(第一部完結14巻までの感想です) OVA天地無用！魎皇鬼の大ファンです。この「天地無用！GXP」はその外伝で、2002年にTVアニメとして放送されました。小説はそのノベライズなのですが、実に14巻、足掛け14年かけてアニメ放送分までの第一部が完結いたしました(笑)。 時間がかかった理由は、天地無用ワールドの原作者梶島氏が作者だからです。アニメのストーリーをなぞるだけでなく、物語の背景や省略されたエピソード等がふんだんに盛り込まれています。天地無用ファンにはたまらない訳ですが、単独の小説として見ても中弛みなくテンションを保ったまま非常に上手くまとめてあると思います。ラノベとして、とても面白いです。 主人公山田西南は、生まれつき異常な「不運」体質(?)の地球人です。彼があるきっかけでギャラクシーポリスになるための学校に入学します。待ち受けるのは宇宙海賊との戦いと、美女たちとのハーレム生活。彼の特異体質と純朴な性格が、やがてGPと宇宙海賊の存在意義そのものを変えていく…。 「樹雷」という天地無用ワールド独特の設定や名前の漢字名の取っつきにくさ、何十人もの登場人物の多さなどはあるものの、一度はまればそのブレない梶島世界観に圧倒されます。 次巻から、アニメ未放映の第二部「簾座編」が始まるそうです。今から続刊を心待ちにしています。…やっぱり、巨大人型ロボットは男のロマンですよね！ ※美星/美兎跳を演じられた声優の水谷優子さんが、2016年5月に逝去されました。天地無用のアニメ新シリーズ制作が決定していただけに、残念でなりません。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

士官学校の入学試験に失敗した少年が、持ち前の機知とハッタリで傭兵艦隊を作り上げ、提督となって本物の宇宙艦隊を率いていく。こんな物語が面白くないわけがありません！ 登場人物も皆魅力的ですが、特に主人公マイルズの造形は素晴らしいの一言です。こんなヒーロー今まで想像したこともありませんでした！ ユーモラスな語り口と絶妙な構成で最後まで一気に読まされてしまいますが、底流にあるのはコンプレックスを抱えた少年の成長物語です。だから話が荒唐無稽になることなく、共感を生むのだと思います。 面白いスペースオペラを探している方、子供時代に宇宙艦隊に憧れたことのある方には、文句なくオススメの一冊です(笑) ヴォルコシガンシリーズはまだまだ続いています。 ぜひ続刊も電子化して欲しいです。

「面白い時代小説を教えて」と言われたら、隆慶一郎作品を薦めます。その中でもこの作品は、八番勝負という形の連作短編なので、電車の中でも気軽に読むことができます。手始めに読んでみるには最適ではないでしょうか。 もちろん面白さは期待を裏切りません。主人公鬼麿は刀鍛冶で、山窩出身の大男。三尺二寸五分の大太刀「古釣瓶」を自分の体の一分のように使いこなす強者です。その彼が、敬愛する師匠の遺言で、数打ちの駄刀を打ち折る旅に出ます。江戸から出雲路まで、伊賀忍群の妨害や、様々な人との出会いを経て、鬼麿は若き日の師匠の背中に追いついていきます。 彼の師匠は、四谷正宗といわれた名工山浦清麿。この物語のもう一人の主人公と言って良いでしょう。魅力的な登場人物、刀鍛冶というあまり馴染みのない世界にあっという間に引き込まれて、鬼麿と一緒に旅をしている気にさせてもらえます。 この本を読んで気に入られた方は、ぜひ他の隆慶一郎作品の長編にも手を伸ばしていただけたら嬉しいです。