月への梯子(はしご)
作品情報
“ボクさん”こと福田幸男は母の遺したアパートの大家、40歳。知能は小学生並みだが、皆に愛されノンビリ平和に暮らしていた。ところがある日、入居中のスナック勤めの女が殺された。屋根の修理中で上っていた梯子から死体を発見したボクさんは、驚いて転落してしまう。やがて退院すると住人が皆失踪、しかも全員身元を偽っていた! これを機に、ボクさんに驚くべき変化が起こり始める…。人は何をもって幸福になるのか。<知る>ことの哀しみが胸に迫る長篇ミステリー。
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商品情報
- シリーズ
- 月への梯子(はしご)
- 著者
- 樋口有介
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2008.12.10
- Reader Store発売日
- 2010.12.01
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 310ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (28件のレビュー)
-
軽度の知的障害者である「ボクさん」こと福田幸男。死んだ母親が遺してくれたアパートの管理人として、またちょっと風変わりな住居人たちと平和に暮らしていたが、ある日アパートで殺人事件が起こって、ボクさんと周…囲の人たちの人生が一変する。
従来の作品群とは一線を画す異色作。ファンタジー感を匂わすラストといい、早々と犯人が現れて、さあどんでん返しの真相はと思いきや、実は作品の主題はそこじゃないというある意味の裏切り感。樋口作品を数多く読んでいる者ほどこの衝撃は堪えます。続きを読む投稿日:2015.06.14
このレビューはネタバレを含みます
ボクさんは四十代独身のアパート大家。
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少しとろいけれど、ご近所や店子の皆に愛されて幸福に暮らしている。
ある日、入居者の一人が殺されるという事件が起き、屋根の修理で梯子に登っていたボクさんは死体を発見…し、転落してしまう。
ボクさんが目覚めたとき、アパートの住人は全員失踪し、ボクさんはなぜだか利口になっていた。
この物語を読んだ多くの人は、チャーリイ・ゴードンのことを思い出すかもしれない。
ちいさなネズミと知恵比べをさせられていたあの青年のことを。
「知る」ことは時に悲しいことだ。
知らなければ傷つかずに済むことも世の中にはたくさんある。
チャーリイは抜群の頭脳を手に入れるまでは、自分が周りの人間にどう思われているかなんて想像もしなかった。
たとえそれが幻だとしても、居心地の良い世界でぬくぬくと暮らしていたのだ。
それに比べれば、ボクさんは随分とマシだと思う。
ボクさんが「いい人たち」だと思っていた店子の多くは犯罪者だったり、人には言えない秘密を抱えていたりしたけれども、それでも彼らがボクさんのことを好きだったという気持ちに嘘はなかっただろう。
京子とのことは少しばかり辛かったかもしれないけれど、チャーリイに比べ、ボクさんの物語には救いがある。
事件そのものは何の変哲もない、普通の(と言っては語弊があるが)殺人事件に過ぎない。
聡明になったボクさんが見事に事件を解決する…なんてこともなく、当たり前のように警察が犯人をしょっ引いてくる。
その間、ボクさんは、アパートの住人たちが失踪したことの真相を暴いてみたり、下着泥棒の物船を保護してやったり、遊都子がまたアパートに戻れるようにしてやったり、要するに「大家さん」としての職務を普通にまっとうしていただけのことである。
ボクさんに言わせれば、「大家と言えば親も同然。店子と言えば子も同然」なのだから。
このあたりは、なかなかにコミカルで、聡明になったボクさんの語り口がいかにも樋口作品らしくてちょっと笑ってしまった。
さて、ラストでボクさんが倒れたとき、僕は「ああ、これでボクさんはきっとまた元のボクさんに戻るんだな」と想像した。
事件が解決し、店子たちも幾人かは戻ってきて、あとはまたアパートのメンテナンスをしてのんびり暮らすボクさんに戻るんだなって思った。
事件を解決するために、神様がボクさんの頭に少しの間だけちょっとしたいたずらをしたんだ。
そんな風にも考えた。
そう思っているところへ、このラストは意外。
アリか無しかと言われればもちろん「アリ」だと思う。夢オチを嫌う人には本を投げ捨てたくなるような結末かもしれないけれど、僕はむしろこのラスト以外にはなかったんじゃないかとすら思う。
「アルジャーノンに花束を」で一度泣かされている僕としては、こういう終わり方は淋しいからちょっと嫌だけれど、最初に僕が想像したような終わり方だったら、きっと何の印象にも残らない平凡な作品になってしまったかもしれない。
ただ、「アルジャーノン…」ほどにはこの物語には淋しさがない。
温かな気持ちのままでいられる。
何だか救いがあるような気がする。
現実と夢の狭間で遊ぶような物語だから、ボクさんは月で一生懸命、ペンキを塗っているんじゃないかって信じられるような気がする。続きを読む投稿日:2020.04.16
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