「反原発」の不都合な真実
藤沢数希(著)
/新潮新書
作品情報
3.11以降、原発を絶対悪と決め付け、その廃絶こそが「正義」という論調がマスコミでは吹き荒れている。しかし、この世にリスクのない技術は存在しない。原子力を代替するはずの「自然エネルギー」の実力のみならず、転換するリスクや懸念材料を冷静に見つめるべきではないだろうか。そんな感情論を超えた議論のために、原子力技術、放射線と健康被害、経済的影響を検討し、将来を見据えたエネルギー政策を提言する。
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商品情報
- シリーズ
- 「反原発」の不都合な真実
- 著者
- 藤沢数希
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 数学・物理学・化学
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮新書
- 書籍発売日
- 2012.02.17
- Reader Store発売日
- 2012.08.17
- ファイルサイズ
- 2.6MB
- ページ数
- 206ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (89件のレビュー)
-
世の中は「脱原発で自然エネルギーへ」等というスローガンで溢れていると思っています。今度の総選挙でも、エネルギー関連が争点になるとすれば「原発賛成」ということを言える候補者は殆どいないと思います。かつて…郵政選挙で反対の立場をとることが本当に難しかったように。
この本は、原子力を含めた理論物理学を究めた経歴をお持ちである藤沢士が、原子力が他の発電方法(石炭や石油火力、自然エネルギー等)と比較して、実際に比較できるデータを用いて解説しています。
特に、自動車の排ガスや石炭火力発電による大気汚染で115万にもの人が死亡している(p21)のには驚きました。
また、日下氏が以前に、現在のウラン型よりもトリウム型の原子炉を推奨していましたが、その具体的な理由(今まで普及しなかった理由も含めて)が明確になって(p197)私としては嬉しかったです。
このような考え方を本にして世に問うことができる日本は、まだ捨てたものではないと思いました。
以下は気になったポイントです。
・911事件後にテロを恐れるあまり飛行機を避けて自動車でアメリカ国内を移動した人達が、最初の1年間で1995人も路上で事故死している。(p13)
・単位エネルギー当たりの事故や公害による犠牲者の数を比べるべき、1テラ・ワット・アワー当たりの犠牲者数で比較する、原子力による発電は、化石燃料による発電より 1000倍程度安全ということになる(p14)
・1969-2000年の間に、世界で起こった莫大な数ののプラント事故を調査したら、原子力の数百倍の死亡者が出ている(p17)
・大気汚染による死亡者は年間115万人だが、半分は自動車の排ガス、発電所からの大気汚染物質は3割程度、これはWHOによる統計、中国では石炭火力で80%発電して毎年の40万人死亡、日本では3-5万人程度死亡、3割程度が火力発電所によるもの(p21、37、40)
・化石燃料において、石炭が特に危険、次いで石油、一番安全なのが天然ガス、石炭は危ないが、最も安価で経済効率が良い(p24)
・福島第一原発のメルトダウンでは未だに放射能による死者は出ていないが、決壊したダムでは既に数人の死者が出ている(p43)
・年間3万人を超える自殺者、5000人以上の死者、7万人以上の被害者がでる自動車事故、20万人を超えるタバコによる健康被害は大きすぎてニュースにならない(p46)
・原爆の生存者に関する調査では、200ミリシーベルト以上では癌とのリスク向上が明確になったが、100ミリシーベルト以下では全く見つからなかった、更に重要なポイントはこれらは一度に浴びたもの(p52,56)
・チェルノブイリ事故では、20年間の調査結果により、4000人の甲状腺がんが見つかり、現在までに15人死亡した(p62)
・事故直後は放射性ヨウ素の内部被ばくが最も危険、放射性ヨウ素は半減期が8日と短く、数か月するとほとんど消える、日本政府がすぐ出荷停止にしたのは良い対応といえる(p65)
・世界の高放射線地域(年間10ミリシーベルト)住民に健康被害は全く見つかっていない(p67)
・一時は100ユーロを超えていたQセルズの株価は、2011.12で 0.5ユーロ、スペインは財政破綻したので、太陽エネルギープロジェクトへの補助金がカットされたため(p75)
・自然エネルギーが世界で普及しない最大の理由は、太陽光・風力のエネルギー密度(同じ体積から絞り出せる電気エネルギー)が極めて小さいから(p79)
・日本は海外から燃料を年間20兆円程度輸入している、日本の税収が30-40兆円なので巨額、GDPの4%に相当する(p94)
・原発を減らした場合、火力発電所で作られた電気で走る電気自動車の魅力は無くなる、CO2を排出しながら作られた電気が、電力ロスしながら送電線を通って、蓄電池に充電される(p103)
・アメリカと韓国の電気代は安い、石炭比率が高いことと、原発稼働率が高いことが原因(p129)
