- 最新巻
考えるヒント4
小林秀雄(著)
/文春文庫
作品情報
文学史上の奇蹟と言われ、「途方もない歩行者」と評されるフランスの詩人アルチュール・ランボオ、日本の現代詩を語る上で忘れ得ぬ抒情詩人・中原中也。ランボオがこの著者にあたえた啓示が詩人の言葉を再生させ、また、中原と特異な交流を持ったうえでの洞察がいきいきと描かれる。詩人二人との関わり合いから生まれた著者若き日の凜然たるエッセイに、ランボオ詩作品の訳業の一部を収めた魅力的編集の「考えるヒント」シリーズ第四弾。
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商品情報
- シリーズ
- 考えるヒント
- 著者
- 小林秀雄
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 1980.09.25
- Reader Store発売日
- 2011.11.25
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 224ページ
- シリーズ情報
- 既刊4巻
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この作品のレビュー
平均 4.7 (3件のレビュー)
-
(2004.05.10読了)(2001.03.09購入)
副題「ランボオ・中原中也」
「新・考えるヒント」を読むための第3弾。「地獄の季節」岩波文庫、を購入し、読んだのに「考えるヒント4」の後半は、「…付録・ランボオ詩抄」になっており、「地獄の季節」「飾画」のほかに「酩酊船」「渇の喜劇」「堪忍」が掲載されている。岩波文庫は不要だった。
●ランボオ
ランボオの経歴は、「地獄の季節」のレビューに入れたので、そちらを参照。
小林秀雄がランボオについて述べている内の気になるいくつかを書き留めておこう。
「ランボオ程、己を語って吃らなかった作家はいない。痛烈に告白し、告白はそのまま、朗々として歌となった。吐いた泥までが晃めく。彼の言葉は常に彼の見事な肉であった。如何にも優しい章句までが筋金入りの腕を蔵する。ランボオ程、読者を黙殺した作家はない。彼は選ばれた人々の為にすら、いや己の為にすら歌いはしなかった。ただ歌から逃れる為に、湧き上がってくる歌をちぎりちぎってはうっちゃった。その歌声は無垢の風に乗り、無人の境に放たれた。彼ほど短い年月に、あらゆる詩歌の意匠を凶暴に圧縮した詩人はいない。人々は彼と共に、文学の、芸術の極限をさまよう。この秘教的一野生児のものした処には、その決然たる文学への離別と、アフリカの炎熱の下の、徒刑囚の様な黙々とした労働の半生が、伝説の衣を纏いつけ、彼の問題は日に新たであるらしい。」
ランボオの中に何かが入り込み、彼の体を借りて詩を排出させて、3年でどこかへと去って行ったのだろうか。
ランボオと小林秀雄の出会いについて
「僕が、初めてランボオに、出くわしたのは、23歳の春であった。その時、僕は、神田をぶらぶら歩いていた、と書いてもよい。向うからやって来た見知らぬ男が、いきなり僕を叩きのめしたのである。僕には、何の準備もなかった。ある本屋の店頭で、偶然見つけたメルキュウル版の「地獄の季節」の見すぼらしい豆本に、どんな烈しい爆薬が仕掛けられていたか、僕は夢にも考えてはいなかった。而も、この爆弾の発火装置は、僕の覚束ない語学の力など殆ど問題ではないくらい敏感に出来ていた。豆本は見事に炸裂し、僕は、数年の間、ランボオという事件の渦中にあった。それは確かに事件であったようにも思われる。文学とは他人にとって何んであれ、少なくとも、自分にとっては、或る思想、或る観念、いや一つの言葉さえ現実の事件である。と、はじめて教えてくれたのは、ランボオだった様に思われる。」
文学は、小林秀雄にとって、現実の事件でありうる。と、気付かせたのは、ランボオである。それぐらい強い衝撃を与えた。
●中原中也
中原中也は、十八歳の時に同棲中の長谷川泰子と共に上京し、小林秀雄と知り合う。長谷川泰子は、小林のもとへ走り、二人の関係は途絶える。中原が三十歳の時、鎌倉に引っ越してきて、小林を訪ね交際が復活するが、まもなく、中原は小林に「在りし日の歌」の出版を託して死んでしまう。小林は、三角関係の話は、書きたくないという。
「中原の心の中には、実に深い悲しみがあって、それは彼自身の手にも余るものであったと私は思っている。彼の驚くべき詩人たる天資も、これを手なずけるに足りなかった。彼はこの不安をよく知っていた。それが彼の本質的な抒情詩の全骨格を成す。彼は、自己を防禦する術をまるで知らなかった。」
小林秀雄は、「汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる」を引用しながら、上記のように述べている。「汚れちまった悲しみに」は「汚れっちまった悲しみに」なのに。「れ」と「ち」の間に「つ」がついているのに。
☆小林秀雄さんの本(既読)
「私の人生観」小林秀雄著、角川文庫、1954.09.15
「無常という事」小林秀雄著、角川文庫、1954.09.20
「ドストエフスキイの生活」小林秀雄著、角川文庫、1955.08.20
「ゴッホの手紙」小林秀雄著、角川文庫、1957.10.30
「モオツァルト」小林秀雄著、角川文庫、1959.08.10
「モオツァルト・無常という事」小林秀雄著、新潮文庫、1961.05.15
「対話 人間の建設」岡潔・小林秀雄著、新潮社、1965.10.20
「近代絵画」小林秀雄著、新潮文庫、1968.11.30
「考えるヒント」小林秀雄著、文春文庫、1974.06.25
「考えるヒント2」小林秀雄著、文芸春秋、1974.12.10
「考えるヒント3」小林秀雄著、文春文庫、1976.06.25続きを読む投稿日:2009.11.17
冒頭の一文が好きで好きで、昔諳んじた。中原中也の思い出は、小林秀雄がとても身近に感じられる。とても辛くてとても好き。名著。
投稿日:2020.06.15
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