
星々の舟
村山由佳
文春文庫
重いテーマの作品
恋愛小説、連作短編集です。6篇の作品が主人公を変え、恋愛という苦しい舟に流されていきます。すべての恋愛が何かしらの、それもとても重い問題を抱えており、どの恋愛一つとっても決して幸せといえない恋愛ばかりです。主人公たちは実は家族であり、一人ひとりの恋愛を描くことによって大きな一つの家族の在り方が見えてくるという作りになっています。戦争など、かなり重苦しい背景も出てくる為、読むのはしんどいかもしれません。ただ不思議と読み終えて嫌な気分にはなりませんでした。そのあたりはやはり作家さんの力量なのかなと思いました。
1投稿日: 2015.10.02イニシエーション・ラブ
乾くるみ
文春文庫
心配です。
『最後から二つ目のセリフ』って何?ミステリーになるの?とかなり期待して読み始めました。 主人公の純朴な青年はうんうん、と読めたのですが、マユの方がまったく気に入らない。多分作者が男性なのでちょっと都合のいい、女性的にはあまり好きになれないタイプの女の子になっているのだと思いますが、私はこういう媚びる女嫌いやな~と作品の中にうまく入ることが出来ませんでした。なんか嫌、なんか嫌とマユに拒否症状を感じながら・・・そうそう、こういう女の人がやっぱりいいよとSIDE Bに出てくる女性との関係を応援しながら・・・。 とうとう来ました、『最後から二つ目のセリフ』。 ・・・最低・・・嫌な話・・・純朴な青年のその後が心配です。
0投稿日: 2015.09.19千年樹
荻原浩
集英社文庫
重いです。
悲しい由来を持つくすの木をめぐる連作短編集。悲しい由来を持つがゆえに悲しい人々をひきつけるのか、1篇の中には必ず過去の話と現代の話、リンクしたりしなかったり、ただ根底に流れるテーマを合致させたものがこれでもかと悲劇的に襲い掛かります。唯一「ばあば」に救われるものの、くすの木は人々に復讐するかのように悪意を持って千年間、人々の悲しみの前に立ちはだかります。時に読み進めるのがつらく重い内容のものもありますがそれだけに読みごたえたっぷり。読み終えたあと、くすの木の一生を見届けた様な気がして少しだけほっとしました。
1投稿日: 2015.06.18コールドゲーム
荻原浩
新潮社
悲しい話
悲しいミステリーです。トロ吉の復讐なのか、それとも・・・という謎を読み解きながら次々行われる復讐は途中で読むのをやめられないくらいぞっとするものです。いじめるのが悪いのか、復讐する方が悪いのか。人をいじめるとこんな目に合うかもしれないよ、見てみないふりはいじめているのと同じだよと考えつつ読み進めると・・・やっぱりいじめの結末は途方もなく悲しいのだと思い知ります。
0投稿日: 2015.06.18黒い家
貴志祐介
KADOKAWA
怖いです
仕事を遂行しようとしただけの人が常人ではないサイコパスを相手にするとこんな怖い目にあうのかと。 読みやすい文体の為かえって状況を思い描きながら読んでしまうので怖さが増します。 お化け類が出ずにこの怖さは一読の価値があると思います。 ただ怖いものが好きな方と一気に読むことが出来る方だけにお勧めしたいと思います。
0投稿日: 2014.10.01墓地を見おろす家
小池真理子
角川ホラー文庫
寝る前厳禁です
本当に怖いです。いわゆる幽霊が出てきます。なんの罪もない家族がこんな怖い目に合わされるのは理不尽だと思い、救いを求めながら読み進めましたが、救いはありませんでした。 せっかく手に入れたマイホーム。なかなか出ることが出来ない気持ちはわかります。 私は寝る前に読んで怖くてしばらく寝れませんでした。お昼に読むことをお勧めします。 最後の1ページはある意味一番怖いかもしれません。
5投稿日: 2014.10.01赤々煉恋
朱川湊人
東京創元社
複雑な想い
朱川作品は、大きく人情系とミステリー、怪奇系に分かれると思いますが、この作品集は表紙からは想像できない方に進むという形で・・ 怪奇系なのかな。大切に思う気持ちがあらぬ方向に進んでしまう刹那。いつもながらあっと驚く結末を用意してしまわれるあたり、あっぱ れです。でもどうしてこっちに行っちゃうのかなと悲しくなる結末が多いです。読み応えは十分。ただ決して人情系の朱川作品ではないの で、一冊読み終えるのには覚悟が必要ですよ。
2投稿日: 2014.08.12銀河に口笛
朱川湊人
角川文庫
草笛吹いて
僕が不思議な転校生の少年に語り掛ける形で話が進みます。 高度成長期の日本でどこにでもあった大人と子供の温かい交わり、秘密組織や秘密基地のわくわくする存在。 成長とともに崩壊する脆さを抱えつつ、普通の大人になれる子と慣れない子の分かれ目。 そこに関わり続ける不思議な転校生。 そうそうあった、あったとエピソードに相槌を打ちながら読み進めると・・・辛いエピソードに胸を痛めながらも 草笛を吹いて幸せに笑っていた自分と重なり、なんだか爽やかな気持ちで読み終わります。
2投稿日: 2014.04.29終わらざる夏 上
浅田次郎
集英社文庫
終わってほしい夏
赤紙一つで日常生活から切り離されてしまう不条理からすべての話が始まります。 送り出す家族の側から、送り出された兵隊の側から。交わうことがないはずのロシア人と日本人の子供たちとの不思議な交流。 一つ一つの話ががよく出来た短編小説の様に交わりながら大戦の一面を描いていきます。 少しづつ読み進めることが出来る連作短編集の様です。 終戦を祈りながら、登場人物の無事を祈りながら読み進める・・・ 登場人物達と交わった読者は誰に怒りをぶつけたらいいのでしょう。
4投稿日: 2014.04.26阪急電車
有川浩
幻冬舎文庫
さらっと
今津線は時々利用するので楽しみに読みました。 駅の雰囲気、電車内のレトロな雰囲気を知っていればさらに引き込まれるかも。 あっという間に読み終わります。 オムニバスですべてのお話がいろんなところでつながるのが楽しい。 ただ、中には使い古した感のあるエピソードもあるのでうーん・・・と思うところも。
3投稿日: 2014.02.05