
いつもの服をそのまま着ているだけなのに、なぜだかおしゃれに見える
山本あきこ
ダイヤモンド社
強烈に実用度が高いおしゃれ本
これまでスタイリストやタレントが出すスタイルブックは、パラパラ立ち読みすることはあれど、買わなかった。「私、おしゃれでしょ?」感満載で、「はいはい、そうですね」と思いながら、棚に戻す。それだけ。 でもこの本は違う。 立ち読みして購入即決。電子書籍でスマホに入れておきたい、と思った。法則が明確。一見、無難。それでいて、確かにあか抜けてると思うコーディネートの何が違うのか、よくわかった。 今、世の中的にover35くらいの大人向けで、コンサバでもママでもないカジュアルを志向した雑誌がない、と不満なんだけど、この本だけで当面頑張ってみようかな。
5投稿日: 2015.05.19
虐殺器官
伊藤計劃
早川書房
絶望と解脱感がない交ぜになった心地よい感覚
久々に読んだ、読み応えのあるSF。というか、戦記物。 この本から受け取ったテーマは、意思とは何か、その意思によって求められる自由とは何か、ということ。主人公は、(ことばや記憶やテクノロジーや組織やの影響を受けている)自分の選択が自分の意思によるものだったのか、を常に思い悩む。その過程が圧倒的な論理性と文章力で展開される。結果、主人公の抱える問題は、読み手である私にも突きつけられて、内省することになった。 主人公とともに内省を始めると、ルツィアやジョン・ポールが語る、ことばや良心も人間の進化の過程で生まれた産物、器官のようなものだ、という考えには強く引きつけられる。私もまた、主人公と同様に。 そのままラストまで突入すると、絶望と解脱感がない交ぜになった心地よい感覚がやってくる。エンディングは弱いという意見もあるようだけれど、この小説が主人公の内面を主軸にしたSFである以上、このくらいでいいのだろうと思う。
8投稿日: 2014.04.29
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上・下合本版)
スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ美穂,岩澤雅利
早川書房
「ミレニアム」を読み続ける幸せな時間、ここで打ち止め
1作目がクライムサスペンス、2作目が国際政治サスペンス、で、3作目は法廷劇。ストーリー上は3作がつながっているのに、見せるシーンや事件の側面が変化していくのが、『ミレニアム』のすごいところだと思う。 ストーリーの中では、あらゆる組織、人間関係で、有能な女性、かつ女性ゆえに苦しみながらも、自分に忠実な選択をしている女性が登場する。リスベットはもちろんのこと、1作目のハリエット、2作目のソーニャ・ムーディグ、3作目のミカエルの妹が象徴的。それ以外に、「ミレニアム」編集部にも公安にもミルトンにも、要所要所で優秀な女性が出てくる。「『ミレニアム』3部作のテーマは、女性を嫌いな男性と男性に苦しめられる女性だ」というような指摘をあとがきで読んだけれど、著者のスティーグ・ラーソンがなぜここまでこの視点にこだわったのか。本人に聞いてみたかった。(内縁の)妻であるエヴァ・ガブリエルソンも知的で優秀な、戦う女性だっていうのが少なからず影響しているとは思うけれど、確認はできない。残念なことです。 ああ、それにしても。 これで「ミレニアム」を読み続ける幸せな時間はいったん終わり。つくづく著者の早世が悔やまれてならない。エヴァ・ガブリエルソンによると4作目はリスベットが「自由に生きることを学ぶ本」だったらしい(http://www.rue89japon.com/?p=4597)。タイトルは『神の復讐』。はあ~、読みたかった…。
0投稿日: 2014.04.29
ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕
ジョン・ル・カレ,村上博基
ハヤカワ文庫NV
再読決定。
映画『裏切りのサーカス』を見てから原作を読むと、あの映画の脚本が、いかに大胆かつ上手にストーリーと登場人物を整理していたかがわかる。 原作は一層複雑。読み切れた気がしない。「少ししたら再読」リストに入れておかないと。
0投稿日: 2014.04.29
再起動せよと雑誌はいう
仲俣暁生
京阪神エルマガジン社
愛情を語るだけでは答えは出ない。
タイトルと著者の経歴から、雑誌の現状分析や(説教くさくても暴論でもいい)閉塞感を打破する提言を期待していたのだけれど、完全に肩すかし。雑誌好きの懐古趣味、愛情語りでしかなかった。雑誌産業が崖っぷちに立っている今、業界内の人間がビジネス上の視点なく雑誌の現状を語ることに、もはや現実的な意味はないと私は思う。少なくとも「再起動せよ」なんて銘打つのなら(ノリは「再起動してほしい。そう私は祈っているよ」くらいの感じだろう、これだと)。 この本の唯一の収穫は、そもそも雑誌好きによる雑誌語りが成立すること自体、メディアとしての雑誌の衰退を象徴していると実感できたこと。かつて雑誌とは、多くの人にとって「別段好きというほどのことはないし、語るほどの思い入れもない。それでも読んでいるもの」であったはずなのに。特定の雑誌がではなく、雑誌というメディア全体がニッチ産業になったということだ。
0投稿日: 2014.04.29
