この作品のレビュー
平均 4.4 (9件のレビュー)
-
民主主義というテーマにおいては有名で重要な本らしいので、読んでおくことにした。
第1巻の出版は1835年で、南北戦争前である。主にイギリスの出身者たちがつぎつぎと北米に入植し、開拓し、社会を築き上げて…いく黎明期を描き、分析している。トクヴィルはフランス人なので、フランスの君主制との違いが、折に触れて指摘される。
トクヴィルによると、北米は入植によって生まれた当初から「民主的」であり、住民間に階級差はなく(黒人奴隷やインディアンを除く)、自然発生的な共同体「タウン」において、自治的に倫理や法が築かれていったという。キリスト教をベースにし、そこからタウンみずからが、<掟>を制定していったのである。そこで、ホーソーンの『緋文字』に描かれたあの街、あの掟、あの「罰」が生まれたわけだ。
トクヴィルの合衆国民主主義の分析は、たぶん当時としては画期的なものだったろう。ただし、現在の視点から読むと首肯できない点もあるが。
対等な人間たちのあいだでの<多数者>が実質的に政治を動かしていくという民主主義ルールは、ともすれば世論という名の「衆愚」の醜悪をさらけだす危険があると私は思うのだが、トクヴィルはそこまでは言ってない。アメリカ合衆国の民主主義を最高のものとして語っているわけではないが、その価値を認めてもいる。なかなかに冷静な見方で、多義的に捉えている。
第2巻(岩波文庫ではさらに上下に分かれる)はさらに突っ込んで民主主義について考察するようなので、楽しみだ。続きを読む投稿日:2013.03.17
第1巻下では本書の中心テーマである「自由」と「平等」のパラドクスが本格的に論じられる。トクヴィルは民主主義の基本的な価値観を「平等」とみる。これはフランス革命が掲げた三大理念の一つだが、「平等」の進展…が社会における「自由」の基盤を侵食することへの危機感がトクヴィルに本書を書かせたと言ってよい。革命は「平等」を希求して王権を打倒したが、実は王権こそが「平等」の推進者であった。王権は中央集権化をはかる過程で、大方の貴族階級と彼らが構成する中間団体の特権を剥奪し、王権という頂点を除いて、かなり「平等」な社会を革命以前に既に実現していた。このことを看破したのがトクヴィルの今一つの名著『旧体制と大革命』である。王権に寄生しながらも王権を牽制し得る貴族階級は、「専制」に対して「自由」を守る防壁であったが、「平等」を至上価値とする民主主義は「専制」と親和性が高い。したがって、より一層の「平等」を求めて容易に「多数者の専制」に転化し得る。
多数者が優位を占める社会では個人の卓越性は顧みられず凡庸が支配的となる。誰もが他人のことを気にかけて、他人に似ることで安心を得る。知らず知らずに 「自由」は蝕まれていく。さりとてトクヴィルは「自由」を擁護するために貴族階級を復活せよと主張するのではもちろんない。彼が「自由」を守る工夫としてアメリカ社会に見たものは、行政における地方分権、既成事実や慣習を判例として重んじる法律家精神、市民に政治意識と社会に対する義務感を植え付ける陪審制などである。かつての貴族階級に代わり、こうした諸々の制度や風習が、中央集権的国家から「自由」を守る防波堤となり得ると考えたのである。
後半ではアメリカ社会におけるインディアンと黒人の地位が論じられるが、ここでも「平等」意識についての凍りつくようなリアルな観察眼に瞠目させられる。奴隷制が存続していた南部諸州のほうが白人は黒人に愛着を持ち、黒人は白人の支配を当然のこととして受け入れる。奴隷制を廃止した北部では黒人ははるかに非人間的な扱いを受け、白人を羨望の眼差しで見つめる。マイノリティーが社会の中で権利を認められるようになればなるほど、彼らへの差別は激しくなるという逆説だ。絶対的な「不平等」より中途半端な「平等」のほうが社会に深い亀裂を生むというのは、綺麗ごとでは済まない人間の悲しい性なのかも知れない。ちなみに評者が参照した英訳版(抄訳)ではこの部分はカットされている。この一事をもって断定できることでは勿論ないが、アメリカにおけるトクヴィル受容の一面性を象徴しいているようにも思われる。続きを読む投稿日:2023.12.29
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。