日本人へ リーダー篇
塩野七生(著)
/文春新書
作品情報
2000年に及ぶ歴史のなかで、ローマ帝国は何度となく重大な危機に陥り、そのたびに大胆な方法で危機を脱した。日本には、なぜ古代ローマ皇帝カエサルのような、リスクをとる真のリーダーが現れないのか? いま、この国になにが一番必要なのか? 文明の栄華と衰退を知り尽くした塩野七生だから語れる、危機の時代を生きるための深い智恵。小林秀雄や司馬遼太郎がそうであったように、歴史と対話しながら、この国のあり方を根本から論じるエッセイ集。
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商品情報
- シリーズ
- 日本人へ
- 著者
- 塩野七生
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春新書
- 書籍発売日
- 2010.05.20
- Reader Store発売日
- 2011.05.13
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 256ページ
- シリーズ情報
- 既刊5巻
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この作品のレビュー
平均 3.6 (111件のレビュー)
-
☆2(付箋8枚/P254→割合3.15%)
あのローマ帝国が何故滅びたのか、通して書き終えた著者の視点は現代にもいかんなく生きる。
ローマから比べれば、アメリカの文化も寛容ではない。
日本の政治に…対しても、
“人を代えようと、奇跡が起るわけではない。
誰が最高責任者になろうと、やらねばならないことはもはやはっきりしている。
ならば、政策の継続性を保持するためだけでも、政権交代は避けたほうがよいと思うのだ。政策のちがいはあると言う人がいるが、私にはそれは、何を優先するかのちがいにすぎないように思える。”
と述べる。ユリウス・カエサルの先見と個人の力をつぶさに見た著者からすれば、十把一絡げに見えるんだろうなあ、今の政治家。
***以下抜き書き***
・アメリカ合衆国は多くの人種の混合体であり、ゆえにアメリカ人は多民族との共生に長じているとの見方は、私には大変に疑わしい。
アメリカ人は、自分たちの国に来て仕事をしたいと願っている他民族との共生には慣れていても、アメリカには行きたくなくあの国とは関係を持ちたくないと思っている他民族との共生となると、その成果としては半世紀昔の日本を持ち出さざるをえなかったことが示すように実績にとぼしい。
・しかし、このローマ帝国でも滅亡を免れることはできなかった。だが、これほども手をつくしたうえでの崩壊だからこそ、なぜローマは滅亡したのかという議論が、今に至るまで絶えないのである。そして、これだけは厳たる史実だ。近代の帝国は植民地が次々と独立したことで帝国でなくなったが、最後まで属州の離反がなかったローマは、帝国として滅亡したのだった。
(戦争で勝利した属州に市民権を与え、指導層には家門名や元老院の地位を与える。基地を作り、属州民と兵士の混血をすすめる。このローマ帝国を彼らはラテン語でfamiriaファミリアと呼んだ。)
・アメリカでは何でも豊富なので、その効率良い活用となると鈍感だ。しかもこの鈍感は、これから味方にしなければならない人々に対しても同様なのは、たとえ肉体的には生存していようと統治的にはゼロにできたサダム・フセインの存在を、大きくする時間的余裕を与えてしまったことが示している。
・そのうえ、部下たちをやる気にさせる心理上の手腕。人間は、苦労に耐えるのも犠牲を払うのも、必要となればやるのです。ただ、喜んでやりたいのです。だから、それらを喜んでやる気持ちにさせてくれる人に、従いていくのです。
・私には、キリスト教とイスラム教という一神教同士の抗争の根の深さは、ローマ帝国、つまり古代はいつ終わりを告げたのかをめぐる諸説にさえも見え隠れしているように思えるのである。
忘れてはならないのは、ローマ帝国の事実上の終焉はキリスト教が支配するようになった四世紀と考える人は、政治と宗教は別物と考える政教分離主義者に多い。一方、イスラムが後世に出てきた七世紀だとするのは、これとは反対の考えをもつ人々である。
・「いかなる分野でも共通して必要とされる重要な能力が、一つある。それは創造力だ」とは私の言ではなく、五百年前にマキアヴェッリが遺した言葉である。
・なぜ「情けない」かというと、重要極まりない問題も賛成反対の論争を重ねていくうちに本題から離れ、賛成派も反対派も問題の本質を忘れてしまうところなのだ。日本滞在中に郵政民営化に関する国会の委員会の討議をテレビで見ていて、またそれを解説するマスコミの記事を読んでいて、衰亡途上のローマ帝国を前にしているのと似た想いになった。続きを読む投稿日:2014.08.11
月刊「文藝春秋」の連載の新書化。
リーダ篇とありますが、私あるいは民に対する「公」はどうあるべきかを論じた内容。
とはいえ、割とさらっと読めました。塩野氏自身が丸くなったのかもしれません。(201…0.6.23)続きを読む投稿日:2022.12.27
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