・アメリカはスリーマイル島事故以来、50基分の新規建設に匹敵するパワーアップをしてきている、また稼働率も6→9割にこの30年間程度で上げてきている(p131)
・PWR(加圧水型炉)は、核燃料に触れる水系統、タービンを回す水系統を分離するので、メンテナンスは楽になるが、設計は複雑になる、今回福島で事故を起こしたのはBWR(沸騰水型)(p149)
・日本では中間貯蔵施設の建設が遅れたので、原子炉建屋内の使用済核燃料プールで、保管してきた(p161)
・原発をやめると、電気を生まない原発の維持費を払いながら、その分の電気を確保するための化石燃料を買う必要が生じる(p161)
・日本の発電量の3分の1を担う原発が排出する核燃料廃棄物は年間1000トン、化石燃料を燃やすことにより排出されるCO2は気体で年間12億トン、環境省によれば様々な産業廃棄物を年間4億トン処理する必要があるとしている(p165)
・日本中の蛍光灯や発熱電球を全てLEDに置き換えれば、原発13基分の節電効果あり(p175)
・シリコンは不純物の種類とその濃度をコントロールすることで、P型やn型半導体にもなる(p178)
・ダライラマも、脱原発に反対した、また自然エネルギーにも懐疑的な見方をした、高価なエネルギーは世界の多くの貧しい人々には利用できないから(p183)
・日本の電力が安定供給できたのは、日本の電力会社が、夏のたった数日間のために過剰な発電設備を持っていたから(p187)
・スマートグリッドは、欧州では、主に風力発電所の電力をうまく利用するための電力系統のことを指し、アメリカでは不足する電力供給力に対して、需要をうまくコントロールするための電力系統のことを指す(p190)
・2010年12月に、中部電力の四日市火力発電所の変電所で不具合が発生し、0.07秒程度電圧が低下したば、東芝のNAND型フラッシュメモリ工場が影響を受けて、月額100億円程度の損失が出た(p192)
・最新の軽水炉(第三代軽水炉:AP1000)は、あらゆる電源を喪失しても重力により原子炉上部に貯められている冷却水が自動的に循環するもので、福島の事故は起きない(p194)
・トリウム原子炉の最大の特徴は核燃料が液状なので、メルトダウンがおきない、空気と触れるとガラス状に固まるので、ウラン原子炉よりも安全、プルトニウムをトリウム液体燃料の核分裂を引き起こす際に使うので、ウラン型原子炉の核燃料廃棄物の処理にも役立つ、これが世界で採用されなかったのは、原爆に仕えるプルトニウムが生成されないので(p197)
・世界の原子力関係者が驚いていることに、福島第一原発の1-4号機について、原子炉への冷却水の循環を確立して、ロボットを駆使して内部燃料を取り出して、正常に廃炉しようという目途がたちつつある(p201)
・911の損失は合計で2兆円(260億ドル)、2993人であったが、その復讐として戦争を開始して、2011年9月11日までに、250兆円(3.3兆ドル=日本の総税収の6-8年分)の経済負担、米兵だけで 6000人以上死亡、民間人は22万人程度が死亡(p203)
2012年11月26日作成続きを読む投稿日:2012.11.26
3.11の東日本大震災後、反原発が正義となり、原発推進派はそれだけで邪悪な存在となってしまった。
マスコミでは、反原発のデモが繰り返し垂れ流され、科学的知識を持ち合わせた専門家の意見は一切取り上げられ…なくなった。
こんな風潮に警鐘を鳴らす一冊となっている。
そもそもの前提として、絶対安全、人間社会に全く害のないエネルギーというのは存在しない。また、現代社会において、私たちの生活にエネルギーは必要不可欠な存在となっている。
この前提をはき違えた感情論が先走りしているのが昨今の反原発論調である。
全く無害のエネルギーが存在しない以上、どのエネルギーがよりましなのかという議論にならざるを得ない。
今の日本では、火力発電が主力で、石炭・石油を燃やしてエネルギーを作り出している。
しかし、火力発電というのは、大気汚染の影響が凄まじい。火力発電・車の排気ガスによる大気汚染が原因で亡くなっている人の数は全世界で、年間100万人もいるというから驚きである。
翻って、東日本大震災の原発事故による死亡者はゼロである。
非科学的な風評被害が深刻なだけであって、実は科学的に危険なレベルの放射能漏れは起きていない。
しかし、当時の民主党政権が原発の稼働をストップさせてしまったために、原発や電力会社への風当たりは一層強くなってしまった。
原発を稼働できないことにより、電力会社は古い火力発電所を稼働せざるを得ない。
しかし、火力発電というのは深刻な大気汚染を発生させるため、原発を稼働させていれば亡くならずに済んだ人が、年間で推定5千人ほど出ると言われている。
環境、人体への影響はもちろん、経済的に最も合理的なエネルギーの選択肢は原発なのである。
電力会社も国もそれを理解しているから、原発を推進してきた。
惜しむらくは、国民の反発を恐れて絶対安全という神話を作り出してしまったこと。
リスクとリターンを当初からきちんと発信するべきであった。続きを読む投稿日:2024.03.24
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