バルチック艦隊 日本海海戦までの航跡
大江志乃夫(著)
/中公新書
作品情報
内陸の帝国ロシアはバルト海のムルマンスク以外軍港に恵まれなかった。しかも極北の不凍港へは長い鉄道が必要だった。帝国はバルチック艦隊創設とともにシベリア政略を推進、極東への展開を目論むが新興海軍国日本との争いになる。日露戦争である。要衝旅順を確保すべくバルチック艦隊は長い遠征の末、待ち構えていた日本海軍と激突し潰滅する。だがこの日本海海戦は、その後の日本海軍に虚構に満ちた海戦伝説を生むことになる。
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商品情報
- シリーズ
- バルチック艦隊 日本海海戦までの航跡
- 著者
- 大江志乃夫
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 1999.05.25
- Reader Store発売日
- 2014.12.21
- ファイルサイズ
- 9.9MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (5件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
1999年刊。著者は茨城大学名誉教授。
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日露戦争の掉尾を飾る日本海海戦。この戦いに関し、小説等では劣位・無能の敵役に甘んじるのはロシア・バルチック艦隊である。
尤も、地球一周と同値の長躯遠征の最終幕の露艦隊に、練度も性能面でも優勢だった日本艦隊の勝利は確実で、当該戦局の戦術レベル面で、どこまで完勝し切れるかだけが問題だったとの評も多い。
これ自体は正当な評価だろうが、本書は、このバルチック艦隊のみならず、ロシア海軍の創設の前史から紐解き、海軍というプリズムを通して、ロシアが近代国家として成立していく過程とその紆余曲折とを備に見ていこうと試みるものである。そして、海軍が活躍する場面、すなわち、ロシア外交や戦史と絡めつつ、論じられていく。
正直、日本海海戦の経緯は個人的には今更の感もあり、ここだけの内容ならば、類書も多い中、本書をさして特筆すべきではないのかもしれない。
が、本書は、ピョートル大帝に端を発するロシア近代史の過程を、各皇帝・女帝毎、政策内容に踏み込んで検討していく。これは個人的には新奇な題材であるし、ロシアで何故革命が起きたかという観点でみれば、その前提条件を読み解くこともできるだろう。
もちろん、ロシアの近代国家としての成立過程には、ロシアのシベリア進出が含まれる。当然、ロシア・シベリア進出に伴い、江戸末期日本との間で行われた、交易・通交交渉も本書の射程に含まれることになる。
すなわち、「バルチック艦隊」というタイトル以上の内容を本書は包含することになるのだ。
ここで描かれるは、後発国ロシアの近代化進展の限界と苦闘である。
確かに、対ナポレオン戦争の勝利者・皇帝専制政治の体現・ギリシャ正教の正当後継者という自意識等からは、ロシアに大国意識が生まれたと見て良いのだろう。
しかしながら、その意識が身の丈を越えた過大評価であるならば、様々な無理が生まれるのは必然である。
これが、結果として、ロシアの脱皮・近代化進展を大きく阻害していた実態だ。
本書はその過程の実をつぶさに解読し、ロシアの無理が行き着いた先として、日本海海戦における「バルチック艦隊」の大敗を象徴的に描述するのである。投稿日:2016.12.15
このレビューはネタバレを含みます
歴史を読み解いていくのは大変面白いです。
レビューの続きを読む
そこには様々な意見の相違や
うまくいかなくなる原因、それがたくさん隠されているから。
この本で取り上げられているのはロシアの艦隊なのですが
どうしてこの国が…日露戦争でこうも負けてしまったのか
の解説がなされていますが…もう負け要素しかないんですよね。
対策できる感すら圧倒的不足で急遽調達という
もうフラグが立ってしまっているような有様…
日本は秘密兵器もあり勝ちました。
だけれどもこの終章をご覧いただければ日本もまた
このあとに同じ轍を踏んだのです。
しかも戦争を止める側にいた人でさえ誤謬を犯すありさま。
日露戦争同様、その後の日本の運命もまた
ブーメランのごとくでしたね。続きを読む投稿日:2020.02.02
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