落語の履歴書 語り継がれて400年(小学館101新書)
山本進(著)
/小学館101新書
作品情報
落語史の泰斗が描く、話芸400年の軌跡!
「落語ブーム」と言われはじめて7、8年。中堅・若手落語家のなかにも、将来が楽しみな逸材が目立つようになりました。落語の前途は安泰に見えますが、果たしてどうでしょうか。
落語は、演じ手だけで成り立つ芸ではありません。いつの時代も、落語には必ず聴き手がいて、聴き手の感覚が変わることで、落語そのものも変わってきました。落語には、「優れた聴き手」もまた、不可欠なのです。
本書では、芸能史研究60年という著者が、戦国末期から現代まで、約400年の落語の歩みを一望。豊富な資料をもとに、「落語のようなもの」の誕生と発展、圓朝による「近代落語」の成立などを平易に解き明かします。さらに、いつも話題を呼ぶ「真打制度」の変遷や、人情噺/滑稽噺の精確な区分、寄席の看板の種類と意味など、長年のファンにも興味深いコラムを満載。笑いを主体としながらも、ただ笑わせればいいというものでもない、伝統を背負った話芸の深みに触れることができます。
昨今のブームで落語にハマった人から、ホール落語の常連さんまで、すべての落語ファン必携、座右の落語史です。
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商品情報
- 著者
- 山本進
- 出版社
- 小学館
- 掲載誌・レーベル
- 小学館101新書
- 書籍発売日
- 2012.10.06
- Reader Store発売日
- 2012.10.19
- ファイルサイズ
- 4.1MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (1件のレビュー)
-
「落語の履歴書」山本進さん。小学館。2012年。
これまた、ついふらっと買ってしまった、「落語雑学本」。申し訳ないけれど大きな期待もせずにふらふらっと読みました。
まあつまり、駆け足の「落語通史」で…す。
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毎度思うことは、「秀吉の話し相手が噺家の元祖だ」とか、「江戸初期のだれだれが始めた」などなど話はあるんですが、どうもなんだかあまり面白くない。
どうして面白くないのだろう?と考えてみたのですが、まずは落語という産業は、歌舞伎など演劇に比べると、とっても個人プレーだし、そんなに大きな産業にならない。だから、その利権や名声をめぐって政治的な暗闘だとかドロドロの人間ドラマ、にならないんですね。なにしろ、どれだけ名門だろうが御曹司だろうが、口座にあがれば誰も頼れない。道具だって座布団一枚、センス1本。脇役や一座がいるわけでもないし、結局オモシロくなかったらハイそれまでよ。それに、どれだけ受けたって、一人がしゃべるだけですから、そんなにオオバコでは興行できません。それにみかけはどうやっても地味なので、世間が雪崩を打つような大流行、というのは起こらないんですね。
まあだから、歴史という物語に必須の欲と色とのせめぎあい、みたいな人間模様が一切記録に残っていませんね。それに比べたら、歌舞伎の歴史なんて、目が眩むばかりにまばゆいエンターテイメント。奪い合い、憎しみ合い、果ては殺人だって辞さない華麗なる歴史がありますものね。
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…って、いきなり腐しても始まらないンです。
今回この本を読んで、「なるほどなあ、面白いなあ」と思ったのは、「古典落語」っていうのは、実はそれほどの「古典」でもないんだな、という感覚でした。これは、通史で読んだおかげですね。
2017年現在、「古典落語」って言われている噺は、そりゃ江戸時代からあったものもあるンですが、実はほとんどが、「幕末〜明治」に作られたんです。
もっと厳密に言うと、それ以前からあった噺も、ほとんどがこの時代にチューンアップされています。後半がバッサリなくなったり、悲惨なオチが滑稽話になったり、物語としての辻褄が直されたり…。
一方で、実は古典落語を聞けば分かるんですが、完全にゼロからこの時代に作られた噺も多いです。よくよく聞くと、ちょっとした世相や、通貨単位とか、江戸なのか東京なのかとか、汽車が出てくるとか…などなど。
それで更に言うと、明治に作られた噺が多いということは。明治時代っていうのは、江戸250年間、がまんにがまんをして鎖国で拒んでいた海外文化・西洋文化が、堰を切ったかのように日本に入ってきた時代です。例えば小説や物語も、怒涛のように翻訳されて入ってきました。それを受けて、明治時代の名人が、「モーパッサンのあのお話を、江戸時代に置き換えて落語にしよう」みたいにして作った噺もあるんですね(「名人長二」。志ん生さんで聞きましたが、名演でした)。きっと、もっともっと多くの噺がそうやって粗製乱造され、力のあるもの、あるいは運の良い噺が今に残っているのだと思います。
ただ、いずれにせよ、それらが出来上がったのは、まあ、仮に明治中頃、1900年くらいだとします。
だとすると、まだたったの100年ぽっちなんですね。
まして、「古典のほうが新作よりも品格があるんだ」みたいな言説は、それこそ1950年代から、もうちょっと前からだってあった訳です。その頃なんて、古典って言ったって、たかだか50年。つまりは「明治に作られたものが良いンだよ」というだけのことだったんですね。
そう考えると、昨今で言うと、ベテランで言うと故柳昇から三枝、円丈、桃太郎。更には志の輔、昇太、喬太郎、白鳥…と、延々続く新作落語作家の仕事っていうのは、ものすごくハッキリと、落語という娯楽を盛り上げていく両輪の一つ、いやそれが言い過ぎなら、三輪車か四輪車の車輪の一つなんですね。小朝さんも、新作も意欲的にされていますね。
なにしろ、寄席を愉しめばすぐに分かることですが、やっぱりそれぞれの噺家のまくら話っていうのも愛嬌含めて楽しみなんですね。そして、まくらっていうのは要するに、とりとめもありませんが新作落語の一環にほかなりません。
(だから、そういう意味では古典派の代表のような小三治さんは、実は新作の巨人とも言える訳です。アノ人は、無論古典を演じてもすごいんですが、場合によっては1時間でも2時間でもまくらが伸びちゃって、それはそれで圧倒的に面白いんですから)
うければけっこう、というだけの、「低予算舞台芸」から始まったかもしれないわけですね。歴史で言うと。少なくとも始まった当初は、今で言うところの「漫才」「漫談」でしかなかったはずです。
それが、なんだかゲージュツになっていって、天皇家の前で演じました、とか、文化勲章、だとか人間国宝、だとか、そういう、枠組みや型を持ったステイタスのある芸能になっていく。それはそれで悪いことではないんですが、その辺りがどうして起こったのか、というのは、実は歌舞伎と同じで明治時代に権力者にヨイショして保護されたことから始まっていまして、決して天然自然の出来事でもありません。人為的です。
ただそれはそれで、素敵だと思うのです。
実は、大爆笑できる落語が少ないのと同じくらいレアですが、笑いなんかまったくなくても、泣けたりジンと来ちゃう、そんな落語もあります。しかも、それが江戸明治という時代風景も彷彿と楽しませてくれる。
そういう技芸的な落語も良いなあ、と、思いながら、型破りにとにかく面白くて、とにかく大人なんかよりも若い人を引きつける、そんな新作も、浮き沈みしながらもライブを中心に盛り上がり続けてほしいなあ、と思いました。続きを読む投稿日:2017.10.04
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