日本語教室
井上ひさし(著)
/新潮新書
作品情報
井上ひさしが生涯考え続けた、日本と日本語のこと。母語と脳の関係、カタカナ語の弊害、東北弁標準語説、やまとことばの強み、駄洒落の快感……溢れる知識が、縦横無尽に語られる。「日本語とは精神そのもの。一人一人の日本語を磨くことでしか、未来は開かれない」――母校・上智大学で行われた伝説の連続講義を完全再現。日本語を生きるこれからの私たちへ、“やさしく、ふかく、おもしろい”最後の言葉。
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商品情報
- シリーズ
- 日本語教室
- 著者
- 井上ひさし
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮新書
- 書籍発売日
- 2011.03.17
- Reader Store発売日
- 2011.09.02
- ファイルサイズ
- 1.5MB
- ページ数
- 186ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (74件のレビュー)
-
本書は、日本語そのものを学ぼうというのではありません。
井上ひさしが考える、日本語の現状をさらっと把握して、「日本語とはどういう言語か」ということを考える書です。
気になったことは以下です。
・1…5歳を過ぎるとどんな言葉も覚えることができない
・母語は道具ではない、精神そのものである
・日本は、いつもそうです。世界で一番強い文明を勉強します。中国そして、欧州、戦後はアメリカです。
・日本には、自分の住んでいるところは大したことなくて、優れたものは他にあるという、そういう精神構造はいまだにあります。
・たいへん便利で、大きな文明が入ってくると、そこにもとからあったものはなくなっていって、大きな文明に吸収されていく、言葉も然り
・言葉が自然に消えていくということはありません、必ず何かの、社会的、経済的、政治的圧迫で消えていくのです
・日本語の文法はどこから来たのか。ウラル・アルタイ語族、つまり、トルコ語と、日本語がよく似通っていることから、どうやらウラル山脈あたりから、シベリアを通ってやってきたのではないかということになっています。
・ほんとうに日本語はたいへんですよね。やまとことば、漢語と、外来語の3つを覚えなければなりません。
・日本語の音韻体系は簡単で完結で、非常な合理性をもっています。五十音図を思い出してください。あれで日本語の音全部を云いつくしているわけですからすごい
・近代国家にとって必要なものは、少なくとも3つある。貨幣制度、軍隊制度、そして、言葉の統一です
・いずれにせよ、明治国家は言語を統一しようとして、標準語をつくろうとしました
・逆にいうと、まだまだ日本語は完成されていないのです、また、そもそも日本語というものがあること自体おかしいともいえます
・日本語では音節が子音で終わることはありません、かならず母音で終わります
・日本人にはもう文法は必要ない
・一般に「口語文法」というときの「文法」というのは、だれか整理し組織立てたものなのか、わからない。これはつまり、私たちひとりひとりそれぞれの文法があるということです
・私たちは日本語の文法を勉強する必要はないのです、無意識のうちにいつのまにか文法を身につけていますから。
目次
はじめに
第1講 日本語はいまどうなっているのか
第2講 日本語はどうつくられたのか
第3講 日本語はどのように話されるのか
第4講 日本語はどのように表現されるのか
井上ひさし著書・単行本目録(抄)
ISBN:9784106104107
出版社:新潮社
判型:新書
ページ数:192ページ
定価:720円(本体)
発売日:2012年04月10日 14刷続きを読む投稿日:2023.05.17
本書は上智大学のOB会「ソフィア会」主催の「日本語講座」を書籍化したものである。この講座の聴講料は留学生の奨学金に充てるとのこと。
2015年に本書を購入し一読したが、今回改めて読み直した。
著者の井…上ひさしはものを書き始めると、悪鬼のようになり、妻に暴力を振るった。それは、文章を書くことにナーバスであったからに違いない。
例えば本書の冒頭に、
「母語は道具ではない。精神そのものである」
「小学校で英語を教えようということになったときに、僕は本当に危ないと思いました。すべて、そうやって、言葉は消えていくのです。」
とあり、日本語に対して思索を重ねてきたことが感じ取れる。
さらに読み進めていくと、仕事柄、膨大な研鑽を重ねてきたことが分かる。著者の独自の視点で研究してきたこともよく分かる。
しかしそれは、学問のための研究ではない。自分の作品を書くための道具としての日本語の研究である。道具としての言葉をここまで研究してきたのかと驚嘆する。
そしてそれを、ジョークに包んで言葉にできるところに井上ひさしという作家の狂気を見たような気がした。続きを読む投稿日:2022.10.01
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