
掟上今日子の備忘録(単行本版)
西尾維新,VOFAN
講談社
良くも悪くも西尾維新らしくない普通のライトミステリ
西尾維新の小説といえば、色々な意味で常識など通用しない奇人・変人・超人そして変態達によって彩られる尖った物語という印象があるのだが、この小説に限って言えば、主人公かつワトソン役の厄介、探偵役の今日子さん、そしてその他の登場人物達も、「事件に巻き込まれやすい」とか「寝て起きると記憶を失う」という点を除いてはだいたい真人間である。 過去に何かあったらしい美女名探偵と、その探偵に淡い好意を寄せるやや不器用なワトソン役の男が小規模な事件(連続殺人とかは起こらない)を解決していく短編集…どちらかというと、「ビブリア古書店」とか「カフェ・タレーラン」シリーズに近い。したがって、それらのシリーズが好きな人には合っているし、逆に、これまでの西尾維新作品のようなものを期待している人の場合は拍子抜けしてしまうかもしれない。
2投稿日: 2015.01.25
AL(アル) 1
所十三
週刊少年チャンピオン
恐竜好きなら一読の価値あり
超巨大ティラノサウルス「牙王」に群れの仲間達を殺されたトリケラトプスの子供「アル」。これはその「アル」が、他の恐竜達と協力し、圧倒的な力をもつ「牙王」に立ち向かう物語です。主人公がまだ子供の恐竜、ラスボスは通常の個体とは比較にならない巨大ティラノサウルス、その巨大ティラノサウルスと因縁のある二本角のトリケラトプス、など、昔からの恐竜ファンなら伊東章夫の描いた、マイアサウラの子供が主人公の恐竜漫画「ファイトくん」を連想するかもしれません。 映画やゲーム、漫画等、フィクションの世界で恐竜が使われることは珍しくありませんが、たいがいは脇役・敵役で、しかも単なる怪獣的な扱いをされることがほとんどです(ONE PIECEのリトルガーデン編などでは完全に噛ませ犬ですね)。しかし、このシリーズはそうしたものとは一線を画し、恐竜が主役、そして何より、科学的知見に基いて書かれています。もちろん、漫画としてストーリーを面白くする都合上、「本物の恐竜だったらこれは無いだろう」と思える点はあるのですが、それも一定の範囲に収まっており、「怪獣」ではなく「生物」としての恐竜が描かれています。
1投稿日: 2013.09.29
