日本の国防 米軍化する自衛隊・迷走する政治
久江雅彦(著)
/講談社現代新書
この作品のレビュー
平均 3.9 (8件のレビュー)
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冷戦の落とし子としての自衛隊の生い立ち、米軍を補完するものとしての自衛隊、日米安保が出来たての頃からどう変わって来たのか、三自衛隊の違い、防衛省の中の構成、2009年まであった参事官制度、票田としての…自衛隊、PKOで自衛隊が出されるようになった背景、武器使用と武力行使とか非戦闘地域とかいった言葉の定義、同盟の証としてのミサイル防衛、普天間問題において解決の「惑星直列」ともいうような好機を自ら叩き潰した鳩山政権、とキーワードを抜き出すとこんな感じですか。日本の内政、外交が国防を巡ってどう動いて来たかを追いかけてます。
自衛隊が冷戦期は米軍の補完だったこと、そしてミサイル防衛とかの分野でどんどん組み込まれてるって論旨には確かになと思うのと同時に一国で一国を守るのが困難な現代においてはしょうがないとも思う。ただ米国の意向でしか動けなくなるとしたらそりゃマズいが。
改めて自衛隊≒防衛省の生い立ちを知って勉強になりました。続きを読む投稿日:2012.10.30
防衛省・自衛隊という組織、自衛隊の海外活動、北朝鮮のミサイル問題、普天間基地問題、中国との関係、米国との関係など、今日の安全保障に関わる論点についての解説。
東日本大震災の際の自衛隊と米軍の共同作戦…は、周辺事態にも対応できる陣容だった。
外務省は、湾岸トラウマ、また安保理常任理事国入りを目指す観点から国際貢献のアピールとしてのPKO派遣を推進し、防衛省などとの軋轢を生んでいる。防衛省は任務遂行のための武器使用が認められていない現状での、政府が解禁したPKF本体業務への参加には否定的。
3自衛隊の個性に着目した説明も分かり易かった。国際貢献に積極的な海自と、慎重な陸自など。
米国の核抑止戦略の変化が日本のMD導入と関連している。冷戦時代の米国は相互確証破壊という、行為に伴う代償を相手に予見させることにより行為を踏みとどまらせる懲罰的抑止をとってきたが、合理的判断が期待できない、北朝鮮のような国家の登場や、守るべき領土や国民という、行為の代償となるものを持たないテロリストの脅威から、米国の抑止戦略は、相手に行為の目的が達成困難なことを予見させて行為を思いとどまらせる拒否的抑止へと転換した。この戦略に基づき、日本はアメリカのミサイル防衛システムに組み入れられた。
MD以外でも、自衛隊と在日米軍との司令部機能の統合であったり、そもそも日本の対潜能力自体が、米空母が日本近海で活動できるようにするためにもとめられたものであったりと、自衛隊の米軍化は進んでいる。
アメリカ国家情報会議が発表した2025年の世界情勢を予測した「グローバルトレンド2025」というレポートのなかで、日本は、日米中の政策によって4つのパターンをとるとされた。
第一は、中国のさらなる軍事力・影響力の拡大に伴い、日米は接近し、日本はミサイル防衛能力や対潜能力をさらに強化するというもの。
第二は、経済成長に失敗した中国が、不満をそらすために、より敵対的となり、それに対抗するため、日本は米国の支持のもと、軍事力を強化し、地域フォーラムを形成するというものである。
第三は、米国の没落により日中が接近するパターン。
第四は、米中接近により取り残された日本は中国に接近するというもの。
いずれにせよ、今後の日本はより安全保障に対する不安が高まっていることが予想されている。
第一パターンに関しては、日米韓・日米豪の安保協力などが想起されるし、第三パターンも、米国のリーダーシップの低下は如実に表れてきている。第四パターンは、中国が、「太平洋分割」を持ちかけたのに対し、後の米中首脳会談で、オバマが、「太平洋には両国を受け入れるだけの余地がある」という趣旨の発言もあり、懸念が高まる。
集団的自衛権行使容認は、日米共同開発の迎撃ミサイルの完成が近いことが関連している。日本上空を飛翔する弾道ミサイルを撃墜する能力を手にしてしまう以上、その能力をどう行使するかという議論は避けられない。
普天間基地の辺野古移設や集団的自衛権行使容認の閣議決定、武器輸出三原則を見直した防衛装備移転三原則など、出版から数年ですでに状況が変わりつつある分野も少なくない。とくにここ最近は国防分野は情報の賞味期限が早いので、注視し続けていくことが必要だと感じた。
最終的なテーマは、変わりゆく国際情勢の中で、日本の国防は米国との関係でどうなっていくのかということ。自衛隊は米軍のフランチャイズ化するのか、米国からの有事の際の関与は期待できるのか。続きを読む投稿日:2014.10.12
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