陸軍士官学校の人間学 戦争で磨かれたリーダーシップ・人材教育・マーケティング
中條高徳(著)
/講談社+α新書
作品情報
瀕死のアサヒビールを立て直し、シェアNo.1にまで成長させる過程には、陸軍士官学校の戦略・戦術があった。その「マーケティングとしての兵法」を徹底解説! ●リーダーの大原則「慎独」とは●「他責の打ち合い」を排除すると●指揮官はあえて梯子を外せ●大決起集会で生まれた気づきとは●熱き涙を流しあえる「戦友」を●兵法の究極――、一点集中●ビール業界の常識を覆した奇襲●羊の軍勢が獅子の軍勢に勝つには、ほか
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商品情報
- 著者
- 中條高徳
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社+α新書
- 書籍発売日
- 2010.05.20
- Reader Store発売日
- 2012.06.29
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 208ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (7件のレビュー)
-
タイトルや表紙の写真からすると、陸軍士官学校の生活や教育などの体験記がメインの本であるような感じがするが、実はアサヒビールの歴史の本だったという、なんかイメージからかけ離れる本。アサヒビールが「生」…を打ち出してからのマーケティング戦略に、いかに陸軍士官学校で学んだ兵法を取り入れてきたか、を述べる本。分かりやすいリーダーシップ論。
本書で述べられているマーケティングに関する要点としては、「プロダクト・アウト(企業の論理によるものづくり)から、マーケット・イン(消費者ニーズに応えるものづくり)へ」(p.98)という部分がポイントになってくると思う。.さらに戦略的な部分で印象的なのは、『孫子』にも書かれているという、「自軍の兵力が一つに結集し、相手を分散させ、その一つを攻めれば相手を上回ることになる」(p.37)という部分が印象的だった。また、「真のトップダウン」、つまり「部下の自主性、やる気を引き出すトップダウン」(p.144)、という部分も面白いと思った。「トップダウン型のリーダーであればあるほど、ボトムアップの心が求められる」(p.147)というのは、何とも印象的だ。全体としては、アサヒビールの「勝史」であるので、キリンは強大な敵として描かれ、「商売上手のサントリーの物真似戦略」(p.124)など、同業他社の悪口めいたものもほんの少しだがあるという点で、キリンやサントリーの工場見学は何回も言ったが、アサヒは1回しか行ったことなく、しかもアサヒのスーパードライよりもやっぱり一番搾りやプレモルとかの方が好きなんだよなと思ってしまうおれは複雑な思いがした。という訳でこの本は、ビール好きにも楽しめる内容となっている。(15/06/18)続きを読む投稿日:2015.06.18
・指揮官は高邁なる徳性を備え、部下と苦楽を共にし、率先躬行、軍隊の儀表としてその尊信を受け、剣電弾雨の間に立ち、勇猛沈着、部下をして仰ぎて富嶽の重きを感ぜしめざるべからず(『作戦要務令』)・・・指揮官…たる者、気高く優れた精神を持ちながらも、部下への思いやりを忘れず、皆の手本として尊敬を集め、どんな困難にも率先して立ち向かい、部下に対して富士山のような崇高さと威厳を感じさせなければならない。ただ威張り散らし大きく見せようとしても、誰もついてきてはくれない。自らを律し、周囲に配慮し、苦しいことには率先して対応することにより、真の偉大さ、気高さが身につくもの。優れたリーダーになろうとすれば、部下と共に、組織をよりよい方向へと導く義務がある。
・将たる者、方向を指示し、兵站(へいたん)す(『統帥綱領』)・・・・指揮官は自軍がなすべき事柄をこうと決めたら、それを部下たちにしっかりと伝え、同じゴールに向かってベクトルを合わせるようにさせよ。加えて、戦いに臨む上で必要な物資や情報の出入り口を確保することを怠るな。これを経営に照らし合わせればリーダーたる者、部下に会社やプロジェクトの方向性を明示し、目的達成のために必要な人材や資金、情報の確保に努めなさい、ということになる。
・戦勝の要は、有形無形の各種戦闘要素を総合して、敵に勝る威力を要点に集中発揮せしむるにあり(『作戦要務令』)・・・戦いとは一か所で徹底的に勝利すればいい、そうすれば、おのずと自軍の優位性は全体に波及していく。この「一点集中」こそ兵法の神髄。ものは考えよう。自分よりも強大な敵と戦うときこそ、知略を働かせ、自らの優位性を高めよ。
・リーダーの大原則は「慎独(しんどく)=独り、(身を)慎む」。つまらない人間は、暇を持て余すとろくなことをしない。人格者であれば、誰も見ていない時でも自らの行動を慎み、恥ずべき行いをしないものだ。
