大衆の反逆
オルテガ・イ・ガセット(著)
,神吉敬三(訳)
/ちくま学芸文庫
作品情報
一九三十年刊行の大衆社会論の嚆矢。二十世紀は「何世紀にもわたる不断の発展の末に現れたものでありながら、一つの出発点、一つの夜明け、一つの発端、一つの揺籃期であるように見える時代」、過去の模範や規範から断絶した時代。こうして、「性の増大」と「時代の高さ」の中から《大衆》が誕生する。諸権利を主張するばかりで、自らにたのむところ少なく、しかも凡庸たることの権利までも要求する大衆。オルテガはこの《大衆》に《真の貴族》を対置する。〈生・理性〉の哲学によって導かれた予言と警世の書。
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商品情報
- シリーズ
- 大衆の反逆
- 著者
- オルテガ・イ・ガセット, 神吉敬三
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま学芸文庫
- 書籍発売日
- 1995.06.07
- Reader Store発売日
- 2014.07.29
- ファイルサイズ
- 0.3MB
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この作品のレビュー
平均 4.1 (69件のレビュー)
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両大戦間に新聞投稿された「大衆」についての論考を1930年にまとめて刊行されたもの。主にヨーロッパの停滞が指摘され始めた時期に、ヨーロッパの現状と将来への警句として熱く訴えかけた作品となっているが、そ…の核心部分は現代日本社会への批判の書としても引き続き有効と思えるほど示唆に富んでいる。
19世紀ヨーロッパでのデモクラシーと科学技術により形成された「文明」である近代社会は、かつて少数な支配者層しか享受できなかった利器を大衆にもたらした。こうした文化、生活水準、財産の均等化にみられる歴史的水準の向上は、「時代の高さ」「生の増大」と表現できるが、一方において過去規範から断絶し水準上昇過程も知らない世代、大量の「大衆」を生みだした。
そうした「大衆」は、自らの権利を主張することしかせず、自らの生の方向性を決めることもせず、自分が存在する高度で豊かな環境はあたかも自然に与えられたものと錯覚し、それを生み出し維持してきた才能に感謝することもせず、自分より優れた者に耳を貸さず、不従順で自己閉塞的な「未開人」であるという。また、「大衆」は人間社会における諸手続や規範、礼儀、正義、道理などを切り捨て、「直接行動」(=暴力など)をすぐに選択してしまうといい、こうした愚者は現在の位置に安住するため、「バカは死ななければ治らない」と厳しく処断するのである(付け加えていえば、科学者の専門バカ化も「大衆」化だとする)。そしてその「大衆」に支配される近代社会は、「慢心しきったお坊ちゃん」の時代だというのである。
こうした「大衆」が社会的権力を持ち支配することは危険であり(=大衆の反逆)、少数の質が高い「真の貴族」(門地という意味ではなく)が社会の方向性を指し示す社会を対局に置く。ここでオルテガが提示した「大衆の反逆」からの脱出の処方箋は、「歴史意識」を再生した上で「時代の高さ」に合った社会的生の形式の選択、具体的には未来への共通計画を共有する「国民国家」の創出、当時席巻していたボルシェヴィキズムでもファシズムでもない、ヨーロッパ統合国家を提唱するのである。
当時のスペイン社会の停滞から、政治活動にも力を込めたという哲学者オルテガらしい現代社会への鋭い警鐘と将来へ向かうべき方向性の熱弁であったと思う。現代社会にも思い当たる事象をいまだ多分に含み、また、結果としてボルシェヴィキズムとファシズムの淘汰、ヨーロッパ連合(EU)の誕生も視野に入っていたその論考は、「歴史」を過去のものとせず未来への方向性を示すものとしたオルテガの、哲学にて社会牽引する意識を強烈にあらわすものと言えるだろう。(ただし、ヨーロッパの停滞が世界の支配層を失くしたが、それに代わるものはアメリカ合衆国でもソビエト連邦でもなく、ヨーロッパ統一国家であるという文脈であり、先鋭化すると国家の個人への過大な介入という方向性を持ちかねない危うさも感じる)
「大衆」の基本性質については、現代人とりわけ現代日本人が読んでも思い当たることが多くあるのではないだろうか。身近で例えて恐縮ではあるが、このブクログでのいろいろな評価、特に歴史的著作物への極端に低い評価に出会うと、オルテガのいう「大衆」の格好の適用例ではないかと感じる。当然ながら主観の入らない評価やレビューはあり得ず、そこはどのように表現・評価しても全く自由であるのだが、それを良いことに歴史的時間軸の現地点でのみにしか立脚せず、己の現在の理解力でのみ判断している「大衆」評価は苦々しく思う。過去より蓄積されてきた英知に敬意を払っても自らを貶めることにはなるまい。だが逆に、そのような評価・レビューがまだ少数であり、著作物に真摯に向き合っているレビューが多いことも一方にある限りにおいて、このブクログでの集合知を信じる自分としては、全体としてそれなりの評価水準になっていることに少し安心感も持っている。「大衆」からの脱却は個人の意識の課題でもあり、現代を生きる「個人」として真摯に意識されるべきだろう。続きを読む投稿日:2013.09.23
メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1759734326948958455?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw
投稿日:2024.02.20
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