
偉大なる失敗 天才科学者たちはどう間違えたか
マリオリヴィオ,千葉敏生
早川書房
失敗を学ぶ
ダーウィン、ケルヴィン卿、ポーリング、ホイル、アインシュタインという一流科学者達の失敗。 独創的な発想力が裏目に、ひとつのことにこだわってコツコツ研究することが頑固さに、社交性や政治力がデータに影響し、専門外の分野に目を向けてしまったことも失敗へと繋がる。とはいえ、失敗だった論文も学会内外とわず研究者達に影響を与え、新しい発想の助けになったりもする。偉大な発見があった前後のワイワイガヤガヤした感じが描かれていて面白いものの、専門的な知識不足とバッドエンドを知りながら読む辛さで読み終わるのに時間がかかった。 ジャック・ダニッツがライナス・ポーリングから言われた言葉「いいかいジャック、名案を思いついたと思ったら、とにかく発表しなさい!間違いを恐れちゃいかん。科学では、間違いは何の害も及ぼさない。科学界には、すぐに間違いを見つけて訂正してくれるような優秀な人間がたくさんいるのだ。恥をかくかもしれんというだけで、害は何もない。プライドは傷つくがね。しかし、もし名案なのに発表しなければ、科学が損失をこうむるかもしれんのだ。」にグッとくる。
2投稿日: 2016.10.06
野蛮な読書
平松洋子
集英社文庫
読みたい本が増えていく
読書エッセイ。読んだ本のレビューというよりも著者の生活の中にある読書にかかわる部分をピックアップしたような感じ。本好きとしては行為としての読書に「そうそう、あるある」と思いながら油断して読み進めていると、著者が読んで感じているあれこれに「ああ、その本私もよみたいです」と思わず読みたい本リストが長くなっていく。本を本として切り離さず、生きていくうちの要素のひとつとして同じ流れで地続きな感じが好きでした。
7投稿日: 2015.08.31
異性
角田光代,穂村弘
河出書房新社
往復エッセイ
角田光代さんと穂村弘さんが恋愛等での自分の性側の感じ方や反応について、また、相手側の反応に対しての疑問や考察を交互に書きあっていく形のエッセイ。相手が書いた疑問に答えたり、答えに納得したり、新しく疑問が生まれたり。読んでいるこちらも「へーっ」と思いながらどんどん読みすすんでいってしまう。隠しておきたいような内面まで語ってしまう二人のやりとりが面白かった。
2投稿日: 2013.10.02
夢を与える
綿矢りさ
河出文庫
「夢を与える」側
タレントである主人公の出生までのエピソードがとても恐ろしく感じられて、運の良さと聡明さで上手く高みに登っていく過程でも突き落としが来るのが怖かった。安易なハッピーエンドに纏まっておらず、(続きは予見できるものの)結論保留のまま終わっているのも好き。でてくる女性陣がリアルで強く恐ろしく、男性は基本的に良くも悪くもぬるい感じがした。
2投稿日: 2013.09.27
魚舟・獣舟
上田早夕里
光文社文庫
もっと詠んでいたい
短編集。全編とも質は違うものの、湿度が高く生き物の臭いが濃厚かつ文明も高度に発達した世界が舞台。それぞれの世界が魅力的で、もっとこの世界がどんなふうなのか読んでいたいのに、短編なのであっさり終わってしまうのが残念。世界としてはそれぞれ違う方向へ発展し問題を抱えているものの、人間は本質的にかわらなかったようで突飛な展開もなく物語としては安心して読めました。
2投稿日: 2013.09.27
バチカン奇跡調査官 黒の学院
藤木稟
角川ホラー文庫
表紙ほどは軽くない
キリストによる奇跡が起こったという申請に対して、バチカンから本物の奇跡なのか、でっち上げなのか、思い込みなのか、勘違いなのかというのを調査して認定する神父二人組が主人公。人の死なないミステリ系かと思って読み始めたのだけど、人はどんどん死ぬ。話をあちらこちらに飛ばしつつも、大判風呂敷広げてしまった感がどんどん大きくなっていくので、どうやって収集するつもりなのかハラハラしたが、なんとか着地していて投げっぱなしで放り出されることはなかったのはよかった。
0投稿日: 2013.09.26
