なぜ教育論争は不毛なのか 学力論争を超えて
苅谷剛彦(著)
/中公新書ラクレ
作品情報
「ゆとり」か「詰め込み」か――いつまで二項対立の愚を繰り返すのか? いつまで「左右対立」の図式に乗るのか? 学力低下論争の渦中で、いち早く不平等社会化に警鐘を鳴らしつつ、従来の対立軸を無効化し、そこに隠された現実を露わにしようと闘ってきた著者が、いま教育の論じ方を変える。観念論を排し、データに基づく政策科学を志す、まったく新しい教育論。
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商品情報
- 著者
- 苅谷剛彦
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書ラクレ
- 書籍発売日
- 2003.05.10
- Reader Store発売日
- 2014.12.21
- ファイルサイズ
- 0.9MB
- ページ数
- 294ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (12件のレビュー)
-
刈谷先生の著書は教育問題を勉強する際に、何をおいても読むべきと考えている。
当時は、東大の教授をされており、文科省とは切っても切れない関係であったであろうことは想像に難くない。
しかし、例のゆとり教育…論争では、文科省を正しい方向へ導く力にはあまりなれなかったようである。
学者らしく、きちんと論議を分けて展開しており、ロジカルでわかりやすい。
また、ごく当たり前の論理を冷静に記しており(たとえば歴史教科書問題など)、もっと教育行政に反映させるべき人物であると思われるが、文科省としては都合が悪いらしい。
最近、教育現場ではアクティブラーニングが大流行である。子供の学ぶ意欲も含めて違いがあるのに、一つの方法ですべてが解決するがごとくの言説は、ゆとり教育論争から変わっていない。この流行の兆しが見られる今だからこそ、読み直されるべき書物であろう。
最近の文科省の教育に対する考え方は、常軌を逸している年か思えない。
小学生から英語だ、プログラミングだと新規の科目を入れておいて、先生は増やさない授業時間も増やさないと来ている。私は情報教育にも関心があり、生徒や学生にも教えることがあるが、情報の教育がほぼ必修されてから、大学生がどうなったかといえば、恐ろしいほどのスキルの差を生み出しただけだった。今はエクセルだとかパワーポイントでお絵かきlevelであるので実害はないが、プログラミングであればアレルギーを大量に生み出す危険がある。そもそも教師自身のITスキルが、一般企業のサラリーマンに比べても恐ろしく低いことを文科省は把握していない。ピアノが弾けない人にピアノを弾く楽しさを教えられない、運動音痴の先生がスポーツの楽しさを教えられないのと一緒である。
これを読めば、教育の地盤沈下をさせているのは文科省とその取り巻きのえせ教育学者であることがよくわかると思います続きを読む投稿日:2017.05.10
このレビューはネタバレを含みます
2003年刊。
レビューの続きを読む
「階層化日本と教育危機」の著者を規準点とし、1999年頃から2003年くらいまでの教育界の変遷を叙述したものである。また、彼の教育時評も含んでいる。
個人的には著者の論考に共感…を覚えることが多いのだが、その理由が判った。
著者は本書にて、自分の立脚点に関し、「『どうもおかしい』と感じつつ、明確に把握できない問題、予想できない結果を生みだす問題を見つけ出し、それに表現を与え、可及的に実証的な研究成果を用いて解明する」主旨で、説明を加えていく。
そして、ここでいう実証的成果とは、証拠・データに他ならないが、この姿勢に共感を感じるのだろう。続きを読む投稿日:2017.01.02
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