私小説のすすめ
小谷野敦(著)
/平凡社新書
作品情報
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。才能がなくても書ける。それが私小説。その魅力を説き、「書きたい人」に勧める、挑発的文学論。
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商品情報
- シリーズ
- 私小説のすすめ
- 著者
- 小谷野敦
- 出版社
- 平凡社
- 掲載誌・レーベル
- 平凡社新書
- 書籍発売日
- 2009.07.15
- Reader Store発売日
- 2015.05.16
- ファイルサイズ
- 26.3MB
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この作品のレビュー
平均 2.9 (9件のレビュー)
-
「〆切本」を読んだ時、田山花袋や車谷長吉の文章がかっこよいことに気付いた。
今まで「私小説ってなんだか露悪的で自己愛が強くてジメジメしてそうで嫌だな」と勝手に想像して、食わず嫌いだったのだが、やはり…一流の作家の文章として、光るところが確実にあるのだから、読まないで人生終わるのは、もったいないのではと感じた。
私小説についてもっと知りたいと思ったので、この本を手にとった次第です。
読んでみた結果、半分はその目的に答えてもらったし、半分は目的外の内容でした。
タイトル通りの「私小説のすすめ」としての論旨としては、だいたい以下の通り。
私小説というジャンルが日本においては異様に確立されており、私小説擁護派と批判派にわかれて長い間論争されているが、私小説ではないとされている大文筆家の小説だってある程度自分の体験に基づいているものもある。世界に私小説というジャンルがないとはいえ、ルソーの告白をってもそのような本はごまんとある。
なので、リアリズム小説として、私小説の面白さは批判されるべきではないという趣旨。
筆者の膨大な文学知識に、なるほどーと唸る部分も多い。
また冒頭に書いたように、食わず嫌いで倫理的な嫌気が優って読んでいなかったような私小説の有名作(「蒲団」「火宅の人」「死の刺」)や西村賢太は読まなければという思いになった。(「死の刺」は小栗幸平の映画は観て、すごいと思ったが)
ただ、この本は、章が進むにつれて筆者の小谷野さんの息遣いというか色が濃くなってきて少し胸焼けする。
・私小説=片思い文学として、もてない男の気持ちを強調。
・文学賞とは時の運もあったり章の選考基準もわからないなどの話に脱線しがち、逆に文学賞にこだわりあり。
・中村光夫、大塚英志にたいする批評的な部分などで、悪口めいた割と感情的なニュアンスのこもった批判もあり、狭い文学会での評価されかたなどへの恨み、妬みなどもあるのでは?と感じさせらえるような気がしてしまった。(「二流」、「三流」、「四流」だとかのワード。自分を評価しない編集者を「ダメな編集者」と呼んだり。)
ここまで権威主義で、ねちっこく細かくロジカルで、感情的であると、確かに「女子からもてない」という筆者の自己認識に同感してしまう。
ただ、ここらへんの自分の思っている通俗的な感情を露わにしていくこと自体がこの人の芸のようなものなのだろうから、すこし脂っこいがそちらも含んでこの人の文章を読むのが良いのでしょうね。なんとなく憎めないけど、毎日接すると疲れるだろうな。というような人柄なのかなと思いました。
要は、筆者にいわゆる人間的な器の大きさ、人を受け入れる許容量が大きさが感じられない。
しかし人間の本質ってそんなものかもしれない、そういうネガティブな部分を楽しみ認められるのが、ビジネスなどの息苦しい実社会のルールから解放され、小説が輝ける部分なのかもしれない。
その意味で、ネガティブな感情であれどんどん出していくべきという筆者の意見は初志貫徹していていて、説得力もある。
また、筆者の私小説「非望」も、赤裸々な非モテ男の片思いとのこと、後味悪そうで、すこし怖いけれども、いつか読んでみたいと思いました。続きを読む投稿日:2018.05.19
私小説の意義
私も高校のころは丸谷才一に啓発されて、私小説なんてくだらないものだと思ってゐた。
しかしさうではないのである。ある種のリアリズムや私小説には凄味はあり、もっぱらそれは想像力ではまかな…ひきれない、事実から来るからだ。私は石原慎太郎の『弟』を読んだりしてそれを痛感した。たしかに絵空事の小説はしらじらしいものが多い。
ただ、蒲団を批判した中村光夫についての考察はちと長い。まあそれだけ読みごたへはある。続きを読む投稿日:2023.02.19
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