・何事にも「流れ」というものがあるが、この流れを掴んだ者にこそ、成功は訪れる。そして、流れに加速度をつけ、大いなる「激流」に変えることで勝利を完全なものにできる。この激流がすなわち「勢い」。『孫子』は戦いにおける勢いを重視している。戦いの要諦とはすなわち勢いであり、勢いのある者がない者に勝つのは自明の理。
・善く戦う者は、これを勢に求めて人に求めず、故に善く人を選びて勢に任ぜしむ。勢に任ずる者は、その人を戦わしむるや木石を転ずるが如し。木石の性は、安ければ則ち静かに、危うければ
則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千仭の山に転ずるが如くなる者は、勢いなり。(巧みに戦う者は、戦いに突入する勢いによって勝利を得ようとし、兵士個々の力には頼らずに、軍隊(組織)を運用する。そこで巧妙に戦う者は、適材適所に人々を配置し、軍全体の勢いに従わせようとする。兵士たちを勢いに従わせる者が兵士を戦わせるさまは、まるで木や石を転落させるようだ。木や石は、平らな場所では安定し静止しているが、傾斜した場所では運動し始める。四角形であれば転がらないが、円形であれば転がり始める。だから兵たちを、千仭の山から丸い石を転がすように仕向けるのが、戦いの勢いというものなのだ。
・「指揮官は状況判断に基づき、適時決心をなさざるべからず。」「為さざると遅疑するとは、指揮官の最も戒むべき所とす。是この両者の軍隊を危殆に陥らしむること、その方法を誤るよりも更に甚だしきものあればなり。」人間ですから、思い切って挑戦した結果、失敗することは多々ある。しかし、失敗から人は何かを学び、「知恵」を身につけ、賢くなる。迷ってばかりで決断もせず、さらには失敗を恐れて何もしない指揮官など、リーダーとはいえない。
・組織のリーダーには決断力が何よりも重要だが、部下も単なる「指示待ち人間」ではいけない。時には自分で判断し、上司の命令を待たずして行動を起こすことも必要。「正しい独断」とは、上司の意図をしっかり汲み取り、判断と実行のスピードを迫られたときにこそ、発動するもの。あくまで会社のためを考えた上で下すアクションこそがビジネスマンにとっての独断。
・用兵の法は、十なれば則ちこれを囲み、五なれば則ちこれを攻め、倍すれば則ちこれを分かち、敵すれば則ちよくこれと戦い、少なければ則ちよくこれを逃れ、しかざれば則ちよくこれを避く。故に小敵の堅は、大敵の禽なり(=競争の原則として、味方の軍勢が敵陣の10倍であれば敵を包囲し、五倍であれば敵を攻撃し、二倍であれば敵を分裂させる。また、自軍と敵軍の数が等しければ戦うが、自軍が敵軍より少なければ退却し、まったく及ばないと分かったら隠れた方がよい。兵が少ないのに強気でいると、大軍に捕らわれてしまうだけである。)すなわち、敵が多ければ多いほど、強ければ強いほど、戦いは避けるべきである、という戒め。
・危急存亡のときに際会するや、部下は仰いでその将帥を注目す。将帥はあらゆる失望悲運を制し、内に堅く信じて冷静明察を失わず、沈着剛毅、楽観を装いて部下の嘱望をつなぎ、その士気を作興して、最後の勝利を獲得することを努めざるべからず(=部下はピンチの時こそ、指揮官に注目する。どんな失望や悲運にも打ち勝ち、冷静さ、ピンチに屈しない心を持たなければならない。さらに部下の士気を下げないように、たとえ内心では焦っていても、表面的には楽観を装う必要がある。ピンチの時こそ、リーダーの決断や明るさが、その後の組織の明暗を分ける)。
・ピンチをチャンスと考える明るい性格の者でなければ、指揮する立場から立ち去れ。
・戦勝は、将帥が勝利を信ずるに始まる。(統帥参考)
・囲師には必ずかき、窮寇には迫ること勿かれ。此れ用兵の法なり(=敵を囲んだら、必ず一か所は逃げ場を作っておき、窮地に追い込んではならない。これが兵を動かすうえでの鉄則である(孫子)。勝者たる者、時には敗者に逃げ道を残しておくことも必要。そうすることで、思わぬ反撃を食らうことを未然に防ぐことができる。
・リーダーに求められるのは、高い知識やスキルだけではなく「人間力」が大切。人間としての幅を広げ、奥行きを深くすることで生まれるもの。つまりは、高い徳の精神と言い換えることができる。
・卒を視ることこと愛子の如し、故にこれとともに死すべし。厚くして使うことあたわず。愛して令することあたわず、乱れて治むることあたわざれば、たとえば驕子の若く、用うべからざるなり(=兵たちを愛すべき我が子のように思い、厳しくも深い愛情で接すると、指揮官は兵士たちと生死を共にできるようになる。しかし、兵を手厚くもてなすだけで、仕事をさせることができず、可愛がるばかりで命令することもできず、でたらめをしていても、それを止めることができなければ、兵は驕りたかぶる子どものようなもの。何の役にも立たないだろう。)本当の勝者とは、躾け、躾けられ、高い徳の精神を磨き上げた者のことをいう。それこそ、組織のトップやリーダーに求められる最大の資質である。続きを読む投稿日:2017.06.05
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