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りのべるさんのレビュー
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  • 凶宅

    凶宅

    三津田信三

    角川ホラー文庫

    恐怖は隣り合わせ

    長く住み続ける人がいない。 よくない噂が流れる曰く付きの家には、得体の知れない何かが現れる。 父親の転勤に伴って、東京から奈良の杏羅市へと引っ越すことになった翔太。 十歳の少年にとっては、冒険気分の一大イベントである。 特別なワクワクに包まているはずなのに、厭な予感も拭えずにいた。 誰も踏み入れてはならない土地。 いくら遠ざけようとしても、“呼ばれて”しまうのだ。 そこに根差す存在が神様だろうと悪霊だろうと、関わった人間には禍いが降りかかる。

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    投稿日: 2021.07.07
  • 架空通貨

    架空通貨

    池井戸潤

    講談社文庫

    すべてはカネだ

    亜鉛の精錬所によって存続する企業城下町。 君主ともいえる社長の手腕の下、田神町は息づいていた。 東京の高校で教師をする辛島は、受け持っているクラスの黒沢麻紀から社債の期前償還について相談を受ける。 麻紀の父親が経営する事業は、不況の煽りを受けて苦境に立たされていたのだ。 黒沢の会社、さらには彼女自身の進学や将来のため、田神亜鉛の経済状況を探り始めた辛島と麻紀。 その中で、田神町に蔓延る「悪い金」の闇を目の当たりにする。 ひとつの町が起こす動乱に、人びとは飲み込まれていく。

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    投稿日: 2021.07.02
  • イニシエーション・ラブ

    イニシエーション・ラブ

    乾くるみ

    文春文庫

    手法が秀逸

    ドタキャンしたメンツの代役、つまりは人数合わせのため合コンに呼ばれる鈴木。 雰囲気を味わってみようという軽いノリで、参加を決めた。 しかし酒の席で、女性も参加するとなれば、周囲から孤立する予想をしていた。 自分が喋ることで賑やかな場を白けさせるかもしれない。 そんな不安から緊張を感じ始める鈴木だが、なんとか会話の調子を合わせていく。 合コンで恋愛相手を探すつもりもなかったはずなのに、気が付くとひとりの女性に注目していた。 彼女へ向かう好意はとどまることなく加速していく。

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    投稿日: 2021.06.26
  • ドグラ・マグラ 上

    ドグラ・マグラ 上

    夢野久作

    ゴマブックス

    再読不可避の難解探偵小説

    真夜中にボンボン時計が鳴る音で目を覚ました男。 見知らぬ部屋の中、自分は何者なのかも見当がつかない。 隣の部屋からは、生き返った許嫁だと云う女が呼び掛けてくる。 名前も思い出せずにいる男の許へ、犯罪心理学を専門とする若林が現れた。 若林は、精神病を研究する正木とともに、男の記憶が回復する過程を観察していたと明かす。 異常な殺人事件と脳髄論が関係する衝撃の真相とは!?

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    投稿日: 2021.06.18
  • 天使の囀り

    天使の囀り

    貴志祐介

    角川ホラー文庫

    背筋がゾワゾワする

    紀行文を執筆するため、作家の高梨はアマゾン調査のメンバーに加わり、現地で取材を行っていた。 調査隊が「呪われた沢」へ立ち寄ったことがきっかけとなり、アマゾンの現地民から追い出されてしまう。 ホスピス医の早苗は、帰国した恋人の高梨と再会するも、彼の別人のような態度に不安を募らせる。 早苗の見立てでは、高梨は極度の死恐怖症《タナトフォビア》であった。 日常的に死を意識するあまり、高梨の人格に翳りをもたらしていた。 その様子がアマゾンへの渡航を境に一変したのだ。 死に恐怖を抱いていたはずが、死に魅了されて忘我となる。 恐怖の概念が覆るとき、人間に訪れるのは地獄の苦しみか天使の囁きか。 不気味でおぞましいけど、その怖さが面白い! 密林地帯がトラウマになりそうなほど、余韻も凄いお話です。

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    投稿日: 2021.06.12
  • 球体の蛇

    球体の蛇

    道尾秀介

    角川文庫

    恋心

    主人公が小さい頃に憧れていた幼馴染の少女。少女の家族と行ったキャンプで起こった事故から物語は始まり、絡み合っていく。 登場人物は皆、自分の所為だと言うのだが・・・。 ラストの1ページで、すべてがひっくり返されます。 私の考え到った答えは違うのかもしれない。けど、ほぼ確信しています。 もし、ひとつの異常が日常に溶け込んでいたとしたら・・・。

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    投稿日: 2014.01.29
  • 黒い家

    黒い家

    貴志祐介

    KADOKAWA

    人間とは

    京都の梅雨。じっとりとした暑さが伝わってくる雰囲気。 じりじりと追い詰められていく様は、読んでいても汗が伝ってくる。それでいて周囲の空気は止まってしまったかのよう。

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    投稿日: 2013.09.28
  • カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

    カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

    道尾秀介

    講談社文庫

    不思議な家族

    すべてを疑うつもりで読んでも、舞台裏は読み取れない。疑問にも思っていなかったところまで真相が解明される。 どうせ騙されるなら、いっそ最後まで騙されてみましょう。

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    投稿日: 2013.09.28