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東方ハリー・ケインさんのレビュー
いいね!された数21
  • ROUTE END 8

    ROUTE END 8

    中川海二

    少年ジャンプ+

    それぞれの人生の終わりと終わらないもの

    7巻からの怒涛の展開がもたらした先にあったのは、人の死とそれに仕事として関わる者、家族として悲しむ者、傷ついた人が流す涙、残された希望とそれを見守り続ける存在でした。久々に先が気になって全巻読み終えましたが、ミステリーとしても群像劇としても秀逸でした。中川海二先生の次回作にも期待しています。

    0
    投稿日: 2019.04.27
  • 薄命少女 1

    薄命少女 1

    あらい・まりこ

    漫画アクション

    祝!、人生初の4コマ漫画コミック購入!

     試し読みで、薄墨色のタッチで描かれた(ここだけカラーだったのかな?)第1話の4コマが始まり、いきなり重い宣告を緊張感のないシチュエーションの中で突きつけられた女子高生・橘佳苗が、それでも笑顔で明るく生きる姿に一目惚れして購入決定。  ただこれ、なんだか私が思ってる4コマっぽくない。まるで、4コマという楽しく笑えそうな羊の皮を被って油断させといて、予想外の角度から噛み付いてくる狼の如く、重厚なヒューマンドラマに変貌して心を揺さぶる野心作といった趣き。  終盤に差し掛かってくると各話の最後のエピソードが、オチや笑い関係なくなって(もちろん、他のエピソードには笑いが散りばめられてますが)続きがとっても気になる終わり方になり、気がつくとフィナーレまで一気に読み進めてしまっている。きっと人生もそんなものかなと思ってしまう一作、オススメです。

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    投稿日: 2018.02.13
  • 志乃ちゃんは自分の名前が言えない

    志乃ちゃんは自分の名前が言えない

    押見修造

    太田出版

    欠点の無い人はいない

     2016年に起きたストーカー事件で、加害者が被害者に贈っていた数冊の本の中の一冊だったという報道記事で知った作品。 難発型の「吃音」によって、喋ろう、喋らなきゃと思えば思うほど言葉が出なくなってしまう高校生、大島志乃。同じクラスの岡崎加代や菊池との交流の中で、志乃は「吃音」に対して自分が抱えていた劣等感や自己否定について答えを出します。  人は誰でも完璧ではなく、登場する3人の高校生も先生も、欠けているものがはっきりとわかります。しかし、その欠点に恥ずかしさや劣等感を抱くかどうかはその人次第で、それを気にしようがしまいが死ぬわけでもない。克服できればQOLが上がるという事実がそこにあるだけです。自分一人の力だけで克服するのが無理なら、誰かの力を借りてもいい。だから私はこの作品の中で、答えを出した大島志乃よりも、志乃を光ある答えに導いた岡崎加代が好きです。  歌っていると吃音が出ないあたりはドラマ「ラブソング」そっくり。全編にわたって、志乃が吃音症状に苦しんでいる時に随伴運動なのか異様な表情やポージング、動悸息切れ、汗や涙など、やりすぎ表現なんじゃないかとも思いましたが、作者自身が難発性吃音経験者だそうなので間違ってないと思うし、物語の起承転結、特に結がすっきりしていて良い作品でした。

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    投稿日: 2017.05.07
  • 惨殺半島赤目村(2)

    惨殺半島赤目村(2)

    武富健治,中島直俊

    コミックアーススター

    すべてが豹変する島で、三沢の運命は・・・

     横溝正史の金田一シリーズのドラマ・映画作品が好きだったので、そんなテイストなのではないかと想像して1巻を購入・・・したわけではないのです。ReaderStoreで、まとめ買いした中で一番高いコミックが半額になるキャンペーンがきっかけでした。ええ、高いんです、この本。半額なら得した気分になるかなと思っただけです。ところが気付くと、こうして第2巻も購入して読んでいるという・・・。  正直、面白かったのです。先が読めない展開と、何か得体の知れないドロドロの人間模様と、外界から隔離されたかのような離島の因習に蹂躙される感覚。そして、なんといっても暗く重たく、サスペンスフルでグロテスクな作画。ずっと以前に見てトラウマを感じた日野日出志「蔵六の奇病」に勝るとも劣らないほどの、心の柔らかいところにグサリとくる浸透力がありました。まあ、今の時代に逆行してる感は多々ある気もしますが。  で、一旦こういう作品に取り憑かれたように心に引っかかったら、物語の最後まで読み終えて完結させることで、その後のメンタルケアにもなると思い読破完了。最終話「大団円」でスッキリしました。

