯)と後部標識(尾灯)、標識 = 他者に列車の接近・存在を知らせるのが目的(前灯≠運転士が前方を見るための照明)
・ホームの安全: ホームの見通し=乗降の安全確保のために重要、曲線外側ホームが最も見通しが利かない、仙台市営地下鉄はすべてのホームを直線にした
●より速く
・停車中は進行距離 0 → 時間短縮に最も有効なのは停車駅を減らすこと
・振子車体への誤解: 「車体を内側に傾けて遠心力を相殺することで速度向上」は誤解、車体が振子する→車体重心が曲線外側に移動→脱線防止の点ではむしろマイナス、目的はたんに乗り心地の改善
・定格速度 ≡ モーターが最高出力を発揮できる速度
・車: 変速機(ギア)があるのでどの速度でも最高出力 ↔ 電車: 変速機がないので定格速度をひとつしか指定できず、定格速度より低速でも高速でも出力が落ちる → スタートダッシュか巡航速度か
・狭軌 1067mm: JR在来線、東武線、西武線、小田急、東急、相鉄、名鉄、南海
・1372mm: 京王線(井の頭線を除く)
・標準軌 1435mm: 新幹線、京成線、京急、阪急、阪神、京阪
●運転士の思い
・マスコンとブレーキを2箇所から同時に操作できてしまうと危険 → キー挿入で機器ロック解除/キーを抜くとロック/他の運転室でキー挿入しても無効
・運転士のコアタイム=朝夕のラッシュ → 出退勤が早朝深夜になりがち
・乗務率 ≡ 実乗務時間(実際に列車を運転している時間)/ 勤務時間 (=現在は相当高い)
・運転士のミスはバスタブカーブ(慣れるまでの初期、疲労がたまった後半)→ 「1時間半の乗務+30分の休憩」を繰り返すのが最良
・睡眠時間が毎日ずれる → 居眠り要注意(とくに10時〜12時)
・早朝深夜に営業している店がない → 食事をどうするか(とくに早朝)
・定時運転への努力、「運転士は秒針に追われて走る仕事」
・列車が遅れる原因=乗降時間の増加 → 遅れを回復しようとするのは運転士の本能続きを読む投稿日:2022.06.09
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