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    投稿日: 2017.01.28
  • 校舎のうらには天使が埋められている(2)

    校舎のうらには天使が埋められている(2)

    小山鹿梨子

    別冊フレンド

    白い悪魔は、黒いやつよりなお悪い

    巷で物議を醸した某民放ドラマを観てから少々思うところがあり、第1巻だけで結論を下すのはどうなのかなと苦しいほどの自問自答の末に、勇気を奮い起こし、ようやく2巻を読む決意を固めました。で、読んでみた結論から言うと、この巻の作者のあとがきにも「1巻は救いがなさすぎましたもんね」と自嘲気味につぶやかれている通り、前巻の内容はかなり叩かれた様子ですが、今回は「白い悪魔」と正面切って対決する「黒い天使」が現れるというところが救いでしょうか(ほとんど伏線もないまま突然、本作のヒロイン?が登場したのでビックリしましたが・・・。前巻のいじめシーンのどこにもいないというのが伏線といえば伏線なのかな・・・)。ただ、救いがあると思えるのは女王蜂が前巻よりも比較的おとなしくしているからそう見えるだけなのであって、その恐怖政治力と集団心理を掌握する魔力は200%顕在のままなのです。そのため、「解剖」された浜上優を救おうとする「黒い天使」と野呂瀬先生は孤立し劣勢に立たされていきますが、そこまで追い込む方法の陰湿さと狂気が異様です。そういう醜悪なものと戦わなければならないヒロインも、戦う理由が少々希薄に見えて、どこまで頑張れるのか心配です。なお、前巻で問題に思えた残酷表現は少しやわらぎはしたものの、やはり子供の中身に歪んだ大人が入ってるな、と思わされて気持ち悪くなる場面も散見されます。これから読まれる方はどうぞご注意を。

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    投稿日: 2014.03.04
  • まりかセヴン 1

    まりかセヴン 1

    伊藤伸平

    漫画アクション

    セブンじゃなくセヴンで、現役女子高生で、アイスラッガーは投げません

    伊藤伸平のマンガで読んだことがあるのは「エンジェル・アタック」だけですが、コメディ感が結構ツボで、かなりのコミックを処分した中で、今でも手元にしぶとく生き残っています。この「まりかセヴン」は現在、WEBマンガとして連載が続けられてるようです。割りと普通の女子高生・三条まりかが巨大怪獣の出現とともに、いつのまにか憑依されていた宇宙人セヴンによって、まるでウルトラマンのような巨大化ヒーローになって活躍するという、まあ割りとよくある話。しかしそこはそれ、女の子ですから、体力はないし、難しい話はわからないし、苦手なものが多いしで、はっきり言ってヒーローとしては不適格。憑依したセヴンも反省している始末。おまけに変(態)な先輩やら仲の良い友達、防衛省だ自衛隊だ、守るべき一般市民だと、もろもろの登場人物がゆるゆるで、それでいてツボを押さえた質の良い笑いを提供してくれます。「エンジェル・アタック」とくらべるとエロは少ない(セヴンとの精神世界内での会話中のまりかが裸であることくらい)ですが、微グロっぽいものはあります。男なら誰もが夢見る女性型巨乳、もとい、女性型巨大化ヒーローの活躍は胸熱すぎて笑えます。

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    投稿日: 2014.02.04
  • NOBELU-演-(1)

    NOBELU-演-(1)

    野島伸司,吉田譲

    少年サンデー

    多重人格子役ノベル

    日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」の脚本監修を務めたということで、今また賛否両面で話題の人になっている野島伸司が、マンガの原作者をやっているという噂を耳にして読んでみたくなりました。表紙イラストだけなら私の「表紙買い」エリアには入ってないのですが、マンガ部分ではかなり安定していて表現力の高い絵だったのでほっとしました。しかし、その表現力の高さは、登場人物の表情の冷たさ、暗さ、恐ろしさ、哀しさといったものに特化しているという点で、少し危険な感じもします。んーと、いつか見たサイコホラー系マンガの表情を彷彿とさせます。何だったかな・・・。両親の離婚によって母親と暮らすことになった息子ノベルが、母親が持つある性質によって、子役タレントとして働かされることになる・・・とまあ、普通に考えたらこの時点で母親が親権を持つなんてあり得ない展開ですが、そこが野島伸司なのです。その後もノベルの身には災難が降りかかりますが、限界に達したとき、ノベルの中に眠っていた何かが・・・。作中に「お前たちはティーカップだ」というセリフがありますが、野島氏のドラマ作品中の「お前たちは猿だ」「お前たちはペットショップの犬だ」とほぼ同じパターンのような・・・。読んでてズルっとコケましたが、こういうズバッと一刀両断するような単純比喩がわかりやすいテーマになっていることで、作品の今後の展開を予想させる、あるいはミスリードを誘う、どちらも野島節なんだと思います。いやこれ、予想以上に面白かったのです。続巻も必ず買うと思います。というより、最終巻まで読み終えないと、モヤモヤが残りそうなので。

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    投稿日: 2014.02.04
  • 校舎のうらには天使が埋められている(1)

    校舎のうらには天使が埋められている(1)

    小山鹿梨子

    別冊フレンド

    トラウマ注意!可愛い顔した発禁レベルの悪書

    似たようなテーマでは、押切蓮介の「ミスミソウ(完全版)」もかなり酷いものだった。しかし、あちらは絵柄自体が内容を暗に示しているのに対し、こちらは可愛い絵柄で油断させておいて突き落とすのだから始末におえない。少年時代いくつかのマンガ作品で軽いトラウマを抱えたが、こんな大人になってから、世の中の子どもたちがこれを見たらどんなトラウマを抱えるだろうなんて心配することになるとは思わなかった。私が抱えたトラウマの多くは気持ち悪い絵柄や恐怖を感じさせる演出などだったが、これが植え付けるトラウマはそんな生易しいものではない。例えるなら、可愛い女児の皮を被った尼崎連続殺人の鬼婆そのものが描かれている。最近特に、マンガを含めた出版文化には倫理規定が存在しないことを痛感する。いくつかの少年事件で、過激な恐怖描写によって構成されたマンガが悪者にされることがあったが、実際にこれほどの悪書があるのだから。「表現の自由」を履き違えている、時代遅れの業界だと思う。映画にはR指定などを決める映倫が、ゲームにもCEROによってZ指定などが決められ、販売店によっては鍵のかかった棚の中に置かれて、決して年齢を満たしていない子どもには売られないことになっている。しかしこの作品は野放しだ。子どもが「表紙買い」することだってあり得る。次巻以降を読めば良い方向へ進んでいくとかでは絶対に許されない。ReaderStoreでも18歳以上かどうかを確かめるダイアログが表示されるコミックがあるのに、この作品には表示されない。PSVITAは利用年齢層が低いだろうという推測のためか、大人向けの作品は対応しないことが多いが、この作品はしっかり対応していて、ペアレンタルロックを最高レベルまで引き上げても読める。映画やゲームにはしっかりとロックがかかっているのにだ。 以上、この作品を「無料」期間中に入手しておきながら、問題提起してみました。こんなの読むべきではないし、読ませるべきでもない。

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    投稿日: 2014.01.12
  • 僕だけがいない街(2)

    僕だけがいない街(2)

    三部けい

    ヤングエース

    少年時代まで再上映(リバイバル)した藤沼の運命

    母を殺され、その犯人に仕立てあげられそうな危機的状況から逃れるために望んだ再上映(リバイバル)は藤沼を少年時代まで引き戻した。小学生の頃の体に28歳の意識が戻った藤沼はそこで、小学生連続誘拐殺人事件の犯人によって殺される運命の雛月を守ることが母の命を救う鍵だと確信して行動を開始する--。タイムリープなのかパラレルリープなのか、ともかく問題が解決するまで何度でも繰り返せる特殊能力らしいのですが、さすがに2006年から1988年はぶっ飛びすぎ。しかし、それがどうも万能ではないらしくて、どうも望んでそうなるというよりは発作的に発生するもののようです。この2巻目では、真犯人にたどりつくというよりは、雛月を守ることで母親の命を救うことができた未来に戻れるのかを描いていますが、ここ数年で読んだ漫画作品の中で、これほど次の展開が気になる作品はありませんでした。実は、それ以上に気になった、というかびっくりしたのは、作者の三部先生が、私が神様として信仰しているあの先生のお弟子さんだったこと(巻末の後書き漫画参照)。ピコーン!、謎が解けました。藤沼のアレはスタンド能力ですね。私はそのスタンドに「Get Back」と勝手に名付けました。このレビューを読んでくれた方なら、どう名付けるでしょうか?。・・・脱線しましたが、とてもいい作品ですので、読んでいただきたいと思います。

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    投稿日: 2013.10.21